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ギルド型組織という社会実験の現在地点
こんにちは。気がついたら前の投稿から1年が経ちました。今年もアドベントカレンダーです。
個人的な今年の一番の変化は第一子の誕生でした👶
10月に生まれたので、妻の妊娠期や新生児期も含めてすべて2024年に詰め込まれる形となり、非常に濃い1年となりました。
さて、今年のデータラーニングギルドアドベントカレンダーのテーマは「技術コミュニティのススメ」ということで、データラーニングギルドのメンバーで今年取り組んだ経験をギルド型組織という観点でまとめてみます。
データラーニングギルドについて
今回のトピックに関する前提情報となるため、改めてデータラーニングギルドについてはじめに紹介します。
データラーニングギルドはデータ分析・データサイエンスに関わる専門家集団として活動している技術者コミュニティです。Slack上で日々情報交換や学習をしあったり、時には今回のようなプロジェクトを実行します。
より具体的な活動内容は、以前クラウドファンディングに際して「データのじかん」さんに取材いただいた記事がわかりやすいかもしれません。
ギルド型組織って?
データラーニング「ギルド」という名前の通り、このコミュニティではギルド型組織を指向しています。ギルドとはもともと歴史上、中世から近代にかけてヨーロッパの諸都市において結成されていた職業別組合です。時代の変化の中で、主要な経済・社会組織ではなくなっていったようです、
しかし、変化が激しく、各技術分野での専門性が高まった現代において、会社型組織と比較して、ギルドの概念を蘇らせた「ギルド型組織」が注目され始めています。特にIT業界・データサイエンス界隈は日進月歩の技術進化とそれに伴う役割の細分化が急激に起こっていて、個人の努力だけでは継続的に専門性を保つことが非常に難しくなっており、このように特定の技能にフォーカスした組織が最注目されているように感じます。
現代で提唱されているギルド型組織の正式な定義はまだないと認識しているので(定義する団体等がまだ存在しない)、代わりにChat GPT o1の説明を紹介します。ふんわりとイメージが伝わる気がします。
ギルド型組織とは、職能や専門性をもつメンバーが自律的に活動しながら、必要なときに互いの知識やスキルを共有・連携するネットワーク型の組織形態を指します。中世の職人ギルドのように、共通の価値観やルールを基盤にしつつ、個々の専門性を高め合うことで組織全体の価値創造に貢献する点が特徴です。
データラーニングギルドはそんな時代に適したキャリア構築をみんなで切磋琢磨していこうという想いで設立されました。Chat GPTの説明のように、データラーニングでも一定の価値観を共有しています。もし気になる方は立ち上げ時の以下の一連の記事に詳しいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1734795697-ZlTIn3BtyJs1wa7dfHKX45Yc.png?width=1200)
ギルド型組織を標榜する上で、私が最もユニークだと考えている点は、この組織で専門的な仕事を遂行していくことです。技術コミュニティとして情報や知識をシェアするだけでなく、専門性が高い業務をプロフェッショナルな集団として実行できることに大きな価値があると感じています。
会社型組織や個人のフリーランスと異なることは、主に下記でしょうか。
お互いに雇用関係にはなく、雇用者・被雇用者のような長期的な保証責任がない
一方で、継続的なコミュニケーション・関わりが可能であり、メンバー同士の信頼関係を長期的に構築することができる
その結果、個々の自由度を担保しつつも、結束力の強いハイパフォーマンスなチームをプロジェクト毎に最適な構成で構築することができる
ギルド型組織はまだまだ馴染みの薄い組織で、私も上記で十分に言語化できていない気がします。ここでは、これまでデータラーニングギルドを通じて行ってきた社会実験の途中結果を通じて更に理解を深めることを本稿で目指してみます。
では、今年ギルド内で取り組んだプロジェクトをケーススタディとして、ギルド型組織の可能性を考察していきます。
生成AI・データ分析に関する研修コンテンツ作成
今年、データラーニングギルドでは、昨今の生成AI急激な発展とそれに伴うリスキリングの必要性に対応する形で、研修コンテンツ作成というプロジェクトを行いました。
プロジェクトの前提条件として、限られた期間やリソースのなかで、高いクオリティのコンテンツを作成していく必要がありました。そのため、自分たち自身でも生成AI(Chat GPT)をフル活用しながら、制作期間とクオリティの両立を追求しました。
Chat GPTをどのように活用していったかは、同チームの長谷川さんが分かりやすくアドベントカレンダーでまとめてくださっています。
まずは、このプロジェクトをどのようなチームで実現し、ギルド型組織がどのように活用されたのかを紹介します。
チーム構成と求められるスキルセット
この研修コンテンツ作成のプロジェクトは約3ヶ月という期間のなかで、約1000ページのスライド/動画36時間分を作成していくというものでした。
チームの構築としては、ギルド型組織のメリットを活かして、プロジェクトを走らせながらどんどんチームをアップデートしていきました。最初に必要なリソースを確保して、各々の役割・責任を定義して・・・というような従来型のチームビルディングでは今回のスピード感は実現できなかったと思います。
初めは少人数で企画の基礎部分を固めた後に、最終的に以下のようなチーム構成・役割分担で落ち着きました。最終的に10人程度のチームとなり、メンバーによっては臨機応変に複数の役割を担います。(例:コンテンツ作成者がスライドデザインや原稿作成も担当する等)私自身もコンテンツ監修者と作成者の両方を主に担いました。
プロジェクトオーナー:プロジェクト全体の指揮と責任
コンテンツ監修者:研修コンテンツのディレクションとレビュー
コンテンツ作成者:研修アウトラインの企画とベーススライドの作成
スライドデザイン担当:コンテンツ作成者によるベーススライドを基に、スライドデザインの作成/修正
原稿作成担当:各スライドの内容を基に、動画内での読み上げ原稿の作成
→スライド・原稿の完成後、動画編集チームへ
ここで重要なポイントは、各役割に求められるスキルセットとしてコンテンツに携わるスキル(研修内容を検討する・スライドデザイン・原稿作成)だけでなく、データサイエンスに関する知識も同様に求められる点です。
スライドのデザインを作成するスキル、スライドをもとに読み上げ原稿を作成するスキル、という単体のスキルであればそれほど難しいスキルではなさそうです。ただし、ここに「データサイエンスに関するコンテンツの内容を理解して、適切なスライドや原稿を作成すること」となると、一気にハードルが上がります。
さらに、研修対象がデータサイエンスを初めて学ぶ社会人であるため、これらのコンテンツを作成する人材は、データサイエンスの専門性だけでなく、ビジネス面からの視点を持つことが求められます。
また、研修の内容も最先端の生成AI活用ノウハウから、データサイエンスにおける思考法のようなソフトスキルまで多岐に及んでいました。
このように複数の専門性がかけ合わさった人材が必要なときに、どのようにして最適な人材を見つけ出し、アサインするのかはプロジェクト推進に際して最も重要な課題です。本プロジェクトでの「研修コンテンツ作成」に関する役割というものはデータサイエンスのプロジェクトとしては例外的かもしれませんが、その他のプロジェクトもどんどん多様化していく中で、同様の課題構造を秘めているといえるでしょう。
今回は、ギルド内での募集を通じて、プロジェクト期間約3ヶ月という中で、素早く必要なリソース増員を行うことができました。
ギルド型組織として取り組む利点
それでは、今回の経験をもとに、ギルド型組織から感じたメリットをまとめていきます。
1. 長所を発揮し合うチーム構築
まず1つ目に、幅広い技術領域に対してそれぞれの得意分野を補い合うチームを構成できる点があります。
データサイエンスとビジネススキルの掛け合わせは既に上述しましたが、データサイエンス領域の中でも各メンバーの強み・弱みがあるなかで、お互いに強みを発揮し合えるチームを構築できました。
データラーニングギルドの結成理念の中にもあるように、日々ものすごい速さで拡大していくデータサイエンス領域の中で、一人の人間がすべての領域をカバーすることは非現実的になりつつあります。
今回のケースの場合、最新トピックである生成AIの利活用に既に経験豊富なメンバー、ダッシュボード開発を一貫して実施できるメンバー、データの解釈というふんわりしたスキルを言語化するのが得意なメンバー等、それぞれの強みを持ち寄って、結果として多彩な強みを持つチームを構成できました。
2. 究極のジョブ型組織
2つ目に、業務に必要なスキルから逆算して、必要なスキルを持つメンバーを集めることができた点です。既存のメンバーでできることを考えるのではなく、ゴールに対して必要なニーズに応じた人材確保を進めることができました。昨今話題になっているジョブ型の働き方と同じことができた、と言えるかもしれません。特にギルド型組織の特徴を活かした点として、今回のプロジェクトのために必要なメンバーを集め、プロジェクト終了後は一度解散するというようなプロセスを踏みました。このようなメンバーの集め方は会社に所属する方法では難しいのではないかと思います。
3. 継続的な関係構築
3つ目として、このようなオンデマンドなメンバーの募集しているのにも関わらず、一定の信頼関係がある状況からプロジェクトをスタートできる点を挙げます。例えば、フリーランスのメンバーをその都度集める方法と比べると、ギルドメンバーとは過去のプロジェクトでの実績がすでにあるメンバーも多いため、プロジェクトを始めたタイミングで既にお互いの特徴を認識しており、信頼を持った状態で挑む事ができます。このメリットはプロジェクトのスピード感を高めるだけでなく、アウトプットの品質向上にもつながっていると感じます。
おわりに
以上、今回ギルド型組織の中で本格的にプロジェクトを推進した中で、私が感じた点をまとめてみました。まだまだギルド型組織というものが社会実験的な位置づけであるなかで、このような経験をできたことは貴重なことでした。もちろんメリットだけでなく、デメリットもあったと感じています。例えば、個々の責任の明確化や、スキルレベルが少しだけ足りないときに指導することが会社組織に比べて容易ではない点等、課題もあったなぁと感じています。特に、このようなプロジェクトでは誰かが最後までやり切る責任をもつ必要があり、その責任が分散しにくいと感じることもありました。記事全体が長くなってしまうので、また別の機会でまとめても良いかもしれません。
それでは皆さん良いクリスマスと年末年始をお迎えください!気温21℃の真冬のバンコクより。