ジョン・レノン "Cold Turkey" 〜 歌詞和訳
写真は 1983年11月3日の トルコ・イスタンブール, ガラタ橋付近(筆者 撮影)。これを今日の note のタイトル写真に使ったのには理由がある。勿論 ジョン・レノンが 1969年10月にシングル・リリースした曲 Cold Turkey, その英語の直訳は「冷たい七面鳥」で(邦題も同じ, しかしスラングとしては別の意味), この Turkey は国名の「トルコ」ではない。それでも「トルコ」との繋がりはある。一方で, 1983年から翌84年にかけての年末年始 1週間を ガンジス川を眺めながら過ごしたヴァーラーナシー(インド)で撮った写真でもよかった。その辺の事情は 本日の「前説」にて。
シンプルな歌詞だから あまり工夫しようがないかなと思って訳し始めたら, これが実際にはそうでもなく(歌詞がシンプルなのは確かだけど), けっこう面白い作業で楽しめた。禁断症状の地獄の苦しみの最中, 俺を楽にしてほしい(「楽にさせてほしい」, この日本語は迷うね, 日本語もけっこう難しい)って叫んでる歌なんだけど, その歌詞の日本語訳が「楽しめた」なんて(笑)。
前説
この「前説」, 本 note のタイトル写真を何故あれにしたのか, そのお題を巡って周辺の事情を含めてだらだらと書きそうなので(よくあることだけど, 笑), とりあえず "Cold Turkey" の歌詞にだけ関心ある方は此処飛ばして構いません。ただ例えば「貧乏旅行」とか「バックパッカー」とかの言葉やそれらが連想させるものに心惹かれるような人には, 少しは面白い「前説」かも(というかそれはその参照 note リンクの方かも)しれません。
今日の note タイトル写真, 最初はこの曲のシングル・リリース時のレコードのカヴァーを使おうかと思ったんだけど, 早々にやめた。それは単純な話, あの写真はおどろおどろしかったから。
で, 他の何か, 多少とも洒落たものにしようと。
Cold Turkey, オンラインの辞書, 例えば アルクだと, 「〈話〉〔薬物などへの〕依存習慣を急に断ち切ること」「〈俗〉薬物を断ち切ることによって起こる鳥肌」「〈話〉ぶっきらぼうな[率直な]言葉[行動]」「〈話〉つっけんどんな[よそよそしい]人」。最初の二つが この歌の意味に関する定説に添うものになるけれど, 残りの二つもなんだか曲調には合う感じがする。
上記の最初の二つの訳が この曲の主題にマッチするという話, ちょっとアレ(を巡る俗説)を想起させるものがあるけど,
Lucy in the Sky with Diamonds 〜 the Beatles (1967), written by John Lennon (Oct 9, 1940 – Dec 8, 1980) 🎶
この曲のアレの俗説, 41年前の冬のインド・ヴァーラーナシー の街で ガンチャラッシー を飲んだ時の経験を思い出させるものがあるんだけど(後段の note 3, だから回り回って ヴァーラーナシーで撮った写真を今日の note タイトル写真に使おうかとも思った, 「とんで とんで とんで とんで とんで とんで とんで とんで とんで 回って 回って 回って」まわる円広志, 括弧長過ぎ), でも勿論「ガンチャラッシー」はアレとは全くの別物だし, そもそも彼処では合法です(少なくとも「でした」。今もそうだと思うけど, モディの時代のその辺の事情詳しくないし調べてもいないので保証はしません)。
話 戻して Lucy in the Sky with Diamonds, でもあの LSD説, ジョン・レノン本人は否定してるよね。
で, Cold Turkey の方も, 本人は定説(俗説でなくこっちは定説?)を否定してるらしく, 実は ジョンとヨーコが クリスマスのご馳走の食べ残しを「禁断症状」のせいで食べてしまい, それで食中毒になった, その経験を歌ったものなんだって 本人が語ってる, という話があって, 真相は不明のまま .. なのかな。
ところで, そもそも Turkey は「七面鳥」で, その肉は クリスマスに食す, 彼らはね。で, Turkey が なぜ「七面鳥」を意味するようになったかというと, これは
ということらしい。だから, 国名の トルコ も, 語源絡みで「遠縁」の「親戚」ではあるんだね。語源上の祖先です。で, 無理矢理, ちょっと寒そう, 空気が 冷たそう
な トルコ の 写真を, 今日の note のタイトル写真に使ったわけです(*1)。
冷たそうな トルコ, 冷たいトルコ, Cold Turkey, 「冷たい七面鳥」, 些か苦しいけどなぁ。苦痛だなぁ。
Cold turkey has got me on the run, コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける。
何はともあれ, 七面鳥 は クリスマス の 食べ物。クリスマスと言えば .. (以下の note 4), 他にも クリスマスと言えば .. (以下の note 5)
*1
こっちは, Hot Turkey
note 1 イスタンブール再訪(1983年10月26日-11月8日)
note 2 イスタンブールは「旅心」の琴線に触れる街 〜 トルコ, イスタンブール 1度目の滞在・旅 note 第3編(1983年8月18日から8月31日)
note 3(2021年12月27日 投稿) インド, ヴァーラーナシー, ガンジス川を眺めながら過ごしていた, 1983-84年・年末年始 1週間
最終章は「ヴァーラーナシー の街で ガンチャラッシー を飲んだことを思い出して "Lucy in the Sky with Diamonds" by the Beatles ♫」
note 4 ジョン・レノンの命日に, Happy Xmas (War Is Over) 〜 歌詞和訳
note 5 クリスマス は キャンセル 〜 悪の枢軸(アメリカ, イギリス, イスラエル)の蛮行があまりに酷いので(しかし今年も酷い, 今年も キャンセルだろう)
嘆かわしい欧米の偽善, そして, クリスマス。
ジョン・レノン "Cold Turkey" 〜 歌詞和訳
Cold Turkey 〜 歌詞和訳
Cold Turkey 〜 John Lennon (Oct 9, 1940 – Dec 8, 1980) with the Plastic Ono Band, released on Oct 20, 1969 🎶
John Lennon – lead and harmony vocals, guitars
Eric Clapton – guitar
Klaus Voormann – bass
Ringo Starr – drums
英語原詞 https://genius.com/John-lennon-cold-turkey-lyrics
[ 和訳 ]
体温がどんどん上がってる (*1)
高熱なんだ
先が見えない
空も見えない
足がひどく重い, ヘビーだ
頭もそうさ, とにかくヘビーだ
赤ん坊だったらいいのに
死んでしまいたい (*2)
コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける (*3) (*6)
身体中(からだじゅう)が 痛い
骨にまで 鳥肌が 立ってる (*4)
誰も見られない
ほっといてくれ
両目とも瞳孔が開いたままだ (*5)
眠れない
ひとつ確かなこと
完全に凍えそうだ
コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける (*3) (*6)
コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける (*3) (*6)
36時間もの間
苦痛で のたうち回る
誰かに祈ってる
助けてくれ
ああ, いい子になるからさ
俺を楽にしてほしいんだ
何でも約束するから
この地獄から俺を救い出してくれよ
コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける, 逃げられない (*3) (*6)
(*7)
…………………………………
以下は, 「禁断症状」の歌の「ヤク中」ならぬ「薬中」ならぬ 訳注
*1 Temperature's rising と進行形で言ってるだけだけど, イントロからのグルーヴ, というかこの独特の高揚感, ハイな感じで Temperature's rising と歌われると, 日本語に置き換えて「体温が上がってる」じゃ不十分。「どんどん」ぐらい加えないと。という具合の, いい加減ではない良い加減の意訳。
*2 I wish I was a baby が「赤ん坊だったらいいのに」ならば I wish I was dead も「死んでたらいいのに」.. なんて訳にはしない。このサウンド, この "追い詰められてる" 感を 日本語で出すには, このくらいのいい加減ではない良い加減の意訳をしなければ。まぁこれは意訳でもないか。少なくとも医薬ではない。普通のヤクだね, いや薬だね, 違うってば, 訳だね。
*3 Cold turkey has got me on the run, "on the run" と言えば,
On the Run 〜 from Pink Floyd's 1973 album The Dark Side of the Moon 🎶
on the run には「走り回って」「逃げ回って」といった意味がある。
逃げ回ってんのに「コールド・ターキー」に捕まえられ(さらに 医薬 いや 意訳を加えて「痛めつけられ」), だから, Cold turkey has got me on the run は「コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける」ぐらいで 良いのではと。
因みにこのライン, 文法上は 現在完了形になってるけど, この歌の歌詞の日本語訳においては, ここを「捕まえた」とか「痛めつけた」とかにしてしまうと, この曲のグルーヴ や サウンドと歌詞が相まって醸し出される緊迫感や絶体絶命の感覚にそぐわない語感になるので, それは回避(回避, 逃げる, 逃げ回る, on the run)。
で, 「コールド・ターキー」に関しては, 定説(俗説?)の方のにしろ, ジョン・レノン本人が語ったという方のにしろ, いわゆる「禁断症状」を指している, そのこと自体は間違いないでしょう。
でも 上の日本語訳の中で「コールド・ターキー」を「禁断症状」なんて直截的な言い回しに置き換えてしまったら, 思い切りつまらなくなる。言い「回し」にすらならない(これは言葉遊びです, 笑)。せっかく ジョン・レノンが「コールド・ターキー」という遠回しに言う, 要するに回りくどい表現で洒落てるんだから, 日本語訳の方も直截表現は御法度(御法度は大袈裟だけど)。かといって「冷たい七面鳥」なんて直訳, 直截的な訳にしても, 日本語の「冷たい七面鳥」には「禁断症状」なんて意味はないわけだから, やっぱ日本語訳の中でも Cold turkey は「コールド・ターキー」でしかない。
*4 Goose-pimple bone, Goose は「ガチョウ」(話語として「とんま」「ばか」なんて意の用法もあるようだけど), pimple は「にきび」「腫れ物」, で, goose pimples では「鳥肌」という意味に。だから此処は 禁断症状のせいで「鳥肌が 立ってる」ことを言ってるんだろうけど, 鳥肌というのは本来は皮膚にできるもの。それが bone, 骨にまで 鳥肌が立ってる, かのようだ。そういう感じだと思います。
*5 「瞳孔」は 英語では black part in the center of the eye, 解剖学の言葉としては pupil, で, 「両目の瞳孔」は the pupils of the eyes になるようだけど,
ここは My eyes are wide open, 直訳すれば「両目とも 見開いたまま」なんだろう。だけど この歌の主人公はいま「禁断症状」の最中にある, 「両目とも瞳孔が開いたままだ」の方が相応しい, これが いい加減ではない良い加減の意訳。
因みに Eyes Wide Shut は これ(笑)。
Eyes Wide Shut, a 1999 film directed by Stanley Kubrick (Jul 26, 1928 – Mar 7, 1999), starring Tom Cruise, Nicole Kidman, Sydney Pollack, Marie Richardson and Leelee Sobieski 🎞
*6 Cold turkey has got me on the run については, *3 をご参照。ただし, 最後だけは「逃げられない」を加えた。もともと on the run には「走り回って」「逃げ回って」といった意味があるし,
On the Run 〜 from Pink Floyd's 1973 album The Dark Side of the Moon 🎶
そういうわけで, 最後の Cold turkey has got me on the run は, この曲の Outro の *7 に掛かるフレーズとして「コールド・ターキー が 俺を捕まえて 痛めつける, 逃げられない」ぐらいまで いい加減ではない良い加減の意訳 してオッケーだと思う(上, Paul McCartney and Wings 1974年リリース の "Band on the Run" も載せようかと一瞬思ったけれど, Cold turkey has got me on the run の窮地にいる感覚, その臨場感に欠けてしまうので, やめました)。
*7 Oh, oh, oh, oh .. これは日本語に訳さなくもいいでしょう。
ではでは 🎶
英語原詞について
外国語の歌の歌詞の和訳を試みてそれを掲載するのだったら(note にしろその他のサイトにしろ), できることなら 原詞を併載した方がよい。明らかにその方が分かりやすい。しかし, それは(歌詞原詞の全編掲載は)残念ながら不可能。
英語歌詞, つまりここでは, 英語で歌われる曲の原詞。その(全編)掲載に関するその辺りの事情については, 以下の note の「前説」の次の次の章「英語原詞 について」にて。
さて さて 🎶
女王陛下、私はナイジェリアのビアフラ戦争へのイギリスの関与、ベトナム戦争におけるイギリスのアメリカへの支援、そして私の曲 "Cold Turkey" がチャートから滑り落ちていることに抗議して 〜 この大英帝国勲章 MBE を返還します。愛を込めて, Bag の ジョン・レノン
ジョン・レノンの母国イギリス女王宛て「勲章返却の理由」を記した手紙, その 下書き(2016年10月発見, インクがにじみ染みが付いたため 書き直し, 1969年11月25日, これと同じ内容のものを当時のエリザベス女王に送ったらしい)。
「女王陛下, 私はナイジェリアのビアフラ戦争へのイギリスの関与, ベトナム戦争におけるイギリスのアメリカへの支援, そして私の曲 Cold Turkey がチャートから滑り落ちていることに抗議して, この大英帝国勲章 MBE を返還します。愛を込めて, Bag の ジョン・レノン」
最後の Bag は, ジョンの曲 Give Peace a Chance (*1) の歌詞にも登場する Bagism の Bag 🎶
勲章返還の理由に「Cold Turkey がチャートから滑り落ちていること」を加えている辺り, 政治的プロテストをする時もユーモアを欠かさない, そんなジョンの魂が現れたんだと思う。
*1 小文字 a なのか, 大文字 A なのか。ま, いっか。
Give Peace A Chance (John Lennon) 〜 歌詞和訳
ではでは。
フランシーヌの場合 〜 ジョン・レノンの場合
ジョン・レノンの場合, 前章より。
フランシーヌの場合
ベトナム戦争 と ナイジェリア内戦(ビアフラの飢餓)に心を痛めていたとされる フランシーヌ・ルコント(当時30歳)が, パリの路上で 焼身自殺したのは 1969年3月30日。
以下は フランシーヌの場合 〜 ジョン・レノンの場合 と題する note, その(「前説」の前の)前文, 目次, そして note リンク。
*2024年3月30日 投稿
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