Kitasono Katué 1902-1978
『Kitasono Katué 1902-1978』がパリから届きました。二人の詩人が執筆したフランス語で刊行される初めての北園克衛のモノグラフィーです。
ジャン=フランソワ・ボリー(Jean-François Bory, 1938- )氏はエッセイスト、美術評論家で詩人。パリに生まれて十八歳までヴェトナムで育ったそうです(Wikipedia)。AFPや政府機関で働いた後、1972年以降はフリーで活動しておられるとのこと。
ジャック・ドンギー(Jacques Donguy,1943- )氏はやはりパリ生まれ。詩人、翻訳家、美術評論家で、パリでギャラリーを経営していたこともあるそうで、作品はディジタルとサウンドを使ったアニメーションのようなヴィジュアル・ポエトリーです。ブラジルのコンクリート・ポエトリーの詩人アウグスト・デ・カンポス(Augusto de Campos)のアンソロジー作品集も手がけたということで、カンポスは北園とも交流のあった詩人ですから、ドンギー氏が北園に興味を持つのもある意味必然のように思われます。(略歴は Les press du réel サイトより)。
ボリー氏は北園と文通していたそうで、その手紙を1960年代に自分の雑誌で発表しました。また北園のただ一度だけのインタヴュー(『遊』8、工作舎、1975年4月1日、この松岡正剛、杉浦康平との鼎談の仏訳が貴重です。日本語でも読みたくなりました)に二度言及されているただ一人のヨーロッパの詩人です。
本書の第一部はボリー氏による北園らとの交流が描かれ、第二部ではドンギー氏による北園の評伝と作品、とくに「ポエム・プラスティック」についての紹介が行われています。図版も多数収められており(非常に珍しい山本桿右の雑誌『UBU』なども掲げられています)、フランス語圏における北園克衛入門としては申し分のない内容ではないかと思われます。ただ、人名表記の不統一(姓名/名姓が混在)が日本人としてはやや目障りですが、そう大きなキズでもありません。さらなる研究への踏み台として、目下、これ以上のものは望めないでしょう。
ボリー氏が北園克衛の雑誌『VOU』の同人でもあった詩人の高橋昭八郎氏との交友を回想しているくだりは、北園克衛とは直接関係はないのですが、詩人らしい感性を楽しませてもらいました。拙いながら、おおよそのところを訳してみます。
最後に巻末の謝辞を訳しておきます。
Les press du réel
Kitasono Katué
1902-1978
https://www.lespressesdureel.com/ouvrage.php?id=7794&menu=0
午睡書架に少部数ですが、置かせてもらっていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
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