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コーチングしている人は「答えは相手の中にある」って本気で思ってるの?

「答えは相手の中にある」の意味

コーチングを教える人に「答えは相手の中にある」と言われて、戸惑ったことのある方は多いのではないでしょうか?

教えるー教わるという関係と、「答えは相手の中にある」という考え方は相容れないし、これまでの教育のほとんどは教えるー教わるという関係で行われているので、戸惑うのも頷けます。また、一生懸命答えを引き出そうとしてもなかなか答えに行き着かない場合もあるので、その様な経験をすると戸惑いはさらに増大するかも知れませんね。

「答えは相手の中にある」と教えている人はどの様な意味で使っているのでしょうか。私はコーチングを教えるときに「答えは相手の中にある」という話はしないのですが、おそらく、「相手の考えをしっかり聞きましょう。そうすれば、コーチが持っている答えとは違った素晴らしい答えがあるかも知れませんよ」「教える以外に答えを出す方法があるんですよ」という意味で使われていると私は解釈しています。

プロコーチは「答えは相手の中にある」と思っているのか?

プロコーチの皆さんは「答えは相手の中にある」と常に考えているのでしょうか?

実は、少なくとも私は「答えは相手の中にある」とは考えていません。「答えは相手の中にあるかも知れないし、ないかも知れない。相手と私の間で答えが生み出されるかも知れない、だけど、答えが出ないときもある」と考えています。

答えが出ないことは悪いことではありません。「答えが出ないならコーチングセッションをやる意味がないじゃないか」と思われるかも知れませんが、本当にそうでしょうか?

コーチとクライアントが向き合うことは簡単なことばかりではありません。難問に正面から向き合っていると、問題の本質が何なのかすら簡単にはわからないときもあります。本当に重要だと思っている問題がどれほど難しい問題かを知る事ができたというのも一つの成果であって、その後の人生に少なからず影響します。成長とはそういうことかも知れませんね。ですから難問に向き合って、コーチとクライアントが共に様々な可能性を探っていくことは十分に価値のある尊いことだと思います。

「答えは相手の中にある」を強調することの弊害

「コーチングは、『答えは相手の中にある』と考え、それを質問で引き出していく技術です」と説明をされることがありますが、この説明は、暗に「課題は既に明確である」「答えを出すことがコーチングの目的である」というニュアンスが含まれています。

でも、実際のコーチングはもっと奥が深いものです。答えが何かの前に、何を目指しているのか、自分は本当は何を望んでいるのかといった根本的なところから考えます。自分自身について、自分の状況について、達成したいことについて、これまでよりも考えを深めたり広げたりします。それがあって初めて重要な課題が見つかり、重要な課題がはっきりしてからやっと答えを探し始める事ができます。

「答えは相手の中にある」という言葉が独り歩きすると、その様な根本的な部分を置き去りにして、いきなり答えにたどり着こうとする薄っぺらいコーチング(コーチングもどき)になりやすいです。そして、「答えを与えないコーチングというアプローチは役に立たない」という印象に繋がりかねません。その様な印象を持ってしまうと深みのあるコーチングの恩恵に預かるチャンスを逃してしまうことでしょう。

「答えは相手の中にある」と教えるのをやめませんか?

「答えは相手の中にある」という教えの意図が「相手の考えをしっかり聞くべき」「教える以外に答えを出す方法がある」というのを強調したいということであれば、それは尤もなことだと思います。でも、「答えは相手の中にある」という言葉はコーチングを学び始めた人にとって戸惑いの種になったりコーチングに対して誤ったネガティブな印象を与える原因になったりします。

「『答えは相手の中にはまだないかも知れない。でも、相手には考える力が十分ある』と考えましょう」という教え方をしたほうが、コーチングを学び始めた人が正しくコーチングを理解できるのではないでしょうか?

プロフィール

藤田 大樹(ふじた だいじゅ)
Brain−Plus代表
【専門分野】
ビジネスコーチング/メンタルヘルス
【学歴・資格】
京都大学総合人間学部卒業
名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程修了 理学修士
University of Strathclyde MSc Psychology with a Specialisation in Business 在学中
国際コーチング連盟 PCC(プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ)
EAPメンタルヘルスカウンセリング協会 EAPメンタルヘルスカウンセラー

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