教員の働き方改革から考える部活動の現在地と未来予想図(#2)
前回の続編として教員の働き方改革から考える部活動の現在地と未来予想図の第2弾を更新していきます。
前回更新分では、
1)教員の長時間労働の現状
2)過熱する部活動と顧問教員の目線
で記事を作成しました。
本日は、確かな教育効果が期待される部活動を未来に繋げていくために、どのような施策が検討されているのかに注目してまとめていきます。
部活の専門家?「部活動指導員」とは
(スポーツ庁. 『学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)』部活動指導員の概要,2017 参考資料より引用)
「部活動指導員」とは、中学校・高校の部活動において、学校長の監督下で顧問の代わりに単独で指導・引率ができる学校の専門スタッフとして平成29年4月に学校教育施行規則の一部が改訂され、新たに制度化された学校職員です。
私立学校に限らず、かつてより外部指導員として部活動の支援をする人材が学校現場に介入する事例は存在しましたが、部活動指導員という制度との明確な違いはどこにあるのでしょうか。
ざっくりまとめると以下のような違いがあります。
身分が法令上明確になり、役割においても顧問として求められる範囲に拡大されます。謝礼も必須で有償化、また任用における研修も必須となりました。
一見すると非常にしっかりとした制度設計で、明るいニュースに感じられますが特に謝礼・研修については自治体・学校間格差が埋まりきらず適切な人材配置において課題感が残っています。
部活動指導員制度は部活動改革の光となり得るのか?
2017年の通知ですので、既に3年度は経過をしていると(2017年は年度途中で即時の対応は難しい現状があり)数えられる本施策ですが、ようやく教育現場には広く情報が届き始めながらも、部活動指導員としての戦力になり得る人材候補への認知には課題があると言わざるを得ません。
結論から申し上げますと、
部活動指導員制度が正しく浸透・活用されれば以下の観点から非常に有意義なものとなると考えられます。
1)教員の部活動負担の軽減(定量・定性両側面から)
2)専門人材による科学的根拠に基づく適切な指導
3)地域と連携する学社融合の推進
それぞれについて詳しく考えていきます。
1)教員の部活動負担の軽減(定量・定性両側面から)
前回更新時に記載の通り、既に教員の労働環境は業務量の観点から見ても確実に逼迫しています。加えて気になるデータとして、平成26年に日本体育協会(現:日本スポーツ協会)が実施した「学校部運動部活動指導者の実態に関する調査」によると中学校の運動部活動担当教員のうち、担当教科が保健体育ではなく、かつ担当部活動の競技経験がない教員の割合は45.9%にのぼるとされています。
ただでさえ、膨大な業務量である上に専門外の領域による負担が大きいという精神的な逼迫も想像ができます。各部活動に対して、専門的な人材が介入することができれば教員の負担軽減は大いに期待ができると考えられます。
2)専門人材による科学的根拠に基づく適切な指導
部活動指導員の職務内容として以下の9つの項目が定められています。
1.実技指導
2.安全・障害予防に関する知識・技能の指導
3.学校外での活動(大会・練習試合など)の引率
4.用具・施設の点検・管理
5.部活動の管理運営(会計管理など)
6.保護者などへの連絡
7.年間・月間指導計画の作成
8.生徒指導に関わる対応
9.事故が発生した場合の現場対応
上記職務内容には、教員の働き方改革の観点だけでなく部活動に期待される教育効果を担保するために非常に重要な項目が整備されています。
これらには勝利至上主義に陥るばかりに発生する可能性のあるハラスメントの防止や、心身の健康的な発達のために必要な休息を含んだ適切な活動計画の策定、有事の際にスポーツ医科学的知見に基づく対応ができることなどが含まれてきます。
また、部活動指導員制度の整備を追いかけるように、平成30年3月スポーツ庁は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定しました。
詳しくは別の機会にまとめますが、生徒の活動環境が適切なものとなり確かな効果につながるよう細部にわたって策定されたガイドラインとなっており、記載内容を実現するためには既にこれまで通りの体制では難しく、専門人材の介入はマスト事項として捉えることもできます。
上記項目やガイドラインの策定は、専門人材の介入によって更に価値あるものへ進化を遂げていく契機とも言えるのではないでしょうか。
3)地域と連携する学社融合の推進
最後に、学校×地域を推進するチャンスの観点からまとめます。
学社融合とは…?
学校教育と社会教育(家庭・地域社会)がそれぞれ持っている教育力の一部を重ね合わせながら、双方に成果(メリット)が期待できる教育課程に位置づけられた教育活動です。
地域とともにある学校という存在は、社会のこれからを担う生徒を育む使命があります。しかしながら様々な変化・進化を繰り返す現代社会においては既に「予測不能な未来」とも形容されるように、学校単体での教育でカバーできる領域には限界があり、地域社会と力を合わせ高度な教育環境の構築が求められる状況と言えます。地域と学校が連携・協働することで、新しい人と人とのつながりも生まれ、地域の教育力の向上につながること、更には地域における様々な課題解決や地域振興、持続可能な地域社会の源となり「生涯学習社会」の構築にも資するものと考えられ非常に重要な教育活動の一つになります。
部活動という領域における学社融合は前述の役割のボリュームから鑑みて、部活動指導員という人財(材)の介入で十分な深度が期待できます。
加えて、単発的なキャリア系学事等の連携とは異なり、中長期的な関わりが前提になることも前向きな要因の一つと考えられます。
一つの会社で定年までという従来型のキャリア形成に大きな変化が起き、個が切り拓いていく新しいキャリアの時代とも言える現代においてはデュアルキャリアとしての教育現場での活動やアスリートのセカンドキャリアの選択肢の一つとしての可能性も秘めており、学社双方のリソースを活かした有益な人材交流が期待できます。
以上、大きく3つの観点から制度の可能性について整理をさせていただきました。
まとめ
今回の記事では、部活動指導員制度と制度から期待できることに関する考察をまとめました。次回以降は2020年に発信された部活動の在り方に関する改革方針と部活動指導員に求められる資質や必要な学びについて整理をしていきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
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