2021年からアメリカ留学中(NY在住)のトップです。実は、生粋の浦和レッズサポーターで、普段はニューヨークで弁護士として働いています。
今回は、少し趣向を変えて、ギアクマキス(Giorgos Giakoumakis)の移籍に関連して話題になっているMLSのサラリー・キャップ制度と、その例外のDesignated Player(特別指定選手)制度について解説します。
世間では複雑で理解できないと言われているMLSのサラリー・キャップ制ですが、実は、きちんと条文を読み解いていけば、ルール自体はそれほど複雑ではありません。
簡単にまとめますと、以下のとおりとなります。
1. サラリー・キャップ(Salary Budget)制度
Senior Roasterは、JリーグでいうところのA契約選手で、その上限は20名となっています(そのほかに、最低保証報酬で契約する選手や、ホームグロウン選手などを保有することができますが、ここでは深く言及しません)。
要するに、各クラブは、18名未満のA契約選手しか保有しないこともできるけど、その場合には、最低報酬を支払ったものとして、Salary Budgetの計算を行う(ゼロとしては扱わない)ということです。
2. 特別指定選手(Designated Player)制度
この条項は、3名を上限として、1人当たりの報酬上限(2022シーズンは612,500ドル)を超える報酬金額で、特別指定選手(Designated Player)として、選手と契約できることを規定しています。
要するに、この条項は、MLSの既存選手も新規選手も特別指定選手にできるということを説明しています。
(※)Allocation Ranking Listというのは、ざっくりいうと、すごいアメリカ人プレーヤー(代表 or 移籍金50万ドル以上)のうち、現在、MLSでプレーしていない選手(例えば、ペリシッチなど)が登録されているリストで、当該リストに登録されているプレーヤーがMLSでプレーしたい場合、Allocation Ranking上位のクラブが優先契約権を有します。
(※)Discovery Processというのは、ざっくりいうと、MLS外の選手の移籍プロセスのことで、各クラブは7名を上限として、移籍での獲得を希望する選手(交渉中の選手)をDiscovery Listに登録できます。他クラブがDiscovery Listに登録中の選手を新たにDiscovery Listに登録することはできず、そのため、Discovery Listに先に登録したクラブが、優先契約権を有することになります。
→したがって、例えば、Atlanta UnitedがGiorgos GiakoumakisをDiscovery Listに登録しているとすると(誰を登録しているかは非公開なので分かりません)、MLSの他クラブがGiorgos Giakoumakisを獲得しようとする場合、Atlanta Unitedと交渉して優先契約権を買取る等の対応が必要となります。
したがって、例えば、5年契約で、1年目から4年目の報酬を極端に低くし、5年目の報酬だけを高くしても、1年目から4年目は特別指定選手に該当しない、となるわけではなく、あくまでも契約期間を通じた平均報酬が"Maximum Salary Budget Charge"を超える場合には、全ての契約期間で特別指定選手に該当するということになります。
この条項は、特別指定選手の報酬は、Salary Budgetとの関係で無視されるわけではなく、実際には"Maximum Salary Budget Charge"=612,500ドルを超えていたとしても、当該額で計算されるということを説明しています。
したがって、仮に、Atlanta Unitedが3名フルに特別指定選手を保有していたとしても、いずれかの特別指定選手をトレードに出すことにより、特別指定選手枠を空けることが可能です。
かつては、特別指定選手枠を他クラブに譲渡することができましたが(特別指定選手枠の空きがある場合、金銭と引き換えに、枠以上に特別指定選手を抱えたいクラブに枠を売却することができた)、現在では枠の取引は禁止されています。
3. Atlanta Unitedが保有する特別指定選手
2022シーズン、Atlanta Unitedが保有する特別指定選手は、
①Luiz Araújo
②Thiago Almada
③Ezequiel Barco
の3名でしたが、このうち、③Ezequiel BarcoはアルゼンチンのCA River Plateに期限付き移籍中で、CA River Plateの公式サイトでは期限付き移籍期間は、2年(2022年-2023年)とされていますので、Atlanta Unitedの選手として登録されているのは2名のみとなります。
現在は、他の特別指定選手の獲得のアナウンスは出ていないので、特にそのような動きがなければ、現状、特別指定選手枠に問題はないということになります。
いかがでしたでしょうか。普段は、ブロードウェイのことを中心に記事を書いています。励みになりますので、面白かった・参考になったという方は、是非、スキ、コメント、フォローをお願いします!!