『未定』VII を古書善行堂で発見。たまたま前の日に矢川澄子の略歴を調べていて《1954年、同人誌「未定」に参加》という記述を読んだばかりだった。買うしかない。
『未定』は学習院大学の人たちを中心にドイツ文学やフランス文学などの翻訳、評論あるいは詩や小説などの創作を掲載していたようである。澁澤龍彦と交際を始めた矢川は『未定』へ澁澤を誘った。
その結果、以下の作品が『未定』に発表されている。
なお、Webcat Plus の『未定』データも参考までに掲げておく。復刻版が出ているようだ。
7号に同人として名前が上がっているのは以下の人々。少なくとも七人は大学教授になっている。また澁澤は『未定』でのつながりからだろうか、藤井経三郎詩集『襟裳岬』(ピポー叢書、国文社、1959)に序文を執筆してもいる。
岩淵達治
飯島智子
伊藤嘉啓
榎本皎子
片山晴雄
菊池 甫
島田信一
多田智満子
戸星善宏
中島悠爾
藤井経三郎
三橋 光
村田経和
両角正司
矢川澄子
吉田再造
渡辺貴美子
7号に矢川澄子は「ロマンス・グレイ・ファンタスティック」という不思議なプラトニックラブについての短い小説を発表している。好きな上司をずっと慕いつづけて死ぬまで会社勤めをやめない、という妄想のような……。ごく一部を引用してみると、こんな感じ。
矢川は1959年1月に澁澤龍彦と結婚していたから、さて、この小説をどう読めばいいのか、ちょっと迷ってしまう。