技術本部のブランディングについて
昨日の投稿はsinchir0さんによる文章がどのぐらい具体的か測定したいでした。普段こういった文献に触れる機会が少なく専門知識もない私ですが、導入部分や説明が丁寧で、非常に読みやすい印象を受けました。何より、着眼点や発想が新鮮です。
今回アドベントカレンダー企画の場をお借りし、普段なかなか説明する機会がない「技術本部のブランディングについて」、ご紹介させて頂きます👀
第一章 はじめに
この記事では、私たちが向き合う技術本部のブランディングついてご紹介します。まず、こちらの文章をご覧ください。
私の所属するBrand Strategyグループは、Communication teamとCreative teamに分かれており、デザインや広報、外部や内部の様々な人との連携など、その役割は多岐に渡ります。ボリューミーになってしまうので、グループの説明(役割など)は、別の機会にさせてくださいmm
技術本部とは
技術本部は、Sansan株式会社の中の「技術」や「データ戦略」の統括を行う組織です。エンジニア、研究開発、システム管理、セキュリティ、データ戦略、オペレーター、ブランド戦略など、さまざまな部門によって構成されています。所属するメンバーも幅広いです。私自身もこの組織の一員であり、ブランディングを担当するグループでデザイナーとして働いています。
2022年の4月、Nippon Design Centerさんとの協業というかたちで、ブランディングへの取り組みが本格的にスタートしました。
第二章 技術本部のブランディング
1_リサーチ
技術本部だけでなく、他社についても、まずはリサーチを行いました。ここで集めた情報が、後々の判断材料として役立つこともあります。新しいものを作る上で、既存の組織やデザインの傾向を把握することは非常に大切な工程でした。
2_言語化
言語化を通して、メンバー同士で認識の擦り合わせも行います。技術本部について、所属している人、雰囲気、今の組織の強み・弱み、5年後に目標とする姿…など、いくつかのテーマを設けながら話を進めました。所属する人の目線、客観的な目線など、様々な視点から考えていきます。
2つの特性を併せ持つこと、それらを切り替えるように使い分けていること、この2点は特に、弊社の技術本部をについてうまく言語化できていると認識が揃いました。これらの特徴を指針として、制作を進めます。
3_制約
ここまでに得た情報(材料)をデザイン(料理)していくために、いくつか制約を決めます。制作する上で欠かせない条件です。
・子会社のように見えないこと
・会社のデザインと組み合わせた時の相性を考慮する
・覚えやすい
・視認性
・多様性
・カジュアルすぎる表現にしない(社風や組織の雰囲気)
・商標登録でバッティングしない
etc…
挙げられた制約が「Must」か「Better」なのか、分類もこの時点で行いました。
4_組織名
ブランディングの観点で、技術本部という組織名の変更も検討していました。最終的に名称は変更せず、Sansan技術本部として伝えていくと決定したのですが、様々な案が出ていたので、その一部をご紹介します。
変化・変動するモチーフを用いることで、「一見対立するような特性を併せ持ち、ときにそれらを使い分けながら、進み続ける」を体現できないかと考えていました。
See-Sawの案だと、シーソー=心もとなく揺れるイメージがある=意思の弱さに繋がってしまう、という考えで不採用となりました。
名前の語呂やコンセプトの良い案はたくさんありながらも、組織の今後や、全体への浸透について、様々な観点から慎重に判断を行っていました。
5_Vision
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世界のビジネスシーンをリードする
革新的DXをいち早く生みだし、社会に貢献する。
それが私たち技術本部の目指す姿です。
日本発のビジネス向けSaaSから
最新の技術トレンドを捉えた進化を続け、
グローバルに拡がる「ビジネスインフラ」へ。
大きく眺め、細部に寄り添い、過去を分析し、未来を創造する。
0.01%の改善もいとわない挑戦と探究心で
組織も、個人も成長を続ける、最高の技術者集団に。
変化を続けるビジネスの現場に、まだ見ぬ価値を届ける。
技術本部が生み出すテクノロジーが未来を変えていきます。
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将来像・なりたい姿を示す、という位置付けで、Visionの策定を行いました。組織全体の意思表示である一方、組織内のメンバーに呼びかけるようなメッセージングとしています。
6_Statement
こちらはサイトでも紹介されている技術本部のステートメント文です。「一見対立するような2つの特性」を強調しながら、「対立する考え方の行き来」や「挑戦し続ける姿勢」、「MVVやカルチャーへの共感」が内包された文が完成しました。
7_VI
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは
ユニクロや無印など、1つ、ブランドを思い浮かべて考えるとわかりやすかもしれません。ロゴやシンボルにはじまり、サイト・資料・CMなど全てに共通して「その会社らしさ」が感じられると思います。フォントのサイズや、デザインのカラー、色の面積比など、細かいルールを定めることで、見え方を意図的に統一しているからです。様々なアウトプットの積み重ねが、最終的にブランドの大きなイメージに繋がっていきます。
実際にできた技術本部のVI
Sansan株式会社のロゴの一部「パッションライン」と、ロゴに用いられている「赤」「青」の二色が、VIの起点となりました。
一見すると一本のラインに見えるオブジェクトに奥行きを持たせ、これが回転していく中で形や色が次々と変化していく様をグラフィカルに表現しています。Statementとして策定した「一見対立するような特性を併せ持ち、ときにそれらを使い分けながら、進み続ける」という強みをビジュアライズしました。色だけではなく、モチーフでも対立する特性を表現しています。
8_フォント
和文がヒラギノUD角ゴ、欧文はHelvetica Nowというフォントを選定しました。これらのフォント選定にも、理由があります。まずはフォントの紹介と説明から。
Helvetica Now|現代の使われ方に最適化された新しいフォント
(Helvetica|世界で広く使われている歴史あるフォント)
この2つのフォントにも、「対比・変化」の関係があります。汎用性などの機能に加え、コンセプトとの合致も考慮して、このフォントが採用されました。
Helvetica Nowとは
フォントメーカーのMonotype Imagingが発表したHelveticaをもとにリニューアルされた比較的新しいフォントで、マイクロ、テキスト、ディスプレイの 3 つの光学サイズが用意されています。フォントのウェイト数(文字の太さ)も豊富で、画面上でも、紙面上でも、様々なシーンで視認性の良さと字形の美しさを保つ、強度のあるフォントです。
第三章 展開
デザインシステムの構築
様々な媒体でVIを展開してきました。既にお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ビジュアルに展開するときにも「対比・変化の関係」を意識し、技術本部の持つ多様性を表現しています。Brand Strategyグループでは、都度模索しながら各種媒体と向き合い、デザインシステムの構築に勤しんでいます。
一概にランダム配置がNGというわけではないのですが、左の図では「モチーフ同士の関係を示すことができていない」ので、VIの展開方法としてはあまり芳しくありません。単純なビジュアルとしての格好良さや美しさだけではなく、正しいVIの使い方や、ルールを模索します。動画だと変化や対立の関係を表現しやすいですが、静画では制約も多く、難しさに頭を悩ませることもしばしば。メンバーの展開案に刺激や学びを得ながら、全員でデザインシステムの構築に取り組んでいます。
制作物紹介
▼ ティザーサイト
▼ Introduction to Sansan for Engineers / エンジニア向け会社紹介
▼ イベントサイト
▼ 制作物紹介サイト
▼ zoom背景
▼ イベントやリリース記事のサムネイル
さいごに
ここまで、技術本部のブランディングについてをご紹介いたしました。組織に限らず、ブランディングは形にならないと分からない部分もありますが、進捗も含めて、こまめにオープンにしていくことも大切だと考えています。
明日を乗り切ればもう週末、クリスマスもいよいよ近いですね。明日はpvcresinさんの記事が公開されます。楽しみです🎄
編集後記
今後もどんどん動きがあると思いますが、立ち上がりの部分を記録することができてよかったです。
グループ全体で、手元にあるまだ公開できていない情報を、どんなメッセージで、どんなデザインで発信していくのか。都度、細やかに検討を行い、手を動かしています。そうしたアウトプットが積み重なることで、一つのブランドが育っていくのだなと、これまでを振り返りながら記事を書き進める中で、私自身も実感しました。
なんとなく目に触れる機会が増え、知らず知らずのうちにデザインに慣れて、大きな声を上げずとも「技術本部の何かだな」と認知される状態まで、どれくらいかかるかは分かりません。ただ、そういったフェーズに携わることができる今の環境は、希少であり、チャレンジングであり、有り難いことだなと思っています。発信されるべき情報を自ら集めに行き、整理し、デザインに落とし込む、というトータルのタスクを通し、どんどん成長していきたいなと思うこの頃です💪