北畠八穂『透[すきとお]った人人』は古書善行堂にて。北畠八穂(きたばたけやお)は青森県出身の作家、児童文学者、詩人。深田久弥の妻でもあり、深田のゴーストライターだったそうです。出会った著名な文学者たちの印象を鋭い観察とともに描いています。
冒頭に置かれている中原中也とのやりとりなど、中也のいたいたしさが伝わってくる、そして容赦のない逸話ではありますが、ここでは、昨日、衣巻省三作品集の感想で引用した「便所のステちゃん」と呼応するような津軽の伝説が出ていますので、そこを引いておきます。太宰治を回想した一篇です。
同郷だけあって中学時代の津島修治(金木の津島のオンチャ[弟息子])と吹雪の道で八穂はすれ違ったと言います。その十二年後に帝大生になった太宰と再会し、それなりに親しくつきあったようです。
衣巻がこの話を知っていた……はずはないですね。
なお、津軽の鬼はいいやつみたいです。
古津軽 鬼伝説
https://kotsugaru.com/story/maine_story/maine_story01.html