CBC㊲「電車に乗れない私」が受けた3つのレッスン(その4)

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 パニック障害で電車に乗れない。そんな相談をしてきたクライアント相手に行ったコーチングセッション。ちょっと長いので、シリーズで紹介している4回目。とても面白い構造で、改めて自分で記録を読み直しても興味深いプロセスでした。ぜひ、あなたの着想のもとにしてください。

 クライアントはMちゃん。電車に乗れない他にも、ご主人の鬱にどう関わるか、お父さんの自殺にどう向き合うか、そして過去のトラウマ「布団蒸し」をどう克服するか。コーチはそれらのテーマを同時に扱っていきます。その4ではいよいよ、トラウマ体験の書き換えに臨みます。

 とは言え、前回の最後に見たように、クライアントとコーチは楽しそうに笑っています。ここからどのように進めていくのでしょうか。


CO よし。じゃあやろっか。

CL はい
CO あんまり愉快じゃないとおもうけどさ
CL 大丈夫です
CO スーパーコーチのレッスンは2つ目までは満点で通ってきてるから、ははははは。
CL ふふふ

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 改めて椅子の配置を再確認しておきましょう。ここからは左端の「子ども時代のトラウマ」に向き合います。

 お父さんに布団に簀巻きにされ「やめて」と言ってもやめてもらえなかった体験。それが彼女の「自己効力感」や「他人への信頼感」を下げているのです。

 これに向き合って「私はできる!人々は仲間である!」的な認知への転換を図っていきたい。それがアドラー心理学的な発想なわけです。

 また、それに向き合うことは彼女がコーチ(対人援助者)として生きていく上でも重要な体験となるでしょう。困難な問題にも向き合い、それを乗り越える強さが自らにあることを知るのです。

 当たり前ですがコーチは、この「布団蒸し」事件のイメージを書き換えることで、クライアントの「電車に乗れない問題」にも好影響が生まれることを狙ってもいます。

タイムラインと椅子配置

 部屋を見渡すと。2月の寒い日だったので、クライアントが来てきたベンチコートがありました。それを布団の代わりくるくる巻いて、その中に子どものMちゃんがいるという設定にします。そして、クライアントにはお父さん役になってもらって、上から布団(ベンチコート)を押さえつけてもらいます。

「布団蒸し」のお父さんを演じる

 写真は当日の様子。記録ビデオからの切り出しでは、残念なことに手元が写っていませんが、クライアントの手は、椅子の上に置かれた「布団代わりのベンチコート」を押さえつけています。

CO「では、押さえつけて。。。。それをしているお父さんをイメージしながら。。。。こんな感じだったかな。。。。どんな風に力を入れて。。。。どんな表情で。。。。心の中では何が起こっていたかな。。。。」 
CL「自分にやってたいるつもり?。。。。小さな自分に。。。」

CO「では、そんなつもりで押さえつけて。。。。中の子はなんて言ってる?」
CL「やめてーー!苦しい!」

CO「やめてーー苦しい。。。それでも押さえつけるよ。。。もっと強く。。。。やめて。苦しい。やめて苦しい。布団の向こうから聞こえるけど、ぐーーって押さえてる。。。。。。この時の感覚。。。。この時の感情。。。エネルギー。。。。どんなものがあるだろう。。。。。

CL「押さえつけないと。。。。」
CO「押さえつけないと。。。。押さえつけないと。。。。。」
CL「暴発するから」
CO「暴発しそう。。。。それを止めないと。。。。。。いいよいいよ。それ感じていて。。。。そして
何か次の言葉出てきたら。。。教えて。。。。。」
CL「。。。。なんでうまくいかないんだ。。。。。

CO「なんでうまくいかないんだ。。。。。(娘が叫ぶ感じで)やめてーー苦しいー助けてーーーあーーお父さん―――お父さんやめてーーー苦しいーーこわいよーーー」
CL「俺だって怖いよ!!!」

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 最初にお父さんの役からやってもらいました。お父さんの中で何が起こっていたのかを明らかにできたら、そこに対してどのように関わっていけば良いかのヒントが得られると思ったからです。

 だから、娘を押し付ける体験をリアルにしてもらいながら、お父さんの内側で何が起こっていたかを理解してもらおうとしています。

 読者の方にお願いですが、あなたが必要十分なトレーニングを受けていないなら、このようなことをクライアント相手にしないでください。場合によってはクライアントが余計苦しむような結果になってしまうこともあります。僕自身は長期間にわたるトレーニングや、スーパービジョンを受けて、このようなワークをしています。

 「押さえつけないと爆発しそう」「なんでうまくいかないんだ」「おれだって怖いよ」

 ちょっと意味がわかりませんね。。。。だけれども探求の入り口には立った感覚はあります。だから続けます

CO「(娘になりきって)お父さーーんこわいよーー苦しいよーー」
CL「俺だって苦しいよ。。。涙」
CO「その奥に何がある?苦しい。。。涙の。。。その奥に。。。。。
CL「。。。。。。。。愛されたい。。。。。。」
CO「お父さん!もう一回きかせて!!!

CL「愛されたい!!愛されたい。。。。。。怖がらずに愛して欲しい。。。。涙。。。。

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 一つたどり着きましたね。お父さんは、やってることは意味不明ですが、その奥にある苦しみは「愛してほしい。。。。」というもがきだったようです。

 そして、コーチはすぐに次の手を打ちました。

CO「愛されたいぃぃぃ。。。って言いながら、布団の内側から聞こえてくる声に耳を傾けるよ。。。。。。(娘になりきって)愛してるよ!!!お父さんーーー私が愛してるよーーーーお父さんのこと大好きだよーーーおとうさーーん!私はお父さんのこと大好きだよーー。おとうさーーーーん!私が抱きしめてあげるよーーーーーお父さんに寂しい想いさせないよーー。お父さん寂しかったんだねーーー

!!」
CL「うわーーーーーーーー(号泣)」

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 後から聞くと、ここでクライアントは思い出したそうです。

 「お父さんは自分たちのことが大好きだった。でもどう愛していいかわからなかった。だから何度も家を出ていった。お父さんはどうしていいか分からなかったんだ。お父さんは親から愛情を注がれることなく、孤独で居場所のない人生をずっと送ってきたから。。。」

 クライアントが泣き止んだ頃を見計らって、僕は次へと進めていきました

CO「お嬢さんがこう言ってくれたら、心の中で何がおこりますか?」
CL「もう出してあげたい。。。。ごめんね。。。。これしかできなくてごめんね。。。。ごめんね。。。申し訳ない。。。。」
CO「(娘になりきって)大丈夫だよ(涙)わたしは分かってるから。。。。。おとうさーーん。。。お父さん怖かったんだね。。。。
」
CL「。。。。。(沈黙1分)」
CO「お父さん!Mちゃんが好きだよって言ってくれて何が起きましたか?」
CL「苦しさが溶けてく感じ。。。」

CO「溶けていくのを感じて。。。。で、溶けてくとね。。。。お布団も、砂糖菓子みたいに。。。。ふわふわ、ふわふわっと溶けていって。。。で、娘さんをしっかりと抱きしめてあげよう。。。。ぎゅっと。。。。二人がつながったな。。。深い愛情で繋がってるな。。。。。十分に実感できるまで。。。
CL「。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。はい」

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 このようなプロセスを通じて、クライアントの中に

 ・私はできる!=状況を打破できる/お父さんを癒せる
 ・人々は仲間である!=お父さんにも事情があった/分かり合える

 という認知を作っていったわけです。とりあえず、やりたかったことが実現できたので、僕としても一安心です。

 そして、この感覚がしっかりと定着するように「砂糖菓子みたいに」などメタファーをつかいながら、時間をかけてイメージをしてもらいました。

CO「今、Mちゃんの中で何が起こってる?」
CL「お父さん、すごい複雑な家庭環境だったから。 母親から3歳の時に捨てられた。。。。。子どもの頃からすごい力をもっていたらしくて、だから宗教の人たちにも疎まれて。。。愛されてなかったから。。。人とうまく関われない。。。。だから苦しみながら、(布団蒸しも)どこか私と遊んでいた感じもあったのかもしれない。。。もちろんそれがいいこととは思わないけど、でもそうだったのかなと分かった気がします。。。。」
CO「寂しさとか満たされないものがあった」
CL「うんうんうんうんうん」
CO「そっか」
CL「羨ましかったんだと思う。娘が
CO「そっか。どうして?」
CL「僕から愛されて」
CO「ふはははははは!めんどくせえな、お父さん!

CL「ほんと。そうなんですよ笑」
CO「自分で愛して、自分で羨ましがって。。。はははは」
CL「やばい、ほんとそう(笑)本当にありがとうございました。
こんな丁寧に。。。。ありがとうございます(泣)」

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 「めんどくせえな、お父さん!」と、僕の関わりはやや乱暴ですが、率直なコミュニケーションを取りながら、クライアントと一緒に、新しいお父さんのイメージをリアルに作っていきたいのです。愛すべきお父さんの実像を浮かび上がらせたいのです。

 さぁ。次は「布団蒸しされる側」の体験をしてダメ押ししていきます。

CO「はい、じゃあ次でレッスンも終わりだよ」
CL「はい!」
CO「次はここに寝て。。。。そのまま、布団蒸しされるよ。。。。ちょっと怖いかもしれないけど、大丈夫。。。さぁ、押されるよ。。。。苦しい。。。。怖い。。。。でもやめてくれない。。。。。。。もう少しがまん。。。。そう。。。。苦しいけど。。。その中で。。。。お父さんの苦しみに意識を向けて。。。。『苦しい。。。愛してほしい。。。』。。。。それをきいていて。。。。。。そしてもし『お父さんのこと大好きだよ』って、言えると思ったら言ってあげて」
CL「。。。。。。お父さん、大好きだよ。大好き!!」
CO「お父さんの心に響くように言ってあげて!!!
CL「お父さん!!!大好きだよ!!!!(涙)」

CO「気持ちが伝わったら、お父さんと繋がり始めるよ!お布団がとけてって。。。。お父さんと繋がる。。。。Mちゃん、ごめんね。こんなに苦しめて。。。。。溶けていくよ。。。。お父さんのこと抱きしめるよ。。。。。お父さん、怖かったんだね。。。。私も怖かったよ。。。。。」
CL「私も怖かったよ!私も怖かった。。。。。」
CO「お父さんが抱きしめてくれるよ。。。。」
CL「(お父さんを抱きしめて、背中を撫でながら)大丈夫だよ。。。」

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 素晴らしいですね。最高の恐怖だった体験に、クライアントは自然に入り込み体験しています。そして、自分できちんと状況を打破しました。

 私はできる!!路線に物語を書き換えることに成功したのです。

 コーチは、Take2を提案し、もう一度同じシーンを「子どもの頃の自分側」で体験してもらいました。クライアントはさらに上手にやれるようになりました。

 それが終わって、

CO「よし立ち上がって。今さ、ちょっと変わったことやったわけだけど、布団蒸しのイメージがね、ここに来る前と今でどう変わったか教えて」
CL「。。。。わかったのは、寂しいんだっていう感情と繋がると、なんか私は強くなって、抱きしめてあげたくなる

CO「そうか。。。すごいな」
CL「当たり前かもしれないけど、これまでは自分の苦痛だけにフォーカスしてきてた。。。身体の感覚。息が出来ない。逃げられない。。。。」
CO よし、じゃあ、あなたはとても優秀なので追加レッスンしてあげよう。もう一度、横になって。。。セルフ布団蒸ししてみて(笑)」

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 ということで、ここから想定外のレッスンを追加する流れになりました。ここまでの流れは、このセッションの最初(椅子を置き始めた頃)から想定済みだったのです。

 ところが、最後のクライアントのコメントをきいて、追加のレッスンを思いついたのです。

 ここまでの体験を「電車に乗れるようになるイメージワーク」に繋げるためのアイデアが浮かんできたのです。

 次回はこのシリーズの最終回。Mちゃんはどんな追加レッスンを受けるのでしょう。そして僕たちは一緒に電車に乗るのか。。。そこで何が起こるのか。。。乞うご期待


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だいじゅ@コーチング脳のつくり方
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