周産期病とはなんなのか?
周産期病(peripartum disease)とは周産期に発生する代謝障害や消化管障害、繁殖障害などの総称です。
周産期は分娩前約2週間から分娩後約1週間の期間を指し、移行期(transition period)とも呼ばれます。移行期には分娩に向けて初乳の生産が始まり、それに伴ってミネラルやビタミン、エネルギーの要求量が急激に上昇します。
要求量に応じた飼料マネジメントができていない場合、牛はバランスを崩し代謝障害を引き起こします。
周産期病の代表的な疾病としては、低カルシウム血症(乳熱:milk fever)や脂肪肝(ケトーシス:ketosis)などの代謝障害、またそれに伴って発生する第四胃変位(displaced abomasum)や鼓脹症(bloat)などの消化器障害があります。
また、粗飼料の不足によるルーメンアシドーシス(rumen acidosis)も周産期病として位置づけられています。
これらの疾患は単発的に発生するというよりは、どこかの不調を引き金に連鎖的に発生します。
基本的には低カルシウム血症ルートとネガティブエネルギーバランス(negative energy balance)ルートの2つが一般的であり、これらの病気の発生により食欲が減退し第四胃変位などの消化器障害が誘発されます。
また、ケトーシスや脂肪肝はエネルギーバランスの影響をもろに受けるため、エネルギーバランスがマイナスの時は、病気の発生リスクが増加します。
ちなみにエネルギーバランスとは、体内から出ていくエネルギーと体内へと取り込まれるエネルギーのバランスのことです。
消費エネルギーに対して獲得エネルギーの方が多い場合をポジティブエネルギーバランス(positive energy balance)といい、反対に消費エネルギーに対して獲得エネルギーが不足している状態をネガティブエネルギーバランスといいます。
周産期病をコントロールするには栄養要求量を満たす適切な飼料設計、牛のストレスを低減させる飼養環境管理が重要となってきます。
【参考資料】
・R. K. McGuffey, A 100-Year Review: Metabolic modifiers in dairy cattle nutrition. J. Dairy Sci., 100(12): p. 10113-10142.
・酪農ジャーナル電子版【酪農PLUS+】 乳牛の周産期疾病予防と飼養環境モニタリング(https://rp.rakuno.ac.jp/archives/feature/3687.html)