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パニック障害で電車に乗れない。そんな相談をしてきたクライアント相手に行ったコーチングセッション。ちょっと長いので、シリーズで紹介している4回目。とても面白い構造で、改めて自分で記録を読み直しても興味深いプロセスでした。ぜひ、あなたの着想のもとにしてください。
クライアントはMちゃん。電車に乗れない他にも、ご主人の鬱にどう関わるか、お父さんの自殺にどう向き合うか、そして過去のトラウマ「布団蒸し」をどう克服するか。コーチはそれらのテーマを同時に扱っていきます。その4ではいよいよ、トラウマ体験の書き換えに臨みます。
とは言え、前回の最後に見たように、クライアントとコーチは楽しそうに笑っています。ここからどのように進めていくのでしょうか。
改めて椅子の配置を再確認しておきましょう。ここからは左端の「子ども時代のトラウマ」に向き合います。
お父さんに布団に簀巻きにされ「やめて」と言ってもやめてもらえなかった体験。それが彼女の「自己効力感」や「他人への信頼感」を下げているのです。
これに向き合って「私はできる!人々は仲間である!」的な認知への転換を図っていきたい。それがアドラー心理学的な発想なわけです。
また、それに向き合うことは彼女がコーチ(対人援助者)として生きていく上でも重要な体験となるでしょう。困難な問題にも向き合い、それを乗り越える強さが自らにあることを知るのです。
当たり前ですがコーチは、この「布団蒸し」事件のイメージを書き換えることで、クライアントの「電車に乗れない問題」にも好影響が生まれることを狙ってもいます。
部屋を見渡すと。2月の寒い日だったので、クライアントが来てきたベンチコートがありました。それを布団の代わりくるくる巻いて、その中に子どものMちゃんがいるという設定にします。そして、クライアントにはお父さん役になってもらって、上から布団(ベンチコート)を押さえつけてもらいます。
写真は当日の様子。記録ビデオからの切り出しでは、残念なことに手元が写っていませんが、クライアントの手は、椅子の上に置かれた「布団代わりのベンチコート」を押さえつけています。
最初にお父さんの役からやってもらいました。お父さんの中で何が起こっていたのかを明らかにできたら、そこに対してどのように関わっていけば良いかのヒントが得られると思ったからです。
だから、娘を押し付ける体験をリアルにしてもらいながら、お父さんの内側で何が起こっていたかを理解してもらおうとしています。
読者の方にお願いですが、あなたが必要十分なトレーニングを受けていないなら、このようなことをクライアント相手にしないでください。場合によってはクライアントが余計苦しむような結果になってしまうこともあります。僕自身は長期間にわたるトレーニングや、スーパービジョンを受けて、このようなワークをしています。
「押さえつけないと爆発しそう」「なんでうまくいかないんだ」「おれだって怖いよ」
ちょっと意味がわかりませんね。。。。だけれども探求の入り口には立った感覚はあります。だから続けます
一つたどり着きましたね。お父さんは、やってることは意味不明ですが、その奥にある苦しみは「愛してほしい。。。。」というもがきだったようです。
そして、コーチはすぐに次の手を打ちました。
後から聞くと、ここでクライアントは思い出したそうです。
「お父さんは自分たちのことが大好きだった。でもどう愛していいかわからなかった。だから何度も家を出ていった。お父さんはどうしていいか分からなかったんだ。お父さんは親から愛情を注がれることなく、孤独で居場所のない人生をずっと送ってきたから。。。」
クライアントが泣き止んだ頃を見計らって、僕は次へと進めていきました
このようなプロセスを通じて、クライアントの中に
・私はできる!=状況を打破できる/お父さんを癒せる
・人々は仲間である!=お父さんにも事情があった/分かり合える
という認知を作っていったわけです。とりあえず、やりたかったことが実現できたので、僕としても一安心です。
そして、この感覚がしっかりと定着するように「砂糖菓子みたいに」などメタファーをつかいながら、時間をかけてイメージをしてもらいました。
「めんどくせえな、お父さん!」と、僕の関わりはやや乱暴ですが、率直なコミュニケーションを取りながら、クライアントと一緒に、新しいお父さんのイメージをリアルに作っていきたいのです。愛すべきお父さんの実像を浮かび上がらせたいのです。
さぁ。次は「布団蒸しされる側」の体験をしてダメ押ししていきます。
素晴らしいですね。最高の恐怖だった体験に、クライアントは自然に入り込み体験しています。そして、自分できちんと状況を打破しました。
私はできる!!路線に物語を書き換えることに成功したのです。
コーチは、Take2を提案し、もう一度同じシーンを「子どもの頃の自分側」で体験してもらいました。クライアントはさらに上手にやれるようになりました。
それが終わって、
ということで、ここから想定外のレッスンを追加する流れになりました。ここまでの流れは、このセッションの最初(椅子を置き始めた頃)から想定済みだったのです。
ところが、最後のクライアントのコメントをきいて、追加のレッスンを思いついたのです。
ここまでの体験を「電車に乗れるようになるイメージワーク」に繋げるためのアイデアが浮かんできたのです。
次回はこのシリーズの最終回。Mちゃんはどんな追加レッスンを受けるのでしょう。そして僕たちは一緒に電車に乗るのか。。。そこで何が起こるのか。。。乞うご期待
僕と一緒にスーパーコーチになるトレーニングをしたい人は