真っ先に髪ゴムを見せてくれました
事務室でパソコンをやっていると
利用者がやってきた。
手には今作ったばかりの髪ゴムが握られている。
利用者は無言でその髪ゴムを
私の頭の近くに持ってきた。
「かわいいのできたねぇ。似合うかな?」
「うん!」
利用者は満足そうに作業室に戻っていく。
引き続きパソコンをしていると
足音が響いてきた。
先程来た利用者だ。
手には別の髪ゴム。
またできあがったらしい。
その人は再び私の頭付近で無言で髪ゴムを当てる。
「さっきとは違う色だね。かわいいね。」
その利用者は口を開いた。
「八重の桜みたいでかわいい!八重の桜みたいでかわいい!」
私は綾瀬はるかと同い年で同じ身長だが
全く似ていない。
だけど
事務室には複数職員がいたのに
利用者が作業で作りたての髪ゴムを真っ先に見せに来てくれたり
「かわいい。」と言ってくれたことは
素直に嬉しかった。