「仕組み化」で現状打破!50億・100億の壁を打ち破る、改革の軌跡
株式会社大倉 代表取締役の木村です。2020年に2代目社長に就任した私は、当初は「2年間は現行の体制で経営を続けていこう」と考えていました。しかし、会社の課題が明らかになるにつれ、1年後から思い切って改革に着手することにしました。
改革のキーワードとなったのは、ずばり「仕組み化」です。今回は、数年前に大倉が抱えていた3つの課題と、それらを解決するために導入した仕組みについてご紹介します。
会社の成長を阻んでいた、3つの課題
大倉が抱えていた一つ目の課題は、社内にはびこる「現状維持のムード」でした。
大倉の主力事業である倉庫のサブリースは、毎月の賃料を収益として確保できるため、安定した事業モデルと言えます。それゆえ、就任当時は保守的な考え方を持つ社員も多く、社内には「現状維持」のムードが漂っていました。「現状維持はいずれ衰退につながる」と考えていた私は、「新しいことにチャレンジし、成長しなけければならない」と危機意識を募らせていたのです。
そこで私が取り組んだのは、事業領域の拡大でした。新規事業として取り組んだのは不動産の売買・仲介で、自社で購入した物件内でサブリース契約を結び、物件自体を売却する事業を行うようになりました。
それまでの大倉は、基本的には倉庫などの資産を保有しない、ノンアセット型の経営を続けてきました。ですが、いかなるときも顧客のニーズに応えられるよう、あえてリスクを取るよう方針転換したのです。さらに、自社での土台作りが難しい新規事業については、積極的にパートナー提携を行い、ソリューションの幅を広げていきました。
新規事業を次々と立ち上げ、強制的にでも組織を引っ張ってきたことで、社員には新しいことを立ち上げる面白さを体験してもらえたと感じています。現在は「うちの社長はなんでもやる人」という認知が社内に広がっていて、社員は抵抗感なく新規事業に取り組んでくれるようになりました。
二つ目の課題は、「がんばりが評価と連動していない社内カルチャー」でした。
創業から50年以上が経ち、古くからの社内カルチャーが抜けていなかった大倉。当時は、部下が先進的な提案をした際に管理者が否定的な反応を示したり、部下のがんばりが本人ではなく、上司の評価につながっているケースが見られました。
「個人の努力を認め、きちんと評価される環境を作りたい」
そう考えた私が始めたのは、「月間・年間MVP賞」の表彰制度でした。これは、月1回の幹部会で各拠点から社員を推薦してもらい、ナンバーワンの働きをしてくれたMVP社員を表彰するものです。表彰の際は賞状とともに豪華な副賞を手渡し、社員全員で受賞をお祝いしています。
はじめは表彰される社員側に戸惑いや遠慮が見られましたが、今では「今月こそは取ってやるぞ」と意気込む人の姿が見られるようになりました。また、表彰制度を始めてからというもの、思惑通り、社内では否定的な雰囲気が激減したと感じています。互いを称賛する場を設けることで、「努力した人はその分必ず報われる」というポジティブなカルチャーを作れたのではないかと感じています。
三つ目の課題は、「グループ会社間の連携の弱さ」でした。
これまで大倉グループは、クライアントのお悩みやご要望に応じて、多種多様な事業を立ち上げてきました。その結果、現在は人材紹介や業務請負など、グループ会社が計4社あります。これらの事業はクライアントへのトータルソリューションを行うために開発されたものですが、残念なことに部門同士の連携はあまりうまくいっていませんでした。例えば、いくら営業担当者が見込み案件を獲得してきたとしても、なかなか成約に結びつかないという実態があったのです。
そこで私は、該当部門に新たなポストを作って適任者を配置し、部門同士が連携しやすい環境を整えました。これを聞くと、「情報共有ツールを導入すれば済む話では?」と思う人もいるかもしれませんね。ですが、「いくらツールで情報共有できたとしても、協力し合う社員同士の関係性が構築できていなければ、なんの役にも立たない」というのが私の持論です。
結果的に、現在は部門間の連携が強化され、倉庫をご利用いただいている大型クライアントから人材派遣案件を受注するなど、着々と成果が実り始めてきました。同じような動きは、今後も加速し続けていくと確信しています。
人は変えられないが、「仕組み化」で会社は変わる
さて、ここまでにご紹介したそれぞれの改革は、すべてに「人間の感情」が絡んでいることにお気づきでしょうか。実は改革を決断した当初、私はまったく別のアプローチ方法で課題を解決しようとしていました。それは、対話を用いた方法で、「理解し合えればきっと解決できる」と考えていたのです。
しかし、そううまくはいきませんでした。「こうしてほしい」「ああすればいいのではないか?」といくら相手の感情に訴えかけても、状況は変わらなかったのです。
「人は自分の思うようには決して変わらないし、変えられるものではない」
そう気づいた私は、「相手は変わらない」という前提で何ができるのか、考えるようになりました。そこで行き着いたのが、「やらざるを得ない仕組み」を作ることだったのです。
仕組みさえあれば、相手の考え方は変えられなくても、行動は変えられる。このナレッジを得てから、私は新規事業開発・MVP賞の新設・新たな人材の配置と、次々と「やらざるを得ない仕組み」を作り続けました。すると、少しずつですが確実に、課題が改善されてきたのです。
ご紹介したものを含むさまざまな改革を進めた結果、就任2年目・3年目には5億円ずつ増収し、4年目の現在はグループ連結決算で45億円に到達する見込みです。
このような成果に結びついたのは、一つひとつの改革に、社員全員がついてきてくれたからです。ときには改革内容に疑問を持ったこともあると思いますが、それでも信じてここまでついてきてくれたことに、感謝の気持ちしかありません。同時に、これまでにありとあらゆる助言をしてくださった経営者仲間の皆様にも、この場を借りてお礼を申し上げます。
基盤部分を改革し、50億・100億の壁を乗り越える
今まさに私が推し進めている改革は、人事・評価制度・育成制度のブラッシュアップです。中長期目標の「グループ連結決算100億円」を達成させるため、会社の基盤部分の改革に着手しています。
現在の大倉には明確化されていない部分が多々あり、現状のままでは目標達成は難しいと考えています。というのも、10億規模の企業には10億の壁が、20億規模の企業には20億の壁があり、もうすぐ50億規模に成長しようとしている大倉には、50億の壁が目の前に立ちはだかっています。この壁を乗り越えるには、規模感に合わせた仕組み作り・制度作りが必要不可欠なのです。
ですが、この4年で環境・カルチャーを変えてきた実績が、私たちにはあります。仕組み作りさえできれば、必ずや目標を達成できる。そう私は信じています。
ここまで脇目も振らず改革を進めてきた私ですが、自分の決断が正しいかどうか、当初はわかりませんでした。でも、選ばなかった選択肢のゴールは、誰にもわかりません。重要なのは、決断したことを最後までやり遂げること。この覚悟を胸に、これからも改革を推進していく所存です。
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