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「キャシーの歌」 歌詞和訳 〜 Kathy's Song, America, Homeward Bound

「キャシーの歌」は "Kathy's Song" の邦題, 今日は ポール・サイモンが 1964年にイギリスで音楽活動をした時期に彼の恋人であった Kathy (Kathleen Mary "Kathy" Chitty) に関わるポール・サイモン作詞作曲の3曲の歌詞の和訳を掲載するので, 本 note のタイトルは文字通り「キャシーに関わる歌の歌詞の和訳」の方が相応しいんだろうけど, しかしまぁそれでは何やら堅苦しくて格好がつかない。3曲の「キャシー」との関わりは質がそれぞれ異なるものの, その度合いに濃淡があっても歌作りに「キャシーの」影響があったということ自体は共通している。だから, 今日はその意味で「キャシーの歌」。

第1章で言及するように, その意味での「キャシーの歌」にはもう1曲, "The Late Great Johnny Ace" があるけれど, この歌の歌詞はまだ訳したことがないので, それはまたの機会に。


キャシー と ポール・サイモン 〜 Kathleen Mary "Kathy" Chitty & Paul Frederic Simon

キャシー と ポール・サイモン

とりあえずのウィキ。その下にこの部分の拙訳(拙者による訳)を載せます。

When Simon moved to England in 1964, he met Kathleen Mary "Kathy" Chitty at the first English folk club he played, the Railway Inn Folk Club in Brentwood, Essex, where Chitty worked part-time selling tickets. She was 16 and he was 22 when they began a relationship. Later that year they visited the U.S. together, mainly touring by bus. Kathy returned to England and Simon followed some weeks later. When he returned to the U.S. with the growing success of "The Sounds of Silence", Kathy, who was quite shy, wanted no part in success and fame and they ended their relationship. She is mentioned by name in at least two of Simon's songs: "Kathy's Song" and "America". She is also referred to in "Homeward Bound" and "The Late Great Johnny Ace". There is a photo of Simon and Kathy together on the cover of Simon's 1965 album The Paul Simon Songbook.

https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Simon#Personal_life

以下, 最初は即訳・速訳的な直訳で書こうと思ったんだけど, 文字通りの直訳の日本語にすると分かりにくくなりそうなので, 一部は意訳にしました。上の英語原文と照らし合わすとその趣旨は理解してもらえると思います。

なお, 以下の和訳の日本語文は読みやすくするため 3段落に分け, また, キャシーの名 Kathleen Mary "Kathy" Chitty をそのまま英語アルファベットで表記したかったので 他の箇所も全て Kathy とし, それに合わせ サイモン も Simon, その他, イングランドも英語表記のまま England にし(Kathy's Song の歌詞, I gaze beyond the rain-drenched streets, to England, where my heart lies), かつ アメリカも America としました(こちらも America の歌詞を想起させたかったので; キャシーの名は "Kathy," I said as we boarded a Greyhound in Pittsburgh, そして "Kathy, I'm lost," I said, though I knew she was sleeping にも)。

「1964年に England に渡った Simon は, 彼が初めてイギリスで出演したフォーク・クラブ, エセックス州ブレントウッドの Railway Inn Folk Club で, チケット売りのアルバイトをしていた Kathleen Mary "Kathy" Chitty と知り合った。彼らが交際を始めたとき, Kathy は16歳(*1), Simon は22歳だった。その年の暮れ, ふたりは一緒に America を訪れ, 主にバスで America を旅した(*2)。Kathy は England に戻り, Simon は数週間後にその後を追った。

しかし, "The Sounds of Silence" (*3) が大きな成功を収めつつあるなかで Simon が America に戻ると, 非常に内気な性格だった Kathy は(Simon の)成功と名声の渦中に身を置きたくないと考えるようになり, そこでふたりの関係は終わった。

Kathy の名は Simon の曲の少なくとも2曲で直接言及されている。"Kathy's Song" と "America" である。さらに "Homeward Bound" と "The Late Great Johnny Ace" でも Kathy(の名は言わずともその存在)が暗示されている(*4)。なお, Simon の 1965年のアルバム "The Paul Simon Songbook" のジャケットに使われた写真で Simon の右隣りに写っているのは, Kathleen Mary "Kathy" Chitty その人である(*5)。」

*1 以前, 自分の note のなかで Kathy と Simon の年齢差を 4年と推測して書いたことがある(参考にした記事は次項)。その推測が正しければ Kathy は 18歳だったことになる。1941年10月13日生まれの Simon は22歳でよいだろう。18歳が 22歳と恋に落ちることなど幾らでもある話だが, 16歳 と 22歳の二人が恋愛関係になったところで 特段 不思議はない。ただ, 過去に自分が書いた文章における二人の年齢差とウィキペディアの記述は矛盾するので, 筆者本人以外 誰も覚えてないだろうし気にしないはずだが(笑), 本人は気になるので, この些細な点を記しておくことにした(些細なのに長い!)。

*2 「主にバスで America を旅した」。"Kathy," I said as we boarded a Greyhound in Pittsburgh(「キャシー」と僕は言いました。僕らはピッツバーグでグレイハウンドに乗っていました)。つまり, America の歌詞にある通り。

*3 "The Sounds of Silence"

*4 "Homeward Bound" の歌詞に関しては後段の章にて。"The Late Great Johnny Ace" は ポール・サイモンの1983年のアルバム "Hearts and Bones" に収められた曲。LPレコードB面の最後の曲で, 歌詞の中に, "It was 1964 I was living in London with the girl from the summer before .. We were staying up all night and giving the days away, and the music was flowing, amazing and blowing my way" といった一節がある。

*5 今日の note のタイトル写真がそれ。

Kathleen Mary "Kathy" Chitty & Paul Frederic Simon

「キャシーはメディアの注目を浴びることを好まない女性のようなので出所はここには記さないけれど」と以前の note で書いたことがあるけれど, まぁ拙者がここでリンクを貼ってもどう考えてもそれでメディアが大々的に彼女に取材にいくことなどあり得ないので, キャシーは今も健在と想い且つその後の人生を幸せに生きているものと勝手に願いつつ, 備忘録的に記事リンクをここに置くことにします。

記事によれば, Paul Simon は Kathy との交際, 恋愛関係に関し, それは自分に「最も平和なとき」をもたらしたという意味のことを言っているようです。

Paul Simon once described his relationship with Mrs Chitty as ‘his most peaceful time’ and it was captured in his care-free lyrics.

ではでは。

Kathy's Song 〜 歌詞和訳

初出 note

拙者の訳なので「拙訳」。実際には良薬いや良訳(と思われる)。写真はキャシーでなく, うちのカミさん。

Kathy's Song 〜 歌詞和訳

Paul Simon のソロと Simon & Garfunkel のヴァージョン, それぞれで。

Kathy's Song 〜 from Paul Simon's first solo studio album "The Paul Simon Songbook" released in August 1965 ♫

英語原詞 https://genius.com/Paul-simon-kathys-song-lyrics

ぼくは霧雨の雨音を聞いている
過去の記憶をよみがえらせる音
静かに暖かく降りつづける音
ぼくの心の屋根と壁をたたく音

ぼくは心の隠れ家から
瞳の窓の向こうを眺め
雨にぬれた通りの彼方を見つめる
ぼくの心のふるさとイングランドを

ぼくの心は混乱し拡散する
想いは何マイルも遠くへ向かう
そして君が眠っている時には眠りを共にし
君が君の1日を始める時には君にくちづけする

ぼくが書いていた歌は見向きもされず
なぜ時間を費やすのかさえわからない
ぼく自身が信じられないような歌を書くためにね
無理に引き裂かれて 韻を踏まされた言葉を使いながら

そうなんだ 僕はついに疑うようになってしまったのさ
みんな一度は本当のことだと心に抱いていたのに
ぼくは今 何の確信もなく一人で立っている
ぼくの知っている唯一の真実は君だけなんだ (*1)

そしてぼくは雨の雫を見ている
縫うように降りかかり疲れて消えていく雫を
ぼくもこの雨のようなものなんだって思う
それでもぼくは 真実の恵みがあればやって行けるのさ (*2)

…….. ♫ ……..

訳注

*1, 2 The only truth I know is you 〜 There but for the grace of you go I, というわけで, you は「唯一の真実」なので, 最後のラインの you つまり キャシーのことだけど, それを「真実」という言葉に置き換えて表してみた。

Kathy's Song 〜 from Simon & Garfunkel's second studio album "Sounds of Silence" released on January 17, 1966 ♫

英語原詞 https://genius.com/Simon-and-garfunkel-kathys-song-lyrics

ぼくは霧雨の雨音を聞いている
過去の記憶をよみがえらせる音
静かに暖かく降りつづける音
ぼくの心の屋根と壁をたたく音

ぼくは心の隠れ家から
瞳の窓の向こうを眺め
雨にぬれた通りの彼方を見つめる
ぼくの心のふるさとイングランドを

ぼくの心は混乱し拡散する
想いは何マイルも遠くへ向かう
そして君が眠っている時には眠りを共にし
君が君の1日を始める時には君にくちづけする

ぼくが書いていた歌は見向きもされず
なぜ時間を費やすのかさえわからない
ぼく自身が信じられないような歌を書くためにね
無理に引き裂かれて 韻を踏まされた言葉を使いながら

そうなんだ 僕はついに疑うようになってしまったのさ
みんな一度は本当のことだと心に抱いていたのに
ぼくは今 何の確信もなく一人で立っている
ぼくの知っている唯一の真実は君だけなんだ (*1)

そしてぼくは雨の雫を見ている
縫うように降りかかり疲れて消えていく雫を
ぼくもこの雨のようなものなんだって思う
それでもぼくは 真実の恵みがあればやって行けるのさ (*2)

…….. ♫ ……..

訳注

*1, 2 The only truth I know is you 〜 There but for the grace of you go I, というわけで, you は「唯一の真実」なので, 最後のラインの you つまり キャシーのことだけど, それを「真実」という言葉に置き換えて表してみた。

America 〜 歌詞和訳

初出 note

"American Tune" と共に, Paul Simon が作った American Anthem, 単純な賛歌では全くないけれど。

歌詞和訳 note のタイトル写真はポール・サイモンの S&G時代, 事実上の1枚目のソロ・アルバムである 1965年リリースの "The Paul Simon Songbook" のカヴァー写真。"America" は 1968年リリースの S&G 4枚目のアルバム "Bookends" に収録されたもので, 当然ながら "The Paul Simon Songbook" には収録されていないけれど, "America" の歌詞の中に登場する Kathy, つまり Paul Simon の当時の恋人 Kathleen Chitty がこの写真で Paul の右側に写っている女性, そこでこの写真を使うことにした。

拙者の訳なので「拙訳」。実際には良薬いや良訳(と思われる)。

"America" 歌詞和訳 note, もう1本。拙者の訳なので「拙訳」。実際には良薬いや良訳(と思われる)。しつこいな。

America 〜 歌詞和訳

Simon & Garfunkel のヴァージョン, Paul Simon のライヴでのヴァージョン, それぞれで。

America 〜 from Simon & Garfunkel's fourth studio album "Bookends" released on April 3, 1968 ♫

英語原詞 https://genius.com/Simon-and-garfunkel-america-lyrics

「僕達、恋人になって結婚しよう
 未来を一つにしてパートナーになろう
 お金なら何とかなるさ
 バッグに少し持ち合わせているんだ」

そして僕らは タバコを一箱と
ミセス・ワグナーのパイを買いました
それから歩き始めたのです
アメリカを探すために

「キャシー」と僕は言いました
僕らはピッツバーグでグレイハウンドに乗っていました
「ミシガンは僕には今では夢のようだよ
 前なら4日もかかったんだ
 サギノウからヒッチハイクをしたらね
 僕はアメリカを探しに来たんだ」

バスの中では二人で笑い合って
乗客の顔を見ながらゲームをしました
彼女がギャバジン・スーツの男は
実はスパイなのよと言うので
僕は言ったんです
「気をつけなよ 彼の蝶ネクタイは本当はカメラなんだ」

「タバコを投げてくれないか
 レインコートに1本残っているはずだから」
「私達、最後の1本を吸ってしまったのよ
 1時間も前にね」

だから僕は窓の外を眺めたんです
彼女は雑誌を読んでいました
外では大地の彼方を月が昇っているところでした

「キャシー、僕はわからなくなってしまったよ」
彼女が眠っているのは知っていました
「僕は空っぽで 苦しくて
 おまけにどうしてなのかもわからないんだ」

ニュージャージー・ターンパイクでは
走る車を数えたりしましたが
彼らもみんな アメリカを探しにやって来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです

…….. ♫ ……..

America 〜 from Paul Simon's live album "Paul Simon in Concert: Live Rhymin'" released in March 1974 ♫

(audience) "Say a few words!!" (*1)

(Paul Simon) "Say a few words.. Well, let's hope that we're.. Let's hope that we, continue to live.."

英語原詞 https://genius.com/Paul-simon-america-lyrics

「僕達、恋人になって結婚しよう
 未来を一つにしてパートナーになろう
 お金なら何とかなるさ
 バッグに少し持ち合わせているんだ」

そして僕らは タバコを一箱と
ミセス・ワグナーのパイを買いました
それから歩き始めたのです
アメリカを探すために

「キャシー」と僕は言いました
僕らはピッツバーグでグレイハウンドに乗っていました
「ミシガンは僕には今では夢のようだよ
 前なら4日もかかったんだ
 サギノウからヒッチハイクをしたらね
 僕はアメリカを探しに来たんだ」

バスの中では二人で笑い合って
乗客の顔を見ながらゲームをしました
彼女がギャバジン・スーツの男は
実はスパイなのよと言うので
僕は言ったんです
「気をつけなよ 彼の蝶ネクタイは本当はカメラなんだ」

「タバコを投げてくれないか
 レインコートに1本残っているはずだから」
「私達、最後の1本を吸ってしまったのよ
 1時間も前にね」

だから僕は窓の外を眺めたんです
彼女は雑誌を読んでいました
外では大地の彼方を月が昇っているところでした

「キャシー、僕はわからなくなってしまったよ」
彼女が眠っているのは知っていました
「僕は空っぽで 苦しくて
 おまけにどうしてなのかもわからないんだ」

ニュージャージー・ターンパイクでは
走る車を数えたりしましたが
彼らもみんな アメリカを探しにやって来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです

…….. ♫ ……..

注釈

*1 "Say a few words!!"

ではでは。

Homeward Bound 〜 歌詞和訳

初出 note

"Kathy's Song" や "America" だけでなく, この歌の作詞作曲にも キャシー, つまり Kathleen Mary "Kathy" Chitty の存在があったという再発見。

ウィキペディアでの記述は,

During his time in England, Simon met Kathy Chitty, who was working as a ticket-taker at the club. The two quickly became close, but Simon wanted to perform in London. Following a performance in the town of Widnes, Cheshire, Simon was dropped off at Widnes railway station for a train to his next performance, in Humberside. He had been missing Chitty and he began to write "Homeward Bound" on a scrap of paper. A plaque commemorating the song is displayed on the Widnes station platform.

で, 以下の note に転載した時から記述内容が一部(若干)編集されて変わっている。もちろん, キャシー(という恋人の存在)にインスパイアされて ポール・サイモンが作詞作曲した曲という事実は変わりない。

Homeward Bound 〜 歌詞和訳

Homeward Bound 〜 from Simon & Garfunkel's third studio album "Parsley, Sage, Rosemary and Thyme" released on October 24, 1966 ♫

英語原詞 https://genius.com/Simon-and-garfunkel-homeward-bound-lyrics

僕は駅舎で座っている
目的地への切符なら買った
一夜限りのライブを転々とする旅さ
スーツケースとギターを手に持ってね
どこに行ってもきれいに揃ってるよ
詩人を兼ねたワン・マン・バンド用にね
家路に・・・
今 家に向かっているのならいいのに
僕の想いが宿る家
愛する音楽が流れる家
愛する人が待っている家
静かに 僕を

毎日が果てしない川の流れのよう
タバコと雑誌でやり過ごす
どの街も僕には同じに見えるよ
映画館や工場
そして見知らぬ人々の顔
何を見ても僕の想いが向かうのは
家路なのさ
今 本当に家路にあるのならいいのに
僕の想いが宿る家
愛する音楽が流れる家
愛する人が待っている家
静かに 僕を

今夜また 僕は自分の歌を歌い
堂々とやって そして取り繕う
だけど僕のどの言葉も自分に帰ってくる
月並みな陰影を帯びながら
ハーモニーが持つ虚しさのように
だから 慰めてくれる誰かが必要なんだ
家路・・・
今 家に向かっているのならいいのに
我が家 そこには僕の想いが宿り
我が家 そこでは愛する音楽が流れ
我が家 そうさ 愛する人が待っている
静かに 僕を
静かに 僕を

…….. ♫ ……..

ポール・サイモンの歌 24曲, 歌詞和訳集

今後も歌詞和訳の曲を増やし, 更新する note(2021年10月13日投稿, 以降 随時更新), 2025年 1月21日現在は 24曲分の歌詞和訳集。

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