プロコーチが教える「1on1ってどうすればいいの?」
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ここ数年「1on1ってどうやったらいいんですか?」など1on1に関する質問を受けることが増えました。僕がチームメンバーのコーチングを始めた2005年を思うと、世の中本当に変わったなと思います。
もちろん1on1=コーチングではありませんが、コーチングを使った1on1をしっかりやりたいならしっかりしたトレーニングを受けることがおすすめです。残念ながら、本を読んだり講習に参加しただけでは、数ヶ月以上のトレーニングを受けた人ができるコーチングと同じことはできません。
とは言え、1on1の質を上げるための考え方や方法はいくつもありますので、今日はその中から大切なものをいくつかご紹介しましょう。
目的を理解しよう
あなたが1on1をする目的は何ですか?最初に明らかにすべきことはこれです。
・相手のモチベーションを上げるため?
・目標の管理をするため?
・悩み事を解決したあげるてめ?
・相手に関する情報を入手するため?
・相手に所属感や肯定感を持ってもらうため?
・相手と仲良くなるため?
まずはあなたが1on1する目的を言語化、整理しましょう。「何が目的であって、何が目的でないのか?」が分かれば、具体的に何をしたらいいかは自ずと明らかになると思います。
何が目的か不明確な場合、僕からのおすすめの目的はずばり
協働関係を深めること
です。
協働関係とは、アドラー心理学的に言えば相互尊敬と相互信頼、同じ目標に向かって協力することです。
1on1の時間を使って、相手との間に協働関係をつくり、それを深めるのです。そうであるなら考えるべきことは、1on1の時間をどう使えば
・お互いに尊敬し信頼し合えるようになるか
・目標を共有できるか
・目標に向かって協力し合えるようになるか
のようになるということです
指針を決めておこう
次に1on1の時間で扱われる話題に関して指針を決めておきましょう。
・どんな情報に関しては共有するのかしないのか
・何については報告してもらうのか、何は不要か
・こちらから報告すべきものは何か
情報の共有や報告は協力には欠かせませんから、1on1の中で何を共有するのかあらかじめ決めておくと良いですね。
次に相談です。これは大きなポイントとなります。
まず相手から積極的に相談してもらうことは大切です。早期に対応したほうが簡単に済むことが多いですし、相談してもらえれば仕事や人間関係の質が担保されやすいからです。
ですので日頃から「なんでも相談してな」「一緒に考えるよ。それが私の仕事だから」などと伝えておくのがおすすめです。
ただし、実際に相談されたときに、どのように対応するのか指針が不明確な方も多いと思います。
・どんな問題は自分が引き取って対処するのか?
・どんな問題は相手に対して指示をして、実行してもらうのか
・どんな問題は相手に考えてもらうのか
ざっくりでも構わないので、イメージしておくと良いと思います。それほど難しいことでは無いはずです。
①相手(メンバー)では対処できない、すべきでないことは自分で引き取る
②相手が考えるのが難しい、その時間がない場合は指示を出す
③上記に該当しないものは考えてもらうことを手伝う=コーチング
②と③の線引きは実は難しいのですが、あなたがコーチングに関心があったり期待をしているなら、可能な限り③でやろうとして、どうしても無理なものは②で処理すると考えるのはどうでしょう。
ご理解いただけると思いますが、②の比重が増えると、相手の成長は鈍化します。モチベーションも自己効力感もあがりません。あなたの期待を超える成果も生まれません。
ですから、まずは「自分が話す時間を減らし、相手の話を聴く時間を増やす」と決めることです。「8割は相手の話を聴く時間」くらいの意識でいると良いと思います。それでも6割を切ることもあるはずです。
考えてもらうこと難しいことではない
相手に考えてもらうのを手伝うことは、実は難しいことではありません。ただ
「どうしたらいいと思う?」ときけばいいんです。
ただし心理的安全性に注意しましょう。
心理的安全性=何を言っても大丈夫だと思えるから、自由な言動をとることができる心理状態。
ですから、相手にプレッシャーを与えず、どんな答えでもウエルカムなつもりで質問するのです。
相手が素晴らしいアイディアをもっていることもあります。しかしそれはレアケースでしょう。けれども逆に何のアイディアもないこともレアケースなのではないでしょうか。
仕事をしているわけですから、相手の中には何らかのアイディアはあるはず。だからそれを出してもらいながら、広げて行ったり、深めて行ったりすればいいのです。
あとは簡単なコーチングができると良いです。GROWモデルというやつです。
・最終的にどうなったらいいんだっけ?(ゴール)
・すでに何ができてる?次の課題は何?(リアリティ=現状)
・どんなリソースが使えそう?(リソース=資源)
・ゴールに向けてどんな選択肢があるだろう?(オプション)
・具体的に何から始めると良さそう?(ウィル=意思決定)
こんな質問を使いながら、一緒に考えて行ったらいいのです。基本は相手に考えてもらいながら、ちょっと足りないなと思ったら「他にはどんなことがありそう?」と質問すればいいのです。もっと具体的に考えてもらいたいと思えば「それって具体的にはどういうこと?」とでも質問すればいいですね。
その上で補足が必要なら「〜のようなこともゴールに含まれるんじゃない?」とか「まずは◯◯のほうが緊急に取り組んだほうがいいんじゃない?」とか投げかけてみても良いのです。
相手が「確かにそうですね」とでも言ってくれたら「どうしてそう思う?」などときいてみたら、また相手が考えて成長してくれるわけです。
あとはぜひ以下の記事を読んでください。「教えることもコーチングを使って簡単にできますよ」という記事です。
もう一つ大切な質問を紹介しておきましょう。それが
「だれと話をすれば良いと思う?」という質問です。
・誰と話をするとゴールが明確になりそう?
・誰と話をすると課題が明らかになると思う?
・誰と話をすると、良いやり方を思いつくと思う?
・誰と話をすると、モチベーションが上がりそう?
何にでも使えるし、あなたが抱え込むことも少なくなります。うまく活用してください。
これ以上のもっと高度なことがやりたかったら、ぜひあなたの目的に応じてコーチングを学んでください。たくさんのことができるようになります。
過ちへの対処法
相手が何か問題を起こしてしまい、それに対処しないといけない場合の指針についても決めておきましょう。
問題を起こした時に大切なのは、自分で対応できるものは自分でしてもらうことです。あなたが問題処理を引き取ってしまいすぎると、相手の責任感が育たないどころか、むしろ無責任になってしまいかねません。
アドラー心理学では、過ちを犯した場合は3つのことを推奨しています。
①原状回復
②再発防止
③謝罪
相手に損害を与えたら、まずは可能な限り原状回復のための行動をすることです。そして次に再発防止のために対策することです。謝罪は必要な範囲ですればいいことであり、①②をしっかりとすることが大切だとアドラー心理学では考えるのです。
メンバーが過ちを犯したときに大切なのは、相手が「原状回復」「再発防止」「謝罪」に取り組めるように勇気づけることです。
相手を責めてもいいことはありません。自分でしっかりと責任が取れるように勇気づけ励ますことが大切なのです。あなたがそのように対応するなら、相手は自分で責任を取り、そのことによって成長し、チームへの所属感も高まることでしょう。
再発防止策について考える質問でおすすめの一つが
「時間を巻き戻せるとしたら、どこまで巻き戻したい?」
「そこまで巻き戻せたら、何をする?」
というものです。再発防止策を考えることは成長につながりますから、ぜひ質問して考えてもらってください。
1on1の時間にしたほうが良いこと
基本的な考え方はここまでに説明したので、あとは1on1の時間にしたほうが良いことについて簡単にまとめてみましょう。
近況のシェア
情報共有や報告
お願いしたいこと、相談したいこと
目標と現状のギャップの確認
次回までに何をすると良いか
勇気づけ
特別なテーマがあるときは、それに時間を使えばいいと思います。上記はあくまでも普段の1on1の時間の使い方です。
まずはぜひアイスブレイク的に近況のシェアなどしてみるのがおすすめです。お互いに仕事のことだけでなく、プライベートなことなでも話せると関係は良くなると思います。ぜひ相手に「人として関心」をもって欲しいのです。相手は生きている人間です。仕事はその一部分にすぎません。
つぎに情報共有です。相手から教えてもらいたいことはぜひ報告を受けてください。そして、あなたから相手に報告すると信頼関係や協力関係が高まりそうなものは、ぜひ相手に伝えてください。
相手に「何かお願いしたいことや、相談したいことがないか」を聞いてください。可能ならリスト化してもらって、その時間で何を扱うか、残りはどうするかを決めましょう。相談に乗る場合は、守秘義務を大切にしてください。相談内容な口外しないことを原則とするのです。その上で、他の人にもシェアする必要があるものは「このことに関しては◯◯のために、◯◯さんにも共有させてください」と許可をとるのです。このことにより、相手は相談しやすくなります
不平や不満が出てきた場合。一旦きいてみることをお勧めします。具体的に何があって、どのように困っているかを知ろうとするのです。その上で①対処すべき問題なら対処する②本人に対処法を考えてもらいたいなら、それを伝え、必要なら考えるのを手伝う③筋違いであるなら、相手を傷つけないように配慮しつつ、きちんと伝える。ということが大切ですね
同じ目標に向かって進んでいるはずですから、目標と現状のギャップについて考える時間もとってください。どんなギャップがあるかに関して意識をを合わせることが大切です。その上で、ギャップを埋めるために何ができるかを一緒に考えてあげてください。そして、いつまでに何をしたら良いかを決めるのです。
大切なのは勇気づけです。あなたとの1on1の時間が終わったら、相手のやる気が上がっていること、相手が確実に行動をとること。そのことにコミットを持ってください。そして、あなたとの信頼関係が強くなっていること、相手の自己肯定感が高まっていること。これらも大切です。
1on1の時間が終わったら、そのような観点で1on1の自己採点をして、次回の1on1をもっとどのようなものにしたら良いかを考えてみてください。きっと素晴らしい1on1が実施できるようになり、あなたのチームは大きく変わっていくことになると思います。
あなたも誰かに相談する
最後に。あなたも誰かに相談に乗ってもらってください。そうすることであなた自身の視野も広がるし、結果も出るようになります。それだけでなく、相談をする体験が増えると、相談にのることも上手になります。
1on1の質がなかなか上がらない理由の一つは、1on1を実施している上司自身が誰かに相談する時間をとっていないことです。ぜひ、社内の誰かでも、社外のコーチでも相談相手にしてみてください。
そう言った点でも、コーチングを学び、コミュニティに所属することはおすすめです。
いかがだったでしょうか。1on1に関する記事は殆ど書いてこなかったので、質問があればコメント欄などに投稿ください。追加記事を書く際に参考にさせてもらいます。
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