見出し画像

縫製会社、木綿づくりに手を出した。| #2 牛の糞を買い、井戸水を汲む


突然ですが、牛の糞を買ったことはありますか?おそらくほとんどの方が、「ない」と答えるのではないかと思います。というか、売ってるんだ!と思いますよね(笑)。私たちも、木綿を育て始めて知った事実なんです。 という訳で、木綿づくりにも「手」を出したの第二回は、畝作りと同じ日に行われた肥料作りからです。引き続き代表、但馬(たじま)へのインタビュー形式でお送りしたいと思います!by ダイナンnote編集部

【肥料作り】秘伝のレシピには井戸水を。

ダイナンnote編集部(以下、編) 9時くらいから始めた畝作りは、どれくらいで終わったんですか?
但馬 だいたい、お昼過ぎですかね。それから、「ぼかし」という肥料作り(※油かすや米ぬかなど、有機肥料に土やもみ殻を混ぜて発酵させて作る肥料。 土に肥料分を混ぜてぼかす=薄めることから、その名前がついたと言われている)に取りかかりました。
これもSTUDIO MOMENの村田さんご指導のもと。
但馬 はい。オリジナルのレシピがあるんですよ。油かすとか…なんだっけな。米ぬか、魚粉、牡蠣殻石灰をそれぞれ手配して…。

 手配!どこで手配するんですか(笑)。
但馬  探すとあるんですよ。ネットとか、農業系のスーパーとか。で、水も配合するんですけど村田さんの指導によると、水道水ではダメだと。井戸水じゃないとダメらしいんですよ。たまたまJDサイン(※衣料プリントや看板を作っているダイナンの子会社。いろんな種類のプリンターを持っており、釣った魚をクッションで再現する「魚拓ッション」という商品を作ったりする遊び心ある会社です)に井戸水を引いてある水道があったから良かったけど、引いてなかったら川に汲みに行かなきゃいけなかった。

 畑をやる運命だったのかもしれませんね。
但馬  JDサインは幸いなことに駐車場も広いので、作業するにもちょうどよかった。子供たちも一緒に、バットで混ぜて。

秘伝のレシピの材料を、みんなで混ぜています。

但馬  そうだ。ぼかしについて、村田さんとのメールのやり取りをお見せしますね。

 なになに、「ぼかしの配合は、150φの柄杓(約1.1リットル)の体積比(*質量ではないです)で数量が決まっています…え、米ぬか42kgに牡蠣殻石灰は17kg!!これは想像以上に大変、いや、やりがいのある作業だ…!
但馬  この日は発酵させるための仕込みまでやって、撒き方のレクチャーもしてもらいました。

【種取り】出勤ついでに、種を取る。

但馬 種まきする前に、種の元となるコットンボールから種を分ける作業があるんですよ。この「綿繰り機」という木製機械で、綿と種を分離させるんです。手作業で。

 おお、シンプルでかっこいい。さすが、「僕は、なんでもゼロからやりたがるくせがある」とご自身でおっしゃってた村田さん!徹底してますね。
但馬 そうですね。村田さんから色々な種類のコットンボールを分けていただいて。結構な数が必要で、この日だけでは終わらず。6種類300粒ぐらいで…、全部で1500から2000粒ぐらいか。
 多いのか少ないのか、分かりかねる数字ですね…。

但馬 結構時間かかるんですよ。だから後日、本社の従業員出入り口のテーブルの上に、綿繰り機とコットンボールを置いて、みんなに少しずつやってもらいましたね。
 タイムカードのような場所に置いて(笑)。

但馬 出勤した時、と退勤時に、毎日少しずつ体験してもらいましたね。「今日はスーピマコットンです」って書いて。結構ハマってる人もいましたよ。
 黙々と、手を動かすの得意な社員さん、結構いますもんね。
 で、この日は作業をしながら、コットンについての講義を村田さんにしてもらったんですね。

不純物を除去し繊維を一定方向に揃えるカーディングという作業です!

但馬 そうですね。コットンとはどういうものか、歴史とか用途とか。和綿じゃ洋服はできない、とか…。みんな、すごい勉強になったって言ってましたね。

【ぼかしと種まき】社長の仕事は、孤独なもの。

 この日は、畝を作って、ぼかしを仕込んで終了。という感じだったんですね。
 そう。ぼかしは発酵が必要ですからね。発酵が終わったらぼかしをまくのと種まき、一緒にやりたかったんだけど天候と、みんなのスケジュールとが合わなくてですね。ぼかしまきは私一人でやって、種まきは有志の方々が4、5人でやってくれました。

種まきの様子。15cm間隔でまいていきます。

 なるほど。ぼかしは但馬社長一人となると…どれくらいかかったんですか?
但馬 あれ、どんぐらいかかったかな…。1日じゃ終わらなかったな。もう、手に豆ができるし、翌日、翌々日まで筋肉痛で体が動かないし。何やってんだろう?って。
 社長は孤独な仕事、って言いますけど(笑)。通りで写真もないわけだ。じゃあ、柄杓でぼかしをまき続けた感じなんですか?

村田さんご指導のもと、ぼかしまきのレクチャーです。

但馬 そうです。まず畝の真ん中に溝を作って。ふたこぶある山の上に、熟成した牛糞をまいて。その上にぼかしをまいて。そうやって堆肥の層を作るんです。村田さんの説明を受けて、社員が書いてくれたメモがあるんで、どうぞ。

 自主的に!加えて、なんと丁寧な仕事でしょう。見習わないと…。ちなみに牛糞も、牡蠣殻石灰みたいに手配したものなんですか?
但馬 そうです。買いました。完熟牛糞。抗生物質を与えられている牛のものもあるようなので、有機完熟牛糞、みたいなやつ買いましたね。
 ちなみに、誘い文句にあった「美味しいお昼」はなんだったんですか?
但馬 近くの餃子屋さんの、餃子・唐揚げ弁当でした。村田さんを迎えに行かなきゃいけなかったし、ぼかしを混ぜる環境も整えないといけなかったので…普通のお弁当になっちゃいました。
 まあ、重労働の後はなんでもごちそうになりますからね。ちなみに、やりとりも買い出しも全部、社長一人でやられているんですか?
但馬 そうです。みなさん普段のお仕事がありますから。社員のみなさんが良くやってくださるので、雑用もできますよ。牛糞も鍬も買いに行きますし(笑)。

以上、今回は畝作り、ぼかし作り、種取り〜ぼかしと種まきまでをお届けしました。
社長、本当に仕事してるの?と思った時に、リリー・フランキーさんが話していたことを思い出しました。
「農家の発想は、田んぼに稲をつくり、農協に納めてお金をもらう。これは仕事ではない、生業(なりわい)だと言うんですね。仕事というのは、あぜ道の草を抜いたり、まだ荒れているところを耕したり、すぐにはお金にならないことをやる、つまり先のことのために動くことだと」
(Forbes JAPAN リリー・フランキーの人生哲学 一番大変なのは、若くして成功すること より引用)
会社を楽しくするための取り組みも畑作りも、似たところがあるのかもしれませんね。我が社長ながら、いい「仕事」してる…!?
次回は、発芽とその後を追いかけてご報告したいと思います。お楽しみに!

いいなと思ったら応援しよう!