ポジションチェンジこそが究極のリフレーミングである(後編)

 続きです。

 僕が最初にコーチングセッションで衝撃を受けたのはポジションチェンジでした。

 その頃のことは本にも書いてますので、ぜひ読んでもらえたらと思います。

 で、僕が衝撃を受けたポジションチェンジは、少し別角度からノートでも紹介しています。

 僕が昔パワハラを受けていた『元上司』とのポジションチェンジだったんですけど、本当にびっくりするくらい相手が「降りてきちゃった」わけです。気がついたら僕は元上司の気持ちになって、僕自身の椅子に向けて怒鳴ってました。そして怒鳴りながら、上司の感じていた気持ちも分かり、それまでのことが色々と紐解かれていったのです。

 あれだけ苦手で、怖くて、そして何年も何年も引きずった上司だったので、相手の椅子になんか座りたくもなかったのです。けれど椅子に座った瞬間に、まったく違う意識状態になり、上司の気持ちがわかってしまった。。。。 

 コーチングを始めて、まもない頃だったので、ビギナーズラックみたいなラッキーなセッションでした。でも、あんな衝撃的な体験ができたから、今でもコーチングの可能性を感じまくっているわけです。

 ぜひこれまでポジションチェンジで良い体験がない方もあきらめずに何度も受けてください。上手なコーチに当たったり、タイミングが良かった場合、人生が変わるレベルの衝撃が体験できると思います。

相手と同じ目で世界を見ようとする

 まだうちの子が1歳の頃の話です。家の中を歩きまわるようになり、キッチンの入り口にベビーゲートをつけました。

 そうしたらゲートを揺すりながら泣くわけです。奥さんが困りました。キッチンで作業をしているときに、子どもが入ってこないでくれるのはありがたいのですが、ゲートにしがみついて泣かれるのは辛いわけです。

 遊べるようにおもちゃをセットしてみたり、キッチンからひたすら声がけをしたりとか工夫をするのですが、うまくいかない。で、僕に相談をしてくれました。

 僕は奥さんが子どもと2人のときにそこまで苦労していたと気づいていなかったのです。で、奥さんに「ポジションチェンジをしてみよう」と提案しました。

 奥さんは半信半疑でした。だって、息子はまだほとんど喋ることができなかったのです。まぁ常識的な反応ですね。

 でも、僕からしたら相手(息子)が喋るかどうかは関係ないのです。言葉を喋れなくても感情はあるし、内的世界も存在しているはずだからです。

 だから奥さんにお願いしてみました。「息子と同じくらいの背丈になるように、屈んでみて、そこから彼がやっているように、声を出して、柵を揺すってみてほしい」

 奥さんは、その通りにやってみてくれました。そして

 「うわー。思ってたより、全然キッチンの中が見えない」

 と言ったのです。

 そして、もう少しキッチンの中が見えやすいように、ゲートの位置をずらすことにしました。奥さんに再び息子目線でチェックしてもらいましたが「これなら大丈夫そう」とのことでした。

 それだけのことでしたが、それ以降、息子がゲートで泣くことは無くなりました。

 相手になりきってみる。相手の目線で世界を見てみる。相手の気持ちを感じてみる。相手が望んでいることを理解しようとする。とても大切だし、パワフルなことだと思います。

大事な相手にポジションチェンジしてみる

 せっかく視点がガラッと切り替わるポジションチェンジですから、問題の人間関係ばかりを扱うのではもったいないです。

 人間関係に問題がなくても、ぜひポジションチェンジをしてみてください。例えばあなたが大事に思う相手。もしくはあなたを大事に思ってくれている相手とのポジションチェンジもおすすめです。

 相手のあなたを思う気持ちに触れた時、あなたのセルフイメージが変わったり、あなたの世界観が変わったりします。ぜひ自分がどれだけ大切に思われていたり、愛されているかも、相手目線から感じてみてください。

 僕はよく、クライアントに「親友」とポジションチェンジをしてもらいます。「親友」とのポジションチェンジは本当に素晴らしいです。

 親友は、本当にあなたの幸せを願ってくれます。あなたを大切にし、あなたを尊重してくれます。そしてあなたのためを思って、あなたにコメントをしてくれるのです。

「この人の良いところは?」
「この人のどういうところが好きなの?」
「この人にどんな人生生きて欲しい?」
「この人にはどんな可能性があると思う?」

 そんなことを親友に教えてもらいたいのです。そしてこれは、クライアントの中に「親友視点」を作りたいという思いの現れでもあります。

 スキーマ療法(認知行動療法)にヘルシーアダルトという言葉があります。「健康な(健全な)大人」という意味ですね。自分が感情的に拗れているとき、変な思い込みに振り回されているとき。自分の中に「ヘルシーアダルト」がいてくれたら、もがいている自分を愛情をもって受け止め、冷静に話を聴き、合理的な行動が取れるように勇気づけしてくれると思いませんか。だからクライアントの中に「ヘルシーアダルト」を育てていきたいのです。

 僕の中で『親友視点』は、ヘルシーアダルトに近しいのです。親友にも愛情と冷静さ、そして勇気づけがあると思うのです。だから、親友視点で自分を見ることに慣れて、その視点(フレーム)をいつでも使えるようになってもらいたいと思うのです。親友視点で自分を見るというリフレーミングですね。

自分自身とのポジションチェンジも良い

 自分の足を引っ張る自分など、自分の中での葛藤を感じることもあると追います。そんなときには、あえてその自分の視点に立ってみることもできます。もう一人の自分とのポジションチェンジですね。

 あるクラスでの出来事です。

CL「コーチングで頑張ろうと決めたのに、なぜか動けなくて」
CO 「どういうこと?」
CL「もっと頑張れるはずなのに、妻もいるのに、何か煮え切らないんです」
CO「煮え切らない?」
CL「やれること全部やらなきゃ。やったってどうなるかわからないのに。。そうやって頑張ってきたはずなのに、なぜか今回は動けない」
CO「やれること全部やらなきゃいけないと思ってる自分と、何か煮え切らない自分がいるのかな?」
CL「そうですね。。。なんか怖気付いてるというか」
CO「どんどん動こうとしている自分がいるのに、煮え切らない自分はどうしている感じですか」
CL「足を引っ張ってるというか、重りみたいな感じですかね」
CO「足についた重り?」
CL「そうですね」

 動けない自分がいるというのです。これまでは結構動いてこれたのに今回はダメだと。

 コーチ「やれること全部やらなきゃ」という言葉を捕まえて、そんな自分がいるの?と確認しました。そして煮え切らない自分とポジションチェンジをするのですが、今回は椅子を使いません。

 重りのように足を引っ張っているというので、それに対応した形でワークします。その方がリアリティーが出るし、ワークが深まるからです。

CO「じゃあ、『全部やらなきゃいけない自分』になって前に進もうとしてもらっていいですか。僕が煮え切らない人の役をやって、足を引っ張りますから」
CL「はい。。。(前に進もうとする)」
CO「(屈んでCLの両足を押さえて邪魔をする)」
CL「(前に進もうとする)」
CO「(邪魔しながら)なんて言いたい?後ろの自分になんていいたい?」
CL「いい加減にしろよ!」
CO「あとは?」
CL「なんでやらねーんだよ。やらなきゃどうにもならないじゃないかよ」
CO「(邪魔しながら)あとは?」
CL「とにかくやるしかないだろう!やれること全部やったって認めてもらえるかわからないんだぞ」
CO「言えた?」
CL「はい。言えました」

 この引っ張り合いは、結構本心が出やすかったりAHA!体験が起こりやすいワークです。進もうとする相手を引っ張りながら、ぽろっと本音が出たりするのです。

CO「じゃあ、今度は僕が前に行こうとするから、足を引っ張るほうをやってください」
CL「(COの足を押さえる)」
CO「いい加減にしろよ!なんでやらねーんだよ。やるしかないだろう」
CL「(押さえながら)ダメだよ」
CO「ダメじゃねーよ。やるしかないだろう。全部やったって認めてもらえるかわからない」
CL「。。。。。ダメだよ」
CO「なんでだよ。妻もいるし、やるしかねーんだよ。邪魔すんなよ」
CL「ダメだよ。。。。また。。。潰れちゃう」

 ここで本心が出ましたね。

 「また潰れちゃう」

 きけばクライアントは、以前鬱で倒れたことがあるとのことでした。けれどもその後も、状態が少し良くなったら、またがむしゃらに頑張ってきたそうです。

 より自分らしく仕事をしたいと思い、コーチングの道に憧れたのに、やはりどこか不安で、またがむしゃらになろうとしていたのを、もう一人の自分が止めてくれていたのです。

 そのことに気づいたクライアントに、今度は奥さんとのポジションチェンジを提案しました。そして奥さんから見て「どんなやり方がうまくいきそう?」「奥さんはどんなふうに協力したいと思ってくれてる?」などを教えてもらったのです。

違うものを見る。違う場所から見る

 気づきや変化はどこから生まれるのでしょう。

 ・違うものを見る
 ・違う場所から見る
 ・違うやり方で見る

 このように見方を変えた時に気づきが生まれるのです。

 そして、劇的に見え方が変わるのが、他人の視点から見てみることなのです。

 子どもから見る。親友から見る。奥さんから見る。もう一人の自分から見る。大切なのは相手と同じ体験をすることです。相手がしてきた体験に関心を持ち、その体験を通じて世界を見てみようとするのです。

 違う世界を生きてきた人、違う世界を生きている人の視点を借りるから、いつもの自分では気づけない発想に辿り着くことができるのです。

 アドラーは読書療法と言って読書を進めていたと言います。それも著者という別の人生体験をしてきた人の視点で書かれたものを読むことで、新しい気づきを得るためなのです。

僕たちと人生を変えるコーチングを学びたい人は




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