コーチングに「厳しいフィードバック」は必要か?

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 「あなたのスクールでは『ネガティブフィードバック』も教えてもらえないの?」

 以前、僕のところのスクール生が、他所のコーチから言われた言葉です。スクールによって教えていることなんてマチマチなわけですから、こういうことを言わないほうがいいと思うんですよね。自分も同じこと言われるだけですから。

 僕自身はコーチング業界に19年いて、比較的勉強熱心な方だと思いますが、それでも知らないスキルもあるし、使いこなせないスキルもいくらでもあります。全部知ってて、何でもできるコーチなんて存在していないです。

 いわゆる『ネガティブフィードバック』はもちろん知っていますが、僕自身が使うことはないですし、使わなくてもコーチングもカウンセリングも成立します。そしていくつかの理由から、スクールでは教えていません。色々なやり方があるということなのです。

気持ちは分かるが、違和感もあるよね

 「このままだともったいない」「すでに起こっている問題に気づいてほしい」「変わらないと本人のためにならない」

 クライアント(もしくは部下、子ども)に対して、そんな風に感じることはあると思います。そして

 「私が言わなきゃ誰も言わないだろうから」「みんなが思っていることなのに、本人は気づいていないから」「ちゃんと向き合うべきだから」

 とか思って、「ネガティブ」な側面(=問題や課題)を相手に伝える。その際、多くのコーチは、タイミングを見計らって、自分の感情も制御して、言い回しも工夫しながら伝えるわけですから、それは立派な仕事であると言えると思います。

 でもね。別にマストでもないんですよ。

 もちろん、フィードバックしなければ、相手はそのままの行動を続けるかもしれない。その場合はどこかで気づくわけです(絶対に相手は気づかないと断じるなら、傲慢の誹りを免れないと思います)。そして、どうするかは本人が決めればいい。さらに同じことを続けるのか、そこでやめるのか。本人の人生ですから、他人から言われることではないのです。

 もちろん、あなたがコーチではなく、直接の利害関係者で相手の言動に困ってるんだったら、話し合ったらいいと思います。その際には、困っていることを伝えて、相手にこうして欲しいとリクエストすることになるでしょう。相手の事情を聞く必要もありそうです。「相手に問題点をフィードバックするぞ」みたいな雰囲気でいくとかえって揉めることもあるので気をつけたほうがいいですよね。

 クライアントから「ぜひ問題点や課題についてフィードバックください。耳の痛いことも大歓迎です」と言われているならそうするのも良いと思います。けれどそうでない場合、コーチは何のために、何の権限でそれを行うのでしょうか。そこが不明確なままだと「上から目線での指導」になりかねないのでやはり要注意だと思います。

ポジティブフィードバックでいいやん

 僕は、そもそもポジティブフィードバックをどのくらいしているかが重要だと思うのです。

 「ポジティブ」なフィードバックをめちゃくちゃしてたら、クライアントとの関係も良くなるし、本人の状態も良くなります。それだけで本人の行動が変わってくる場合もたくさんあります。その可能性を本気で探究すれば、このような変化成長のルートも間違いなく存在しているのです。

 僕が普段「勇気づけ」とか「勇気づけのフィードバック」と呼んでいるもののポイントは以下の通りです。

勇気づけのフィードバックで伝えること
・相手の行動や発想で興味深い点や面白いところを
・相手の行動や結果に関して、感謝できるところを
・できてないことではなく、できてるところを
・結果ではなく、プロセスの努力や工夫を
・他者との比較でなく、本人が成長した点を

勇気づけの観点

 相手のゴールを押さえた上で(部下との関係であれば、共通のゴールについて合意をとった上で)、あとはひたすら勇気づけのフィードバックをしながら、

「次にどんな行動をとれると良さそうか?」

 を相手と考えるです。大切なことなので、もう一度言います。よりゴールについて近づいていけそうな新しい行動を相手と一緒に考えるのです。そうしたら行動が変わっていきます。それが周囲に感謝されることだと分かれば、本人もますます自主的にそのルートにのっていきます。

 まずはこれをやり切ろうとすることが大切だと考えているのです。多くの事例はこれで乗り越えていけるのです。

 ダメな部分があるから指摘指導される。という構図になりにくいのも良い点だと思います。僕たちはクライアントを「改善が必要な人」「そのためにフィードバックを受ける必要がある人」と見ないと決めているのです。

 「自分で考えて自分で決める人。自分のため他人のために動ける人」

 僕たちは相手のことをそんな風に見ようと、決めています。そのこと自体が相手を勇気づけ、自ら建設的な行動をとるように変化していく力となると考えているからなのです。

結末予測とポジションチェンジでいいやん

 そうは言っても、問題行動に気がつかない。そして、そこが変わるように手伝いたい。あなたがそう思うなら、

 「これだけ頑張ってるのに、ちょっともったいないと感じるところがあるからフィードバックしていい?」

 と確認とるのもありでしょうね。その上で

 「××の理由で、これを続けると◯◯の状態になると思うんだけど、どう思う?」

 などと言ってみると良いかもしれません。結局今の行動をやめる理由は、「このままの行動を続けると訪れるであろう結末」をさけるためだからです。

 ただし、だとしたらフィードバックより前に相手に「結末予測」をしてもらうのでも良いと思うのです。

「現在の行動を続けていくと、どうなりそう?」
「それの良い点はどんなところ?」
「残念な点があるとしたらどんなところだろう?」
「ゴールに到達するために、他にはどんなやり方があるだろう?」

 とかの質問でもやれることはあると思います。これでやれるなら、相手はますます自分で考え、自分で変われると自信がもてますし、その路線で変化していくはずです。

 これを成立させるためには、相手との良い関係や、相手が視野広く前向きに発想してくれることが大切ですね。だから、日々のポジティブフィードバックが重要だと思うわけです。

 ちなみに「視野広く」について補足しておきます。相手に視野広く発想してもらいたいなら

 ・理想の未来
 ・他人の立場

 を意識してもらうのが王道です。簡単にやるなら

「理想の未来を生きる自分なら、どんな行動をしたら良いといいそう?」
「一緒に仕事をしている◯◯さんの立場から見ると、あなたがどうしてくれると助かりますか?それはどうしてですか?」
「お子さんがいい状態になるために、あなたにできることがあるとしたらなんでしょう?」

 のような質問を投げかけて、一緒にイメージしてみることですね。コーチがタイムラインやポジションチェンジをきちんと使えると、うまくいきやすいです。

もっと可能性を感じてもらおう

 クライアントにもっと自分の素晴らしさ、自分の持つ可能性、自分の持つ影響力を実感して欲しいのです。自分の可能性に目覚めて欲しい

 そのためにも勇気づけのコミュニケーションを続けたいのです。そして

・思っていたよりもできる自分
・自分を大切に思っている仲間の存在

に気づいてもらいたい。そうすることで、成長意欲、貢献意欲が生まれてくるからです。

 逆説的ですが、そんな状態になれば

「××についてだけど、◯◯をしてみたらどうだろう?どう思う?」くらいに軽く提案をするだけで

「確かにそうかもですね。試してみたいと思います」

と受けてくれる可能性があがっていくのです。関係性を確立する。価値あるゴールを共有する。そしてクライアントに効力感をしっかり感じてもらう。そうすれば何も難しくなくなると思うのです。

リクエスト&シミュレーション

 そんな状態であれば、リクエストもいいですね。

「僕からのリクエストなんだけど、ぜひ◯◯をしてみてもらいたいんだ。どうだろう」とか

「私から1点りクエストしてもいいですか?◯◯さんと××について話してみてもらいたいんですが、そうすると何が起こりそうですか?」とか

 やってみるのです。リクエスト&シミュレーションですね。あなたが「私メッセージ」で、リクエストという形でアイディア提供することで、よりヨコの関係で一緒に考えることに繋がります。こうすることで、よりクライアントに主体的に選択してもらいたいわけです。

フィードバックはすぐに引っ込める

 最後にアドラー心理学におけるフィードバックの原則をお伝えします。

相手が受け入れなかったら、すぐに引き下がる

抵抗に抵抗しない

 実は僕がコーチング活動のの背景理論として採用しているアドラー心理学は、かなりフィードバックも使います。しかも受け取るのが痛いようなフィードバックをすることもあります。

 でもそれは常に

 「もしかしたら◯◯なことが起こってるのかな?どうだろう」

 のように切り出され、相手がそれに否定的な場合はすぐに引っ込められるものなのです。

 だって、押し問答になっても仕方ないし、無理やり相手を説得しても狙った効果が出ないと僕たちは考えているのです。

 相手に「仲間」だと思ってもらわなければ、相手のチカラになるのとは出来ません。相手の認知を無理やり変えることは出来ません。クライアントはどうしたいかは自分で決めるのです。

 だから僕らは「言ってはみるけど押し付けない」のです。この姿勢を持っていないと、クライアントは間違っていて、コーチが正しいと言う世界観を押し付けることになりますね。それだとクライアントが主体的に選択して行くことから離れてしまうでしょう。

 一度出した意見を引っ込めるなんて、と思う人もいるかも知れませんが、それが効果的なのです。クライアントにまたボールが戻されるわけです。だから

 僕たちのフィードバックを否定したセッションからしばらく経って、クライアントが言うことがあります。

 「あの時、僕が否定した後、そうなんだね!って言って取り下げてくれたじゃないですか。そのおかげで、改めて自分で考えられたんですよね。冷静に考えたらコーチの言う通りだなと思って。。。おかげで意地にならずにすみました。ありがとうございました」

 もちろん、いつでもこれが起こるわけではありませんが、信頼感があればこういった未来に近づいて行く。僕たちはそれを信じているのです

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だいじゅ@コーチング脳のつくり方
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