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911追悼で星条旗を身にまとったワイクリフ・ジョンが歌った Redemption Song への強烈な違和感
Bob Marley and the Wailers が 1980年6月10日にリリースした12枚目のアルバム Uprising のファイナル・トラック, Redemption Song, 作詞作曲はもちろん, ボブ・マーリー(Bob Marley; February 6, 1945 – May 11, 1981)。
911 アメリカ同時多発テロ, 犠牲者追悼チャリティ番組(2001年 9月22日)を見て 〜 2001年 9月23日
以下, 筆者が当時, 自分のホームページに載せた日記(*1, 2)より転載する。なお, 各段落冒頭の字下げを無くし, 一部行間を入れ, 日付部分の「01年」を「2001年」に改変, さらに一部に注釈(脚注, *3 ~ 14)を入れた。それ以外は 原文ママ。
2001年 9月23日(日) アメリカ同時多発テロ、犠牲者追悼チャリティ番組を見て
アメリカ同時多発テロの犠牲者への追悼と(遺族や被災者と被災地復興のための)寄付を目的に、アメリカの ABC、CBS、NBC、FOX の 4大テレビネットワークが共同で制作した番組が、日本時間では昨日の朝10時から 2時間余にわたって生中継された。私は生では最後の一部以外見逃してしまい、日本時間の夜放送された再放送を録画して観たのだが、以下に簡単に感想を記しておきたい。
ミュージシャンではブルース・スプリングスティーン、スティービー・ワンダー、U2(*3, 4)、トム・ペティ(*5)、ニール・ヤング(*6, 7)、ビリー・ジョエル、ボン・ジョヴィ、シェリル・クロウ、スティング、ポール・サイモン、などなど・・・。俳優ではトム・ハンクス、トム・クルーズ、ジャック・ニコルスン、アンディ・ガルシア、アル・パチーノ、ウーピー・ゴールドバーグ、キャメロン・ディアス、ジュリア・ロバーツ、ロバート・デ・ニーロ、などなど・・・。これだけの短期のうちに 4大ネットが協力し、しかもあれだけ多くの大物スターを集めたのは驚きだ。アメリカが惨劇の犠牲者を追悼し、今も救援活動を続ける人々と共にありたいという一つの意思にまとまっている証であり、協力するスターの側にも確かな志しがあってのことだろう。途中、モスレム(*8)の学校での子供たちのインタヴューがあり、「元のノーマルな世界、一緒に笑いながら過ごせる平和な世界に戻ってほしい」という少女の声などが紹介され、モスレム(*8)である元ボクシング・世界ヘビー級チャンピオンのムハマド・アリのスピーチもあったのは、良い企画だったと思う。
まともなリハの余裕など無かったはずにも関わらず、ミュージシャンのパフォーマンスはことごとく見事なもので、「妙に」センチメンタルに過ぎる表情も見せず、完璧な演奏をしてみせたのは反って感動的だった。印象に残るパフォーマンスばかりだったが、とりわけスティービー・ワンダーの LOVE'S IN NEED OF LOVE TODAY と、ポール・サイモンの BRIDGE OVER TROUBLED WATER は、もともとの楽曲の素晴らしさと共に、これらの歌の詩の意味を知りながら、そのパフォーマンスがあの悲劇の被災者と復興のために捧げられたことを考えれば、心を大きく動かさずにはいられない。
ここでもう一つ特筆しておきたいのは、ニール・ヤングの IMAGINE(*6)だ。言わずと知れた、20年前に凶弾に倒れたジョン・レノンの作。今、少なくともブッシュ政権下で報復の武力行使に向かって戦意高揚ムードが高まりつつある中で、同時多発テロの後、一時は放送で流すことが控えられた代表的な曲である IMAGINE をニール・ヤングが敢えて、明らかに「敢えて」選曲したことには、彼の明白なメッセージがある。 IMAGINE のメッセージ (*9)を知らずに彼が選曲したことなど、有り得ないことだ(*7)。
最後にやや蛇足とも思えるが、その他に感じたことのうちの一点だけを記したい。ワイクレフ・ジーンという(私は知らない)(*10)ミュージシャンが、ボブ・マーレイ(*11)の REDEMPTION SONG (*12)を演ったのだが、そのパフォーマンスはかなり良かったにも関わらず、このミュージシャンに星条旗を身にまとったかに見えるジャケットを着て歌われてしまったこの曲は、ここでは何か場違いな印象が残った。本来ボブ・マーレイ(*11)は全ての人民の解放のために作ったかもしれない(?) REDEMPTION SONG (*12)だが、この曲が星条旗にまとわれて、最後には「アメリカ、アメリカ」と叫びつつ歌われてしまうと、いや、 REDEMPTION SONG (*12)は、アメリカを中心とする世界から見放され続けているパレスチナ(*13, 14)の民のためにこそ歌われるべきだと言いたくなってしまう・・・。歌を奪い合うなんて悲しいことだけど。
*1 2001年夏に本を買って html を独学し, ホームページ簡易作成ソフト無しで立ち上げた原始的ホームページ。当時の「原始的」仕様のまま今もネット上にあるが, 既に何年も更新していない。
*2 件の日記は以下(ホームページ左側「メニュー」をカットしたリンク)。
*3 U2 と言えば ボノ, 既に終わってる「絵に描いたような」偽善者 ボノ。
"It has lately emerged that when U2 live-streamed parts of its North American tour via a trendy new app, that the firm behind the innovation was Israeli company Meerkat, who also supply the Israeli military machine." 👇 pic.twitter.com/rgk4ls2h0S
— WikiLeaks (@wikileaks) December 18, 2024
“Irish music legend Mary Coughlan has launched a blistering attack against Bono over his alleged links to several Israeli companies. In an astonishing broadside against the U2 singer, Coughlan said she is “ashamed of him”.”https://t.co/d1ITtbuyKi
— WikiLeaks (@wikileaks) December 18, 2024
*4 ボノについては, 以下でも言及。
*5 この時の トム・ペティ, 歌詞和訳付き。
*6 この時の ニール・ヤング, 歌詞和訳付き。
*7 昨年来の ニール・ヤング の沈黙, また彼の一連の「社会派」的ソング, いわゆる「プロテストソング」が 元々「ドメスティック」なものであったこと等に関し, 以下で言及。
*8 「モスレム」は ムスリム(Muslim, イスラム教徒)。
*9 ジョン・レノン IMAGINE のメッセージ, 歌詞和訳付き。
*10 「ワイクレフ・ジーン」, これは ワイクリフ・ジョン のこと。筆者は当時, 既にファンだったローリン・ヒルが かつて フージーズというグループにいたことは知っていたが, そのリーダーであった ワイクリフ・ジョン については全く知らなかった。
*11 「ボブ・マーレイ」は, ボブ・マーリー(Bob Marley; February 6, 1945 – May 11, 1981)。
*12 Redemption Song, 歌詞和訳付き。
*13 Existence is Resistance, パレスチナ と ボブ・マーリー「ウォー」
*14 パレスチナ/イスラエル の「問題」は, 2023年10月7日に始まったのではない。いわゆる「パレスチナ問題」(「問題」という言葉の解釈次第で「イスラエル問題」と言った方がよいのではとも思うが)の歴史的背景を知る人間には, それは あまりに常識的なこと ではあるが。
「パレスチナ/イスラエル問題」の成り立ちやその概観については, 以下の 2021年10月8日付 note の 第1章から 第2章 にかけて, まとめています。
ハイファ(48イスラエル, 47イギリス委任統治領パレスチナ)に戻って 〜 1983年10月5日
以下は, パレスチナ及び中東に関わる note マガジンへのリンク。
911追悼で星条旗を身にまとったワイクリフ・ジョンが歌った Redemption Song への強烈な違和感
911追悼で星条旗を身にまとったワイクリフ・ジョンが歌った Redemption Song への強烈な違和感
前章に転載した 2001年9月23日付の日記(当時, 自分のホームページ上に載せたもの)より, その最後の段落を以下に再掲。注釈(*10 ~ 14)の内容は, 前章における脚注にて。
なお, 前章 *10 脚註に記した通り, 「ワイクレフ・ジーン」は ワイクリフ・ジョン のこと。当時, 既にファンだったローリン・ヒルが かつて フージーズというグループにいたことは知っていたが, そのリーダーであった ワイクリフ・ジョン について, その頃の筆者は全く知らなかった。
最後にやや蛇足とも思えるが、その他に感じたことのうちの一点だけを記したい。ワイクレフ・ジーンという(私は知らない)(*10)ミュージシャンが、ボブ・マーレイ(*11)の REDEMPTION SONG (*12)を演ったのだが、そのパフォーマンスはかなり良かったにも関わらず、このミュージシャンに星条旗を身にまとったかに見えるジャケットを着て歌われてしまったこの曲は、ここでは何か場違いな印象が残った。本来ボブ・マーレイ(*11)は全ての人民の解放のために作ったかもしれない(?) REDEMPTION SONG (*12)だが、この曲が星条旗にまとわれて、最後には「アメリカ、アメリカ」と叫びつつ歌われてしまうと、いや、 REDEMPTION SONG (*12)は、アメリカを中心とする世界から見放され続けているパレスチナ(*13, *14)の民のためにこそ歌われるべきだと言いたくなってしまう・・・。歌を奪い合うなんて悲しいことだけど。
星条旗を身にまとった ワイクリフ・ジョン による Redemption Song は無惨だった 〜 とりわけ, 最後の 「アメリカ、アメリカ」 の叫びは あの名曲に対する 破壊行為だ, その, 観るに堪えない, 見るに堪えない, 聴くに堪えない, 聞くに堪えない, あまりの無惨さ
そのパフォーマンスはかなり良かったにも関わらず、このミュージシャンに 星条旗を身にまとった かに見えるジャケットを着て歌われてしまったこの曲は、ここでは何か 場違いな 印象が残った。
この曲が 星条旗にまとわれて、最後には「アメリカ、アメリカ」と叫びつつ歌われてしまうと、
それは実際, 見るも無惨、聞くも痛ましい有り様 だった(今あらためて聴くと, 実は歌の「パフォーマンス」自体も大したものではなかったよ, あの日の最低)。
3:10~ 以降の「アメリカ、アメリカ」の叫びは, Redemption Song に対する破壊行為だ。その, 観るに堪えない, 見るに堪えない, 聴くに堪えない, 聞くに堪えない, あまりの無惨さ。
「いい加減にしろ!」が多過ぎる, 自称「民主主義の国」自称「自由の国」アメリカ合州国。
.......................................................................
Redemption Song 〜 a song by Bob Marley (February 6, 1945 – May 11, 1981), the final track on Bob Marley and the Wailers' 1980 album Uprising
歌詞の和訳は, 次章に。
付録 〜 2001年9月21日の「アメリカ同時多発テロ・犠牲者追悼」イヴェント と 同年10月20日の Concert For New York の 異同
以下の「前説」の後の第1章。
*今日の note 作業中に思い出した(!)のだが, ワイクリフ・ジョンの件は以下の note でも書いていた(付録 1 の前の最終章「星条旗を身にまとったワイクリフ・ジョンの "Redemption Song" は無惨だった」)。
なお, ここでは蛇足だが, 上掲 note 付録 2 で リチャード・ドーキンス を取り上げていることに気づき, 後日 ドーキンスが実は大莫迦野郎の頑固ジジイであることを確信した後にアップした note を添えた加筆・編集を, 今日施してある。
付録, その 2 〜 911 について
911 と言えば アメリカ(合州国)の人々の大多数は 2001年の 911 しか知らない(あるいは覚えていない)が, 1973年9月11日, チリの 911 は,
他でもないアメリカ合州国が チリ共和国の民主主義を破壊し, 同国の民主的に選ばれた大統領サルバドール・アジェンデを自死に追い込んだ日, アメリカ合州国 が引き起こした チリの悲劇の 911 である。
以下の 第3章「1973年9月11日 〜 アメリカ合州国が チリ共和国の民主主義を破壊し, チリ共和国大統領サルバドール・アジェンデが自死に追い込まれた日」。
その他, 2001年の 911 を含む「 911考」。
では, 最後は,
ボブ・マーリー Redemption Song 〜 歌詞和訳
詳しくは下掲 note にて。ここでは 以下のリンクに続けて, 歌と筆者による歌詞の和訳を載せます。
Redemption Song from Bob Marley & the Wailers' 1980 album Uprising
英語原詞 https://genius.com/Bob-marley-and-the-wailers-redemption-song-lyrics
[ 和訳 ]
ずっと昔, 海賊が, そうさ, 連中が 俺の身体を奪い
奴隷船に売り飛ばしたんだ
やがて連中は 俺を引っ張り出した
底なしの地獄, 奴隷船の船底から (*1)
だけど 俺の手は強く造られていた (*2)
全能の神の手によって
俺たちはこの時代に 前に進む
誇り高く
一緒に歌ってくれないか
自由の歌の数々を (*3)
なぜって 俺が持っているのはこれが全てなんだ
贖罪の歌, 救済の歌
自由を取り戻すための歌
精神の奴隷状態から 自分自身を解放するんだ (*4)
我々の心を自由にできるのは 我々自身だけなんだ
原子の力を恐れることはない (*5)
誰も時の流れを止められないんだから
彼らはいつまで 我々の預言者達を殺し続けるんだろう (*6)
我々が傍観している間に, 見て見ぬふりをしている間に (*7)
ああ, それもその一部分に過ぎないらしい
我々は 聖なる書の目的を果たさなければならない (*8)
一緒に歌ってくれないか
自由の歌の数々を
なぜって 俺が持っているのはこれが全てなんだ
贖罪の歌
救済の歌
自由を取り戻すための歌
精神の奴隷状態から 自分自身を解放するんだ
我々の心を自由にできるのは 我々自身だけなんだ
おお, 原子の力を恐れることはない
誰も 時の流れなんて止められないんだから
彼らはいつまで 我々の預言者達を殺し続けるんだろう
我々が傍観している間に, 見て見ぬふりをしている間に
そうだね, それもその一部分に過ぎないらしい
我々は 聖なる書の目的を果たさなければならない
一緒に歌ってくれないか
自由の歌の数々を
なぜって 俺が持っているのはこれだけなんだ
贖罪の歌
俺が持っているのはこれだけなんだ
救済の歌
自由の歌
自由を取り戻す歌
…………………………………
訳注 *1 ~ 8, 上掲 note にて。