1on1で何ができるようになると良いか
ラスト48記事
1on1という言葉は、ここ数年でかなり浸透してきたと思います。しかし一方で「忙しい」「話すことがない」「嫌な思い/気まずい思いをした」「意味が感じられない」「自分もされることなくやってきたし」などと敬遠されることもありますね。
けれども本当は「各メンバーと協力体制を深め、結果を出すためのプロセスの質を上げることで成長を助ける時間」として使えると、お互いにとって有意義なものになると思います。
1on1で扱えたらいいことは基本的に①メンバーがゴールに向けてどのように取り組んでいけると良いかの作戦会議②その時々の相談したいことへの対応なわけです。どちらも昨日の記事で指摘したように心理的安全性をキープしつつ「どうしたらいいと思う?」と相手のアイデアをきいてみることと、GROWモデルの質問で対応することができます。
今日の記事では、それ以外にできるようになると良いことの中から
「心身のケア」「対人関係の相談」「キャリア支援」
の簡単なガイドラインを書いてみます。参考にしてください。
心身のケアをする
僕はコーチングは最高のメンタルケアの手段の一つだと思っています。だってコーチングでは
①自分にとって価値があると思える目標に向かって
②リソースをフル活用しながら、自分らしいやり方で取り組んでいく
それを人に支援してもらいながら、進めていくわけです。だからメンタルにとって良いことが起こるのは当たり前です。逆を考えたら明らかですね。「意味を感じないゴールにむかって、向いてないやり方で、孤独にすすめていく」ようなことをしていたら病んでしまいます。
ですから、上の①②を大切にコーチングをしていくこと。そしてあなたとの信頼関係が高まるように関わっていくこと。そうすること自体がメンタルケアになるのです。
その上で、メンバーの心身のケアのサポートをしようと思ったら、毎回の1on1で
「身体の状態と心の状態は、それぞれ10点満点で何点ですか?」
と質問してみればいいのです。その上で
「何があったから、その状態なんだろう?」
と更問いをして、さらに
「心身を良い状態にするために、今週はどんな時間がとれるとよい?」
などとセルフケアを進める行動に落とし込んだら良いのです。
簡単ですね。そして、心身の点数が良くないまま時間が経過している場合は、
「このまま進んでいくとどうなりそう?」
などと経過の予測をしてもらったりしながら、
「誰に助けてもらえると良い状態になりそう?」
などと、周囲のリソースを活用できるように促します。それでもあなたから見ていて、状態が良くないと感じたり、好転しそうもないと思える時は、産業医などへの面談を進めるなど、対策することもできますね。
心身のケアについてはこちらの記事も参考にどうぞ
対人関係の相談
対人関係の悩み事も尽きることがありませんね。なかなか難しいケースも多くて、対応に苦慮することもあると思います。僕たちも使っているガイドラインをお伝えしますので、参考にしてみてください。
①なるべく早目の対応
これは対人関係に限ったことではありませんが、相談を難しくしないコツは、早めの対応を心がけることです。対人関係も小さな問題のうちに、手を打てば、簡単に終わることも多いのです。
ぜひ「なんか気になってることない?」「相談したいことあったら言って?」と普段から相手に投げかけながら、小さな気掛かりを口にしてもらうようにしておきましょう。
そして、対人関係の小さな問題が出てきた時に「そんなことは気にしないほうがいい」というような対応でなく、
「どうしたら(少しでも)お互いに気持ちよくやれるんだろう?」
「何が分かり合えたらいいんだろう?」
「どんな時間をとれるとお互いに良いだろう?」
などの質問をして、何か改善のためにできそうなことを実行してもらうことです。早期発見、早期対応が最大のコツと心得ましょう。
さらに先手の対応をするなら「ありがとう」「お願いできますか」の文化を醸成しておくことです。まずはあなたから率先してメンバーに具体的感謝を伝える。そしてメンバーにも、他のメンバーの貢献に意識を向けてもらい、それを口にすることを勇気づけるのです。
「他のメンバーにしてもらって感謝していることってどんなこと?小さなことでもいいから教えて」
などと切り出してみればいいのです。また助け合いの文化を作ることも役に立ちますから、
「他のメンバーに手伝ってもらえると助かることは何?」「誰に手伝ってもらえると助かる?」「どうやって頼んでみると良さそう?」「相手に対しては何ができそう?」などと質問したりして、助け合いの文化をつくるように仕掛けていけば良いのです。
「ありがとう」と「お願いできますか」によって、チームに共同体感覚を醸成するのです。共同体感覚とはアドラー心理学が提唱している概念で、チームに対して「私は貢献できる」「人々は仲間である」と思える感覚のことです。メンバーの一人一人がこの感覚が持てると、人間関係の問題は起こりにくく、問題が起こっても解決されやすくなります。
②まずはしっかり受け止める
これも対人関係の悩みに限りませんが、相手の話をジャッジしたりすることなく、まずはそのまま受け止めてください。もちろん相手に事実誤認があったり、思い込みがある場合もありますが、一旦受け止める。
最初から否定的に話を聞くようでは、相手はあなたを信用して話してくれなくなってしまうでしょう。
対人関係の悩みは、当事者それぞれに言い分があるのです。それを押さえた上で、まずはあなたの目の前にいる相手の言い分を聞くのです。
相手が「言いたいことを言えた」「ちゃんときいてもらえた」と思えるように、相手の言葉に耳を傾け、話をきいてあげてください。そのように関わってもらえると、人は冷静さを取り戻し、別の視点から考えられるようになります。
③共有できる目的の確認
つぎに大切なのは、大目的の確認です。仕事で関わっているわけですから、揉めている相手とも共通してもっている目的があるはずです。
それがなんなのかを確認するのです。目の前のメンバーと、揉めている相手とが、お互いに「確かにこれが目的だよね」と言えるような目的を明確してください。
仕事ですから、なんのために協力し合うのかと言えば、その目的のために協力し合うのです。ということで、そこが急所なわけですから押さえておきます。
④分かってもらいたいこととその理由の明確化
相手側と共有できる目的が押さえられたら次に行きましょう。
「現状に関して、揉めている相手は、どう考えていそうか?」「それはどうしてか?」
をきいてみてください。相手には相手のロジックがあるはずなので、それを想像してもらうのです。
そして、その上で、
「あなたが相手に分かって欲しいこと(して欲しいこと、しないで欲しいこと)はなんですか?」「どうしてそれを分かって(して、しないで)欲しいのですか?」
と問いかけるのです。色々でてきたら、それらを聴いた上で
「まず分かって欲しいことは何?」
「最低限わかって欲しいことはなに?」
などと整理してもいいですね。そしてさらに
「いつ、どんな言い方で伝えたら、うまく伝わりそうですか?」
ときいて、シミュレーションしてみたら万全ですね。必要なら
「誰に協力力してもらえると良さそうですか」
をしてもよいですね。
⑤当事者同士でのアサーションと合意
アサーションとは「相手を傷つけることなく自己主張する」ということです。人が不幸になるのは「我慢して伝えない」か「相手を傷つけるような伝え方をする」からなのです。
ぜひ、相手方と協力し合うために、相手方を傷つけるようなことなく伝えることを促してください。そして相手方の話も聞いた上で、お互いが「今後どうしていくか」について合意できるようにサポートしてあげてください
ぜひ、これらをガイドラインにして相談に乗ってみてください。うまくいかない場合は
「まずはどうしたらあなたが少しでも良い状態でいられるだろう?」
について考えみることもできますし
「誰に相談すると、よいヒントが得られる可能性がありそう?」
などと外部リソースの活用を考えてもいいですね。
キャリアを考える
キャリア開発を手伝うことは、専門的なノウハウや経験が必要ですから、専門性がない方は、自分ができる範囲で相手にとって価値がある関わりができると良いですね。あなたが自分でしてあげられないことは、外部リソースを活用してもらうように促したらいいのです。
そう言った点では、誰にでもできるのは、「メンバーのキャリアに関心を持つ」ということです。
メンバーの一人一人がどんなキャリアをつくっていきたいのか、について関心を持つのです。
「なんでもやれるとしたら、どんな仕事がしたいの?うちの会社でできることじゃなくてもいいから教えて」
「キャリアの次のステージでは、何ができていたら最高?それはどうして?」
「10年後に最高の仕事ができているとしたら、それはどんな仕事?」
「キャリアの中で、やれたら(経験できたら)いいなと思うのはどんなこと?」
「キャリアで大切にしたいことって何?」
「キャリアについて、やらないといずれ後悔する可能性があるのって、例えばどんなこと」
「もっとどんな世界(社会)になったらいいと思ってる?そのために何ができたら嬉しい?」
質問は様々ですが、相手が仕事人生の中で何をやれたら幸せなのか?に関心をもって話をきいてください。
大きな質問ですから、すぐに答えが出ないことあります。それでいいんです。あなたが興味関心をもって問いかけてくれる。そのことが相手にとって価値があるのです。
そして何か方向性が見つかったら
「そこに向けて何ができると良いだろう?」
「今の部署でどんな経験ができると役に立つかもしれない?」
「何か協力できることはある?」
などと質問できますね。このように関わることで、相手とあなたの信頼関係も強まりますし、相手の現在の仕事へのモチベーションも上がるはずです。
そしてあなたと相手の良い関係が、将来にわたって続いていく可能性もあがりますね。
終わりに
昨日と今日の記事だけでも、できることはたくさんあると思います。そして上手に相談にのれなくてもいいのです。あなたが誠意をもって相手を手伝おうとすることが、相手との信頼関係を高め、相手の主体性を引き出していくのです。
そして1on1で取り立てて話をすることがなかったら、無理に話題をつくることもありません。ゴールの進捗と今後の進め方の確認だけで済ませて、さっさと終わらせても良いのです。
けれど相手にとってもせっかくあなたに相談できる時間なのですから「1on1の時間をつかって、相談したいことを持ってくるように」伝えておけるといいですね。それでもメンバーからの相談がなければ、あなたが相手に一緒に考えてもらいたい課題を持ち込んで「どう思う?」ときいたっていいのかもしれません。ぜひお互いの未来のために、自由に活用して欲しいなと思っています。
そして、相手が積極的に相談してくれるようになるためには①信頼関係の深化②相談して良かったという経験の蓄積の2点が必要なのです。少しずつそれを高めていってください。どんどん良いことが起こるようになるはずです。
今回はここまで。
僕たちと本格的なコーチングが学びたい方は