2作品、同時開発。「くまのレストラン」に見るインディーゲームの「戦略的勝利」
こんにちは、Odencat株式会社のDaigoです。
6月2日に「くまのレストラン」の後日談にあたる、「フィッシング・パラダイス」という釣りRPGをNintendo Switchおよび、Steamにて発売しました!くまのレストランSwitch版発売当時にも一本記事を書きましたが、今回はまた少し違った話を。
おかげさまで大好評でして、くまのレストランのときと比べると初週の売上本数が3倍程度となりました。ということで結果論にはなるのですが、戦略がうまくハマった、という話をしたいと思います。
二つの作品、「くまのレストラン」と「フィッシング・パラダイス」
本作は当初モバイル版でリリースしたのですが、下に、2018年のGoogle Playでのインストール数のデータがあります。
ここにできてる山、気になりますよね・・・?
この2つのグラフを重ね合わせると・・・
!?!?
この一致・・・偶然だと思いますか?
私はこれをこう呼んでいます。『戦略的勝利』・・・と。
と、大げさに言ってはみましたが、つまり、「フィッシング・パラダイス」のインストール数が大きく増える時に、「くまのレストラン」もまたインストール数が増えているということなのです。これがスピンオフ大作戦です。
本編 + スピンオフ大作戦
「本編 + スピンオフ大作戦」、すごく簡単にいえば、関連する2作品を同時に出せば、相互作用でどちらのゲームもより売れるんじゃないの?という思いつきです。「新作を出すと過去作が売れる」という現象ににていますが、スピンオフとして密接な関わりのある作品の場合はその効果が大幅に強化されると考えます。
先に述べたとおり、「くまのレストラン」も「フィッシング・パラダイス」ももともとはモバイルゲームです。そもそもの大前提として当時の自分は「ストーリーゲーム」でお金を儲けるのは難しい、と達観していました。モバイルにおいては遊びきりの無料ゲームで収益化するのは難しく、広告を何度も見てもらえるカジュアルゲームのほうが収益化しやすいという事情があったからです。だから、「くまのレストラン」でIPを確立し、別に作ったカジュアルなゲームをプレイヤーに楽しんでいただければそちらで収益化できるのではないか、とそのように考えました。そこまでやってだめなら就職でもするか〜、という感じで。
ちなみに、当初は「くまのレストラン」で釣りをしていたジョニーというキャラクターが主役の釣りゲームになる予定でしたが、当時一緒にハワイに行っていたふんパレの山田さん@_yhirokiの「主人公がおっさんじゃ売れないっすよ」というフィードバックにより、ジョニーは主人公ではなくなりました。
実はくまのレストランとフィッシングパラダイスは同時に開発をしていた
今思うとなぜこんなことが可能だったのかはわからないのですが、じつはモバイル版のくまのレストランとフィッシングパラダイスの開発期間は大きく重なっています。以下に当時のスケジュールを図示します。
見てわかるように、くまのレストランは開発9ヶ月、フィッシング・パラダイスは開発10ヶ月でした。 作業場所が転々していて節操がないですが、会社をリストラされたスーパー無職だったので好き勝手やっていました。どこに住んでいるかと生産性の相関関係はあまりなかった気がします。
開発コアメンバーは以下の通りでした。
フィッシング・パラダイスの開発においては、自分はゲームデザイン、サブシナリオの一部、釣りゲーム部分とソラホの実装をした感じ、ほかはヒロセ氏の助力が大きかったです。また、ゲームエンジンとしてEbitengineを使用しており、開発者の@hajimehoshiさんには大いに助けていただきました。
自分でこう振り返ってもなぜ2タイトルをこんな短い期間で出せたのか本当に謎なのですが、とにかくできてしまったのです。共通のゲームエンジンやアセットを使用しているというのはあるのせよ、それでも異常な開発効率ですね。
最終的に、考えた作戦通りに2作品を開発しリリースまでこぎつけました。あと、スピンオフだったはずのフィッパラは作っているうちに力が入ってしまい、本編と遜色ないコンテンツとクオリティを実現してしまいました。
大大大成功!
結果、想定通り「くまのレストラン」が売れれば、「フィッシングパラダイス」が売れ、「フィッシングパラダイス」が売れれば、「くまのレストラン」が売れるという好循環が生まれました。結果、くまのレストラン、フィッシング・パラダイスともに150万ダウンロードを達成しています。仮説を立てて実行した戦略が予想通りにハマったときの感動は大きいものです。
今回、Steam版、Nintendo Switch版のリリースでも同様の相乗効果が発揮されています。本来、今回のリリースに直接関係のないはずの「くまのレストラン」の売上が大きく伸びているのです。スピンオフ戦略はモバイルに限らず通用しうるのだということが示されました。
現在、この2作品の収益がOdencatを支えており、新作の開発費に当てられています。自分たちのゲームだけを作って日々を過ごせるというのは素晴らしいことです。スピンオフ戦略に加え、Steam, Nintendo Switchに多方面展開したことや、Google Play Passのようなサブスクリプションサービスに対応したことが大きく貢献したといえるでしょう。
ただ、一点残念だったのは、多方面展開に時間を使ったことでなかなか新作の開発ができなかったことです。フィッシング・パラダイスSwitch版のリリースをもって一区切りついたので、今後は新作に注力していきます(したい)
うれしいサプライズ「実況」
幸いなことに「くまのレストラン」は多くの配信者の方に実況していただけました。おかげで「くまのレストラン」を遊んだことはないが、知っている・興味があるという方々は増えたのではないかと思っています。つまり、IPの確立をする上で大きな助けになったのだと思います。
実はストーリーゲームにおける「実況」の立ち位置はなかなか難しいところであります。「実況」ですべてのストーリー要素を見られると、ゲームが売れないのではないか、という懸念があるからです。しかし、実況で「くまのレストラン」に触れたプレイヤーが「フィッシング・パラダイス」を手にとってみよう、というケースが多く見られたように思います。そういう意味でもスピンオフ戦略はうまくハマったといえるでしょう。
戦略をたてること
自分はゲームを作るのが大好きですし、それぞれのゲームに魂を込めています。それでも、やはり、どこかでゲームが流行るかどうかというのは運だとも考えています。ですので、ゲーム一本だけで考えずに、複数のゲームを出していく前提で物事を考えてます。単体で見ればうまくいっていないゲームでも戦略として捉えた時になにかの役割を果たせていれば成功といえるのではないでしょうか。
今の時代インディーゲーム開発者が生き残るのは並大抵なことではありませんが、生き延びるために自分なりの「戦略」を考えていくことで生存確率が少しだけ上がるのかもしれないと思っています。「本編とスピンオフを同時に作ってリリースする」という作戦、なかなか悪くないと思いますよ!ただ、正直もう一度これをやれといわれて、やれる自信はありませんので、成功したのはたまたまなんじゃないかとも思います。
ちなみに、Odencatがいまのところ自社パブリッシングにこだわる理由もここにあったりします。ゲームごとに販売をパブリッシャーに任せてしまうとパブリッシャーにも思惑があり、自分たちの思うように戦略を展開することがむずかしくなるであろう、と考えているからです。
ダウンロードはこちらから
・・・ということで、試行錯誤の結果生まれた2作品はこちらです。ぜひぜひチェックしてみてくださいね!新作の「メグとばけもの」の開発も引き続き頑張ってまいります!
くまのレストラン
https://odencat.com/bearsrestaurant/switch
フィッシング・パラダイス
https://odencat.com/fishingparadiso/
余談1
ここまで書いてふと、なにか忘れている事に気づきました。そう、実はもう1作品作っていたのです。それは「説教おじさん」です。
手軽に目先の小銭を稼ごうと思い作りましたが、ビジネスとしては大失敗でした。他作品とのシナジーもないし、戦略がなかったですね。いや、でも個人的にはとても好きな作品ではあるのですが・・・。上では成功体験を共有しましたが、実際のところ失敗も多かった・・・。
さて、「説教おじさん」の開発を踏まえると実はこういう開発スケジュールだったようです。
説教おじさんはグラフィックからプログラミングまですべて一人で作っており、Odencat株式会社唯一のUnity3D製のゲームです。開発の詳細についてはこちらから:アプリ「説教おじさん」のつくりかた
どこにそんな開発する時間があるのだろう?と思いますが、複数タイトル開発することで、ゲーム開発の息抜きにゲーム開発するという生活をしていたみたいです。毎日四六時中ゲーム開発のことを考えているとなんとかなるのかもしれません。
余談2
ハワイにいるときはちゃんとフィッシング・パラダイスの研究をしていましたよ!楽しい思い出がゲームに生かされているんじゃないかなと思います。コロナも落ち着いてきたので、またあちこち行けたらいいなと思ってます。今ももちろんゲームを作れてそれが認められて幸せなんですけど、当時も楽しかったなぁ、などと思い出します。
たのしそうですね!
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