………それを曲らずに右へ戻ると精進堂つて本屋がありますから
姫路のおひさまゆうびん舎で買った雑誌の中に『九年母』が二冊ありました。
俳誌「九年母」を発行する九年母会は、兵庫県芦屋市を本拠とする
伝統俳句系の俳句結社です。
https://sites.google.com/site/haikukunenbo/home
昭和十四年六月号と十一月号です。当時の編輯兼発行人は五十嵐久雄(播水、1899-2000)、発行所は神戸市湊東区楠町2丁目170 九年母発行所。播水は姫路出身(姫路文学館でも生誕120年記念展が開催されています)。
表紙絵は富田通雄。
https://asa-ing.co.jp/h/sanpo-hi/sanpo-h1405
それはいいとして、パラパラめくってみて、最後に目次をじっくり眺めると、どちらにも大岡龍男の名前があるのでビックリしました。
大岡龍男『なつかしき日々』
https://sumus.exblog.jp/8623419/
それぞれの号に小説のようでもあり身辺随筆のようでもある短い文章を寄せています。播水とは『ホトトギス』つながりだったのでしょうか。六月号は「写生帖より」、昆布茶を飲む女とのたわいもない会話のスケッチです。十一月号は「亀井戸(名所めぐり一)」、大岡はNHKに勤めているのですが、その放送の空き時間に昔の面影を求めて亀戸天神に出かけます(大岡は一貫して亀井戸と書いています)。かつて母と姉といっしょに弁当を持って馬車で出かけたことがあったのです。四十年近くも前のこと。すっかり道を忘れてしまって銘酒屋の女に天神様の場所をたずねます。
古い映画を見ているような………配役は誰がいいかな、などと考えてしまいます。「………」(3文字分)の多様も独特の間を作っているようです。今どきは発掘作家ばやりですので、どなたか『大岡龍男全集』出しませんかねえ、無理? 無理ですね。