北風小僧の寒太郎
その日は朝から晴れていたが、風が強く、冷たかった。
「風で飛ばされちゃうよ。」
利用者がギュッと私に抱きつく。
私はかわいいなぁと思いながら「飛ばされなくてよかった。」と抱きしめ返す。
「真咲さん、今日は風やばいぜ。」
別の利用者が窓を見ながら言う。
「こりゃ北風小僧の寒太郎の仕業だね。」
私がそう言うと
「寒太郎か。フフフフーン♪」
と、鼻歌で利用者が歌い出した。
「北風小僧の寒太郎~(寒太郎ー!)」
「今年も~町までやってきたー(やってきたー!)」
私は合いの手を入れつつ歌い出し
利用者は鼻歌を続けた。
私は寒いのは苦手だけど、こんな日常は愛しい。
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