Ciel, mon Marais !
パリから古書目録がいろいろ届いた。なかでも古書店「Librairie Sur le fil de Paris」のクリステル・ゴンザロ(Christelle Gonzalo)による『Ciel, mon Marais ! Une histoire illustrée du quartier』が素晴らしい。過去300年にわたる300点の資料類(書籍、地図、版画、写真など)をもってパリのマレー地区の歴史を再現。開店10年をこの展示・売り立てによって祝い、写真入りカタログを刊行した。
マレーというのはパリのほぼ中心にあり、ユダヤ人街を含む、パリのなかでも歴史の古さを誇る地域である。小生も、1979年の冬に二度目のパリへ到着したとき、その頃、先にパリに住んでいた美術大学の同級生に案内されてマレーにあるシシリー王街の安ホテルにしばらく滞在したことがある。
当時は、不況を引きずって、パリの街路も今のように磨き上げられておらず、マレーの細く暗い街路は荒廃していたと言ってもいいくらいで、壁は落ち崩れ、窓ガラスの割れたままという建物がいくつもあった。それこそ300年来そのままかと思われる灰色の壁が佐伯祐三の(あるいは荻須高徳の)絵をそのまま思い出させてくれて、寒風をものともせず、街頭のスケッチに歩き回ったものだ。
暗いパリの最後の時期だったのかもしれない。その後、パリは徹底的にクリーニングされることになる。しかし小生にとっては当時のマレーがパリのイメージそのものとして心の奥底に焼き付いている。
本書を眺めていると、マレーがさまざまな歴史の舞台となってきたことがよく分かる。なかでも驚かされたのは、第一次大戦中の1918年、ドイツによる爆撃にさらされた事実である。その写真がこちら。
これらの惨状から106年経った現在もなお、世界のあちらこちらで同じような、いや、さらに激しい爆撃が行われている。あまりにも愚かではないか。
LYLE ET PALETTE ALBUM
Le Tout-Paris des Arts à Montparnasse 1916-1919
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