Bread&Butter/芦原妃名子
主人公の柚季は、12年教員として働いていた。
家族仲が良く、仕事も好きだった。
だが、学級崩壊をきっかけにクビのような形で仕事を辞めた。
34歳独身彼氏なしだった。
資格を活かして…という意味では働く場所がなく(塾とかはまぁあるだろうが)
婚活をするが
婚活で出会う人は違和感を感じる人ばかりで疲れてしまう。
34歳では、婚活も不利だった。
婚活の描写はなかなかにリアルだ。
そんな中、柚季は文房具屋兼パン屋という変わったお店とその店長の原さんと出会い
そこで働き出す。
ストーリーはそういった内容だ。
私は一巻を、表紙がよさげで内容も気になって買ったのだが
ほのぼのとした雰囲気の絵柄ながら
思いのほか心に染みて、突き刺さるリアリティさが描かれていた。
一巻を買った時、私は柚季より年下だったのだが
今改めて読み返した時、私は柚季の年齢をこえていて
当時よりも読んでいて染みた。
というのも
私は35歳で11年勤めた職場を当てもなく辞め
その時に彼氏がいなかったからだ。
家族仲がよかったから、柚季と私はよく似ていた。
私は私で転職活動をしていた頃
先のビジョンが描けなくて
やはり婚活に力を入れた時期でもあった。
彼氏はアッサリできたが、アッサリ別れ、私は再び転職活動に力を入れた。
この作品はパンを通して、生きること、生活、恋愛、結婚、選択、人との関わりについて触れていく。
30代同士の恋愛のため、ラブシーンや盛り上がりが少ない。
そこを期待する人は少し物足りないかもしれないが
この作品は心の機微が丁寧に描かれている。リアリティがあるのだ。
通常の恋愛漫画なら、ここで完結だろうというところで完結せず
原さんの選択が物語を大きく変えていく。
それに対する柚季の選択もまた
読者は揺さぶられる。
印象的なエピソードとしてはマフィン屋さんの話。
高校卒業後、パンを学ぶかお菓子を学ぶか悩み、パンを選択し、パン屋さんに嫁いたが
嫁いだ後にマフィンという選択肢に気づいてしまい、心揺れる。
私も高校時代に大学は福祉か心理学専攻か道を迷い
結局は心理学を選んだが
紆余曲折の末、仕事としては福祉職を選んだ。
高校時代、障害者福祉施設の存在を私は知らず
福祉職とは高齢者福祉をさすと思っていた。
仕事の幅は自分が思うよりもたくさんある。
選択肢もたくさんある。
人生とは選択の連続だ。
それを教えてくれる、素敵な作品だ。
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