どうしてコーチングが上達しないのか(後編)
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昨日の記事で上達の妨げになる姿勢として「③フィードバックを受けつけない」を取り上げました。
今日はそのことについての補足からスタートします。
クライアントからのフィードバックは大切です。クライアントから評価されるコーチングだからニーズがあるのです。変な例えですが、本格中華すぎて、日本人の口に合わない。みたいな事象は勿体無いと思うのです。
コーチの理屈的には正しくても、クライアントがついてこれないなら、クライアントに合わせることも検討してみたらいいのです。
アドラー心理学的には、こちらのアプローチにクライアントが抵抗した場合は、すぐに別のやり方に切り替えることを推奨しています。クライアントが主体的に取り組むことが大切だと考えるからです。
僕のスクールでは、クライアントからもらうフィードバックは
・コーチは評価判断せずに、話を白紙で聴いてくれたか?
・本当に話したかったことが十分に話せたか?
・コーチングの進め方や結論に納得感があったか?
という3項目を10点満点で採点してもらい、それぞれにコメントをもらうようになっています。
ちょっと珍しいやり方ではないかと思います。これはスコット・D・ミラー博士の研究から生まれています。クライアントの主観でこれらの点数が高かった場合に、セッションの効果がうまれやすいというのです。
考えてみたら当たり前です。「受容的共感的に話をきいてもらい、本当に話したかったことが話せて、コーチングの進め方や結論に納得感がある」なら、クライアントは変化していきそうですから。
ですからこのような価値ある項目を選択してフィードバックをもらったら、もっとクライアントの役に立てるようになるポイントが丸わかりになるのです。
プロコーチになりたい人は「このセッションの価値はいくらでしたか?」ときいてみるのも良いですね。セッションの何が変われば、もっと価値が上がるかを教えて貰えば、あなたのセッションの価値はどんどん上がっていくのです。
でも注意してもらいたいのは、これらのフィードバックを受けただけでは、必ずしも技術的には向上しないのです。これも当たり前です。クライアントはコーチングの技術に対してはフィードバックしようがありませんから。
僕は駆け出し時代、先輩から「クライアントにフィードバックをもらっても意味がない」と言われたことがあります。それは「クライアントはコーチングを知らないから」という意味だったんですね。
「お客さんにケーキについてのフィードバックをもらっても仕方ない。お客さんは材料や製法などについて素人だから」
みたいな話で、半分正解で半分不正解みたいな話だと思います。美味しかったか?量はどうだったか?見た目はどうだったか?とかは教えてもらって参考にしたら良いと思うのです。それとは別に技術的なフィードバックは師匠や先輩からもらったらいい。
コーチングも一緒です。技術的なフィードバックは先生からもらうべきです。一般のコーチと先生は本来は相当な技術面の差があるはずです(特に最近は、そうでない先生もたくさんいるので要注意ですが)。指摘してもらわなければ自分では気づけないことも多いはずです。
教えて貰えば、直ぐに変えていくことができて、あっという間に成長できることもありますから、ぜひ先生からもフィードバックを受けましょう。
さて、ではあなたの上達を妨げる他の項目についてもみていきましょう。
④ゴールがない/おかしい
あなたはコーチングに関するゴールを持っていますか?
「プロコーチになる」「クライアントが10人いる」とかそういうものではなく、
どんなコーチングができるようになりたいか?
に関して具体的なイメージを持っているでしょうか。きいてみると案外、ゴールイメージを持たないまま練習している人が多いのです。
資格取得をゴールの一つにしている場合で、その資格が実技試験がある場合は「合格に相当するコーチングができる」というようにコーチングに関するゴールがあるはずです。
当たり前ですが、どんなコーチングがしたいかに関する明確なイメージを持ちましょう。それがあなたを上達させてくれるのです。
簡易的かつ効果的な方法の一つは、自分が受けた(見た)特定のセッションができるようになることをゴールにすることです。
そもそもコーチングセッションを受ける場合には、コーチの許可をとって録音録画などさせてもらうと良いですね。そして「こんなコーチングがしたい!!」と思うようなセッションに出会ったら、それを自分の目標にするのです。
そのセッションを10点として、現在の自分のセッションに点数をつけます。そしてその間にあるギャップを埋めていくのです。
僕はコーチング2年目に入ってすぐに目の前で見た、先生のセッションの凄まじさに衝撃を受けて、なんとしてもこれを自分でやれるようなると決めました。そして何年もの時間をかけて、それに取り組みました。
あまりにも遠すぎる目標だと大変なので、もっと短期で近づける目標がいいと思いますが、憧れのセッションはあなたの「ありたいコーチ像」ともリンクするはずですから、ぜひそこに向かって進んでください。
つぎに大切なのはあなたが「セッションのゴール」を持っているか?ということです。
セッションが終わった時に、クライアントがどうなっていたらいいか?
そのイメージを持っているでしょうか。
「セッションのゴールなんてやってみないとわからない」「セッションのゴールをコーチが決めると誘導になる」
という考えにも一理ありますが、そうは言ってもほとんどのコーチはゴールをもってやっているはずです。
・時間内にアクションプランまで決まっている
・クライアントのモチベーションが上がっている
・コーチングを受けて良かったと思っている
・クライアントが自分に自信をもっている
・自己理解が深まっている
・クライアントが主体的になっている
・継続セッションを受けたい気持ちになっている
などなど
どれほど意識しているかは別にして、あなたは何らかのゴールに向かってコーチングをしているわけです。
そこをまずは明確にしましょう。そして程よくチャレンジングな目標に変えていくのです。
1つのセッションで何をしたいのか?終わった時にどうなっていたいのか?
そのゴール意識がセッションへの取り組みを変え、あなたを成長させるのです。まずは
セッションが終わった時には、必ず元気になってもらう!!
でも良いのです。そうやって取り組むから、クライアントに元気になってもらうことができるコーチになっていくのです。
⑤課題が何だか分かってない
「あなたのコーチとしての課題は何ですか?」
と質問されて即答できないなら、課題を明らかにすることも上達への道です。
そもそもゴールがないと課題の設定も難しいので、どんなコーチになりたか?どんなセッションがしたいのか?をまずは明らかにしましょう。
その上で、技術的な課題にはどんなものがあるか?どんなあり方を身につけていきたいのか?を書き出してみるのです。
まずはざっくりでも良いのです。
・信頼関係をすばやく構築する
・コンフォートゾーン外の未来を描けるようになる
・ポジションチェンジができるようになる
・「確認の質問」が自然と使えるようになる
とか、何ができるようになると良いのかを明らかにしましょう。その上で、それぞれの課題の関連性を明らかにした上で、最初に取り組むと効果的な課題が何かを特定するのです。
そうして例えばポジションチェンジに取り組むなら、
・手順を覚えて、スムーズに実施できるようになる
・ポジションごとに気持ちを切り替えてもらえるようになる
・クライアントが新しいコミュニケーションを自然と取れるようになる
など具体的な課題のステップを作ろうとしてください。こうして意識的に課題を乗り越えることができるようになるわけです。
こういうことを意識的にやっていないコーチが残念ながら結構いるのです。とても勿体無いので、ぜひ課題の全体感を持った上で、今何に取り組むと良いかを明らかにしてください。
先生にセッションを見てもらって、どんな課題に取り組むのが良いかを指摘してもらうのも有効です。自分の視点では気づけないこともたくさんあるからです。
ちなみに、これらの前提として、さまざまなコーチングカウンセリングに触れることが大切です。
人は自分が体験したものをベースにしてしか考えることができないのです。あなたが受けたコーチング、見たコーチングが「あなたの理想のコーチング」をイメージする素材となるのです。
あなたが触れたコーチングカウンセリングの絶対量が少ない状態では、「素晴らしい理想」も描きようがないし、「本質的な課題」にも気づきようがないのです。
なるべく、様々なコーチングカウンセリングに触れてみてください。そのことがあなたのコーチとしての上達の豊かな土台となるからです。
⑥自分の可能性に気づいていない
世界一の先生のもとで学んで、あらゆる技法を伝授されたら、あなたはどんなコーチングカウンセリングをするようになるでしょう?そのとき、あなたのクライアントにはどんなことが起こるでしょう?
この質問に対して、あなたが思い浮かべた答えが何であれ、それは実現する可能性があります。(すべての答えはあなたの過去の体験を根拠にしているからです)
しかし、この質問により誠実に回答しようとすれば、その答えは
「よくわかならい」
になるはずです。これも当たり前ですね。僕もコーチング業界20年になりますがよくわかりません。これまで国内外の著名なコーチやカウンセラーの先生たちの仕事を見せてもらってきましたが、まだまだ知らないコーチングカウンセリングがたくさんあるのです。
それでも以前に比べたら、コーチングカウンセリングが切り開く世界の広さや豊かさを実感できるようになりました。それは多くの素晴らしいコーチやカウンセラーに出会い続けてきたからです。
あなたも私もまだコーチングカウンセリングの可能性の多くを知りません。だから自分自身がコーチカウンセラーとしてどれだけの可能性を持っているかも、まだ知らないのです。
そのことに無自覚で、「コーチングやカウンセリングがわかったような気持ち」になっていると、上達は止まります。
人間は、分かったことは学ばない
からです。分からないままの状態に身を置くことは辛いことかもしれません。だから私たちは「分かった気になってしまう」ことを選択するのです。でもそれは上達を止める道になりかねません。
今自分ができることに気づいていることは良いのです。それと同時に、自分ができていないこと、分かっていないことにも意識を向けること。それを受け入れることです。それが私たちの可能性を広げてくれるのです。
20時間の練習でできるようになるコーチングもあります。
1万時間の練習でできるようになるコーチングもあります。
全てのコーチが1万時間の練習をすべきとはまったく思いませんが、あなたも1万時間の意識的な練習を経たら、まったく次元の違うコーチングができるようになります。それは間違いありません。
あなたには選択肢があります。そして多くの読者には10年20年それ以上の人生の時間があると思います。
あなたにはコーチカウンセラーとして現在の想像を超えた可能性があるのです。その中に「上達」を位置づけてみてください。
これは単にコーチングカウンセリングのスキルの話を超えて、人としてどう成長していくか。どんな人生を生きるか。という話でもあるのです。
究極的に、どんな人として生きたいか。どんな風に人と関わりたいか。そこで何が起こったら最高か。それを大きな可能性の中で検討してみてほしいのです。人生の時間をかけてそこに向かっていくなら、自然と上達もついてくるはずです。
⑦自分に向き合っていない
あなたの思い込みは、あなたのコーチングに影響を与えています。あなたの欲求もあなたのコーチングに影響を与えています。
誘導的なコーチングをするコーチは、人を信頼していないのかも知れません。厳しい言い方に聞こえるかも知れませんが、相手を正されるべき存在、能力が不足している存在とどこかで思っていると誘導的なコーチングになるのです。
「何かをしてあげられない自分には価値がない」とコーチが思いこんでいる場合には、過保護、過干渉、過剰サービスなコーチングになる可能性がありますね。これも一般的にクライアントにとって良い関わりとは言えませんんね。
「家族は分かり合えないものだ」と思い込んでいるコーチは、クライアントを家族と引き離そうとするでしょうし、「家族はわかりあうべき」と思い込んでいるコーチはクライアントを家族に向き合わせ続けようとします。
承認欲求に飢えているコーチは、クライアントに褒められること、持ち上げられることを目指してしまいます。もしくはクライアント以外の人に持ち上げられるためにセッションを利用することもあるでしょう。
このように、自分の思い込みや、欲求というものがあなたのコーチングに影響するのです。
そして「自分は優秀であり、何でも理解できる」という思い込みが上達を妨げることもあり、「自分はセンスがないからこれ以上無理」という思い込みが上達を妨げることもあるのです。
「あなたは何にでもなれます」
とアドラーは言いました。「何にでもなれる」は事実ではないでしょうが、「何にでもなれる」と思っていた方が可能性が広がるのは真実でしょう。
あなたも世界もどのようにでも変われるものです。ですから自分の思い込みに向き合って、それを書き換えていきましょう。あなたがより幸せに生き、なりたい自分になれるような「思い込み」に書き換えていきましょう。
人によりよい形で関わることができ、お互いにより幸せに生きることができるような「思い込み」に書き換えていくのです。
私たちコーチカウンセラーが自分に向き合って、自分の思い込みをより役立つものに書き換えた時。私たちは変わり、クライアントも変わります。
思い込みは自分で気づくことも、自分で書き換えることも難しいので、人に手伝ってもらうことも検討してくださいね。
終わりに
上達について幾つかの観点をご紹介しました。簡単にまとめると
あなたには可能性がある!!どんなコーチになりたいかイメージして、課題をクリアしていこう!!フィードバックをもらって、新しいやり方を試してみよう!!自分に向き合う必要を感じたら向き合おう!!
その先にはあなたにしか出来ないコーチングがあるし、あなたがいるから生まれる世界があるはずです!!
コーチカウンセラーは間違いなく世の中を変えていく存在です。その役割を受け止めてプロフェッショナルとして立ち続けましょう!!
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