ねぢれた椅子にもたれ パインアツプルを喰ひ GOTHAM BOOK MART の 厚いカタログを読む
新装版『記号説 北園克衛詩集 1924-1941』、『単調な空間 北園克衛詩集 1949-1978』が届く。戦前と戦後で二分冊になった北園克衛詩作品のアンソロジーである。旧版が出たのは2014年だったから、早いもので、もう十年が流れ去った。北園克衛はさらに新しく、いよいよ大きくなっている。すでに紹介したようにフランス語のモノグラフィが刊行されるほどにも。
Kitasono Katué 1902-1978
旧版が出たときブログに書いた感想の一部を引用しておく。
ざっと読み直していて、おお! と思う作品に出会った。それがこちら「休暇のバガテル」。全文引用しておく。
何が「おお!」なのか、もうお分かりだろうが、《GOTHAM BOOK MARTの/厚いカタログを読む》、ここである。
ゴッサム・ブック・マートはマンハッタンのミッドタウンにあった文学・芸術を専門とした伝説的な書店・古書店。単に本を売るだけでなくフィネガンズ・ウェイク協会やジェイムズ・ジョイズ協会の拠点ともなっており、作家による朗読会、展覧会なども開催された。戸口に掲げられた「Wise Men Fish Here 賢者はここで釣る」と記されたアイアンワークの看板が有名である。マルセル・デュシャンがショーウィンドウのディスプレイを手がけたこともあった。
「休暇のバガテル」は岩佐東一郎の尽力で刊行された詩集『固い卵』(文芸汎論社、1941年4月10日)に収められている。
ゴッサムは1940年1月1日にカタログ42号を刊行しており、その表紙は『フィネガンズ・ウェイク』刊行記念パーティのときにゴッサムの庭で撮影されたラス・ボワー(Ruth Bower)による絵で飾られている。北園克衛はいち早くこのカタログを入手していたと考えていいのだろうか。
なお、ジェイムズ・ジョイスは北園の『固い卵』刊行に先立つ三カ月ほど前、チューリッヒの病院で十二指腸潰瘍穿孔の手術を受けた後、1941年1月13日に歿した(ウィキ「ジェイムズ・ジョイス」)。
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