無意識のプログラムを『イメージの力』で書き換える(実践編)
メタファー(例え)をつかってイメージをしてもらうことで、クライアントの無意識に働きかける。それがこの記事のテーマです。
メタファー= あるものを別のものに例えて表現する言語技法。直接的な比較ではなく、一方の特徴を他方に転移させることで、複雑な概念や感情を理解しやすくする。
例えば、上記の記事では、「人生は旅」というメタファーを使っています。人生という抽象的な概念を、より具体的で理解しやすい「旅」という概念で表現することで、人生に対する理解を深めたり、少し新しい観点で捉え直せるように支援しているわけです。(未読の方には、おすすめです!)
カウンセリングとメタファー
カウンセリングや心理療法の世界ではどうしてメタファーを利用するのでしょうか。さまざまな理由がありますが、代表的なものを紹介しましょう
①複雑な体験を表現する
②安全に探索する
③新しい視点を手にいれる
④クリエイティブになってもらう
⑤よいイメージを定着させる
①複雑な体験を表現する
どう表現していいか分からない自分の状態をメタファーのほうが楽に表現できる場合があります。「嵐のなかにいるみたい」「身体が石になっちゃった感じ」「ジェットコースターで振り回されてる」「知らない真っ暗な場所にいて動けない感じ」「強風の中で崖の上を歩いてる」
表現しにくいことも、具体的に言えないことも、メタファーなら表現できることもありますし、ダラダラ説明せずともコンパクトに言い表せる可能性があります
②安全に探索する
言いたくないこと、具体的に話そうとするとクライアントの状態が悪くなるような話。そんな話もメタファーで語ることで、比較的安全に話せたり、そこで何が起こっていたか探索できます。
これさ例えばそのまま語るのが難しいトラウマ体験をメタファーで表現してもらう、というようなことなのですが、これはちゃんとトレーニングを受けたセラピストのやる仕事です。
③新しい視点を手にいれる
ある出来事を別のメタファーで見てみることによって、あらたな気づきを得ることができます。
基礎編で紹介した事例のように現在のプロジェクトを「下級生として参加する部活の夏合宿」というメタファーでみるか、「大学のゼミ合宿」とみるかで、捉え方が変わったのはこの例です。
④クリエイティブになってもらう
メタファーで扱うことで、問題そのものにとらわれずにクリエイティブにアプローチを検討することができます。
問題をテレビゲームに例えることで攻略法や裏技を検討するなど
⑤よいイメージを定着させる
印象的なメタファーは記憶に残りやすいので、セッション後にも折りに触れて思い出し、日常の行動に変化を与え続けることができます。
自信は筋肉のように鍛えることができる。感情は天気のようなものでいつまでも続かない。
メタファーを展開する
それでは実際にメタファーをつかってクライアントの内側の世界に働きかけるやり方をみていきましょう。
CL「対人関係で悩んでいます」
CO「例えばどんなことでしょう」
CL「とにかく人が怖いんです」
CO「怖い?」
CL「そうなんです。なにか怒られるような気がして」
CO「。。。」
CL「。。。何も言えなくなってしまう」
CO「言えなくなっちゃう。。。どんな感じなんだろう」
CL「はい。なんか真っ暗やみから石とかを投げられそうな感じで」
「何も言えなくなってしまう」というクライアントに何が起こっているか理解しようとしたコーチが「どんな感じなんだろう」と投げかけたのを受けて
「真っ暗闇から石を投げられそう」というメタファーがクライアントから出てきました。
こんな風に、突然クライアントがメタファー(例え)を出してきた時に「出た!」と思えることが大切です。
クライアントがどんなメタファーでその物事を理解しているかわかれば、それを使って一緒にワークしていくことができるので、まずはメタファーが出てきたことに気づくことが大切です。
もちろん、メタファーが自然に出てこなければ、クライアントが「何のように取られているのか?」を質問で確認することも可能です
CL「何か怒られるような気がして、何も言えなくなってしまう」
CO「そっか。なんか相手のことをまるで何みたいに感じてるんだろう」
CL「。。。。。突然爆発する岩みたいな感じ」
CO「爆発する岩?」
CL「ばくだんいわってわかります?ドラクエの。なんかHPが下がると突然、大爆発するんですけど、あれみたいに、何かがたまっていくといきなり爆発しそうな感じで」
CO「なるほど。自分のことは何みたいに感じてる?」
CL「うーん。なんか、危ないかもしれないのに、棒でつついちゃう子どもかな」
CO「どういうこと?」
CL「うっかりなんかやっちゃうから、とにかく近づかないでいたほうがいい」
こんな風に「何みたいに感じてる?」「何のように思ってる?」「何かに例えるなら何みたい?」とか問いかけてみたらいいのです。
もとに戻って「真っ暗やみから石とかを投げられそうな感じ」から再開しましょう。メタファーが特定できたら、まずはその世界がどんな感じなのか全体を知ろうとしてみましょう。
CO「真っ暗闇っていうけど、どんな真っ暗闇なの?」
CL「。。。。。そっか。なんかその相手がいる周りが真っ暗で、その中に相手が潜んでいる感じ」
CO「どういうこと?その相手の周りだけが暗い?」
CL「そう。何人か怖い相手がいるんだけど、その周りだけが暗い。だからその暗いところには近づかないようにしている」
全体がなんとなくわかってきたら、相手が感じているのと同じように、その世界を感じて欲しいのです。だから「あなたはどこにいて、何を見ているの?何を聞いているの?」みたいな質問をすることになります。
CO「あなたはどこにいるの?」
CL「基本は家にいるんだけど、そこから出ないようにしている。。。家から出る場合も、暗闇には近づきたくないから、暗闇がありそうなところには寄らずに明るそうなところを歩くようにしている」
CO「その世界には、他にどんなものがあるんだろう?」
CL「。。。。」
CO「例えば」
CL「うーん。なんか私がいるのは、空中に浮かんだキューブの中みたいな感じで、下には普通の世界がある感じがする」
CO「普通の世界?」
CL「本当の地球。そこにいる本当の人たち。私が入ってるキューブにいる人たちは、人間の仮面をつけてるんだけど、中身が何者かわからなくて怖い。」
地球の上に浮かんでいるキューブ状の世界に住んでいて、その中には何ヶ所か暗闇がある。そこには人間の仮面をつけているけど、なんだか分からない存在が潜んでいて、近づくと石とかが投げられそう
クライアントはそんな世界に生きているイメージだと言っていますね。外側の世界が知れたので、今度は内側に行ってみましょう
CO「下には本当の地球があるんだね。本当の地球を見ると、どんな気持ちになる?」
CL「あっちに行きたい」
CO「そうなんだ。どういうことだろう」
CL「あっちにいる人は、話をすれば分かり合える気がするから」
CO「そうなの?」
CL「怒ったりもするだろうけど、でも何で怒ってるのかわかるし、こっちの話をすればちゃんとわかってくれると思う」
内面に意識を向けましょう。そしてクライアントが望んでいることを知ろうとしてみてください。
このケースでは、分かり合える人がいる世界に行きたい、わかり合いたい、安心したい、などがクライアントの欲求として明らかになっていますね
次に世界の変化の可能性をみていきます
CO「またキューブに話を戻すけど、このキューブが変わっていくとしたら、どんな風に変わっていくのかな」
CL「なんだろう。。。だんだん暗闇は離れていって、見えなくなっていく。。。それでちょっとの間は暗闇がなくなるけど、また自分で暗闇をつくちゃう」
CO「自分でつくっちゃう?」
CL「そう。私が、ちょっと色を塗って、それで近づかないようにすると、どんどん暗闇になる」
CO「そうなんだ。塗らないとどうなるの?」
CL「塗らなくても、ちょっと暗めに見えるところに近づかないでいると、暗闇になってくる」
時間軸を進めているわけです。どんな風に変化していくか観察しようとしているのです。
暗闇は消えていく。でもなぜかクライアントが暗闇をつくるそうです。不思議なケースですね
CO「もし近づいたらどうなるの?」
CL「暗闇が消えちゃう」
CO「消えたらどうなるの?」
CL「そこに人がいる」
CO「人?」
CL「普通の人」
CO「あー。わかってくれる人ってこと?」
CL「。。。。。そうですね。わかってくれる人です」
CO「そのときキューブはどうなってるの?」
CL「ないですね。」
CO「ない?」
CL「はい。地上にいます」
クライアントが近づくと暗闇は消え、キューブも消え、地上に「わかってくれる人」と一緒にいる状態になるそうです。
これは、クライアントにとって望ましい状況でしょうから、この状況に近づくためのリソースを探してみましょう。
CO「キューブの世界から抜け出すのに役立つものがあるとしたらそれは何でしょうか?」
CL「キューブの天井にシーリングライトみたいなものが付いていて、それが点灯したら、全体が明るくなります」
CO「明るくなったらどうなるの?」
CL「暗闇が薄くなるし、その中にいる人が見える」
CO「どんな人が見えるんだろう」
CL「あー。普通の人ですね。。。。べつに仮面もつけてない」
CO「そうなんだ。どういうことだろう」
CL「仮面をつけてると思い込んでただけで、明るくしてみたら、べつにつけてなかったんだと思います」
CO「なるほど。それに気がついたら、どうなりそう」
CL「怖く無くなるし、普通に話せます」
CO「いいね。シーリングライトはどうやったら点灯させることができるんだろう」
CL「多分リモコンがある」
CO「どこに?」
CL「すぐ近くにある。もしかしたら持ってるのかも知れない」
そろそろ謎解きをしてみましょう。何のことを言っているのか教えてもらうのです
CO「ねぇ。キューブって言ってるのって、現実で言うとなんのことだろう」
CL「。。。。。なんかネットですかね」
CO「ネット?」
CL「はい。会ったり、話したりしてるうちはいいんですけど、しばらくあわないでネットのやりとりだけになると、きっと不安になる。」
CO「不安?」
CL「何考えてるのか分からないなって思って」
CO「そっか。そんなとき、リモコンのスイッチ入れると、明るくなるみたいなんだけど、リモコンって何のことだろう」
CL「多分電話かけることで」
CO「どういうこと?」
CL「電話で話すると安心なんですよね。わたし昔から電話がすごい好きで」
CO「そうなんだ」
CL「でも、メッセージのやり取りで済ますから、電話かけなくなって。。。。ああ」
CO「どうしたの?」
CL「声が聞こえないからとか、相手の生活が感じられないから不安になっちゃうんだな」
CO「どういうこと?」
CL「いや。怖くなっちゃうのって、結構親しい人たちなんです。本当はもっと色々話したりしたいのに、それしてないと不安になっちゃう」
CO「どうできたらいいんだろうね」
CL「電話で話すか直接あって話したい。メッセージだけだと、分からないことがあって不安になることがあるから、って伝えれば良いんだと思います」
CO「携帯電話がキューブから出してくれる鍵だったってこと?」
CL「そうですね。本当はガラケーがいいくらいなんですけど。電話をかけると、電気がつくみたいです」
メタファーの世界が描写できたら、その時間軸を動かしてみる。望ましい変化が見つかったら、その変化を起こすのに役立つリソースを探してみる。
そんなことをしながら、
「これって現実で言うと何のことを言っているんだろう」
とメタファーから現実の世界に転換してみる。
このようにして、自分のことを理解し、現実的な打ち手を探してみたわけです。
終わりに
いかがだったでしょうか。メタファーの世界を旅しながら、現実世界を変えるヒントを見つけるやり方をみてもらいました。
他にもいろんなアプローチの仕方がありますが、まずはよかったら今回の記事を参考にメタファーの世界に興味をもって、その中を探索してみてください。
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