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低カルシウム血症はなぜ発生するのか?

はじめに


低カルシウム血症(Hypocalcemia)
または乳熱(milk fever)、それに伴う分娩不全麻痺(Parturient Paresis)による起立不能は周産期病の中でも、最も問題となっている病気です。

低カルシウム血症のことをなぜ乳熱と言うのかは定かではありませんが、昔の科学者が臨床症状の所見を間違えていたことなどが関係してそうです。
乳熱という名前からして熱が関係あるのだろうと思われる方もいるかと思いますが、発熱の症状は伴わないため惑わされないようにしましょう!

実際に、海外のサイトでも・・・

「Don't be fooled by milk fever's name」
-----乳熱っていう名前に騙されるな!!-----

という記事がありました(笑)。
皆さんも「乳熱」というネーミングに騙されないようにしましょう!

<<それでは本題>>

低カルシウム血症とは?


低カルシウム血症とは血中カルシウム濃度が低下している状態のことです。通常、分娩後24時間以内に発生しますが2、3日後に発生することもあります。

また、低カルシウム血症は「臨床性低カルシウム血症」「潜在性低カルシウム血症」の2つに分類されます。

臨床性低カルシウム血症・・・カルシウム濃度の低下に伴う起立困難などの症例のこと。また、起立困難を伴う、伴わないに関わらず血清総カルシウムが6.0mg/dl以下のケースを言う場合もあります。

潜在性低カルシウム血症・・・血清総カルシウムが6.0mg/dlから8.0mg/dlの場合で起立困難などの臨床症状を示していない場合を指します。

これらの基準に関しては、研究報告によって異なる場合があります。
例えば、2012年のChapinalらの定義では健康牛の血清カルシウムは8.8mg/dl以上としており、また2008年のGoffの定義では8.5から10.0mg/dlの範囲としています。

低カルになるとなぜ起立困難になるのか?

カルシウムは骨の構成要素だけではなく、筋肉を動かすために必要な物質です。カルシウム(カルシウムイオン)は筋組織の筋小胞体という場所に保存されており、それを利用して筋肉は収縮することができます。

しかし、血中のカルシウム濃度が低い状況下では筋肉の収縮がうまく働かなくなってしまいます。

筋肉の収縮とは”力を入れること”であり、これがうまく働かなくなるので起立困難や子宮収縮不全による難産などが引き起こされます。

さらに、腕や足の筋肉だけでなく心臓や肺の動きにも影響を与えるため、全身の血流が悪くなり循環器の障害も発生します。
この様な状態の時は触診によって体表温の明らかな低下が確認できます。

また、カルシウムの低下は内分泌系や免疫系の機能を低下させるため、ホルモン分泌の不良による生体調整機能の低下や、免疫低下による感染症のリスク増加などが起こります。

周産期に低カルシウム血症が起きやすい理由

周産期に低カルシウム血症が起きやすい理由は泌乳によるカルシウム利用量の急激な増加です。
特に分娩後数日間にわたって生成される初乳は、通常の牛乳と比較して固形分量が高く、カルシウムの含有量も数倍高くなっています。

また、泌乳の開始と共に低カルシウムは発生しやすいのですが、実際は分娩する前から、つまり初乳が貯まり出す時期からカルシウムの動員は始まります。
特に高産次の牛では分娩前1週間前くらいから、低カルシウム血症の症状がないかこまめにチェックしましょう。乳房の張り具合も頻繁にチェック!

おわりに

以上!低カルシウム血症に関してでしたが、カルシウムが意外と色々な所に使われていることがわかって頂けましたでしょうか?
今回は序章ということで簡単なことだけをまとめました。
今後はもっと掘り下げて、低カルになりやすい牛となりにくい牛の特徴はなんなのか?や低カルになりやすいNG飼料設計などについてまとめていきたいと思います。

興味があればフォローもよろしくお願いします!!

参考資料

・E.M.Rodríguez, A.Arís, A.Bach(2017). Associations between subclinical hypocalcemia and postparturient diseases in dairy cows.

・Jesse P. Goff(2008). The monitoring, prevention, and treatment of milk fever and subclinical hypocalcemia in dairy cows.

・Chapinal et al., 2012 N. Chapinal, M.E. Carson, S.J. LeBlanc, K.E. Leslie, S. Godden, M. Capel, J.E.P. Santos, M.W. Overton, T.F. Duffield(2012). The association of serum metabolites in the transition period with milk production and early-lactation reproductive performance





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