見出し画像

死にたかったんだ、本当は 4 (全8回)

そんなママに勇気をもらい、そろそろもう一度、何かに取り組んでみようかと思い、何が出来るのかを考えた時、やっぱり空間を創ることで、その施工費を飲食店営業で回収する、という方法しか思い付かず、かといって、もう固定した場所でやるのもなぁと思い、トラックの荷台にピッタリサイズの物置を載せて、その内装は、フィン・ユールの椅子を使ったりなんかして、凝りに凝って、移動式の一組限定サロンとか良くない?と自画自賛してて、でもそれは、利休の金の茶室(組み立て式で何処へでも持ち運びが出来る)がヒントになっているのだけれど、そのアイデアを実現させるのには、クリアする課題が結構多いなぁとか思っていたら、知人からとある物件を紹介されて、あれよあれよと決まってしまい、こんなはずじゃなかったのになと思いながらも、やらざるを得ない状況になってしまってね。
これまでに手掛けた五店舗は、いずれも数十年間放置されていた物件で、言うなれば廃墟の様な建物だったものを、僕が手を加えて生き返らせることに面白味を感じていたのだけれど、今回の物件は、いわゆるデザイン物件で、今までとは違う取り組み方をしないとと、でもそれが一体どうすることなのかがわからずに、取り敢えずは形にはしてみたものの、全然納得がいっていなくて、そのせいか、頸のヘルニアになり、相当に痛くて、ただ救いは、理学療法士さんが綾野剛くん似で、触られるだけでドキドキしたこと、くらいかな。
騙し騙し、少しずつ思い付いたことを加味していきながら営業していると、それなりにお客さんが来て下さるようにはなったのだけれど、過去五店舗とはまた違った層で、空間やそこに込めた思いによって、呼ばれる人は変わるってことなんだろうなと、そんな当たり前のことを改めて身を持って知ったな。
ヘルニアが治るのに四ヶ月も掛かって、ようやくスッキリしたと思ったら、最早、亜熱帯な日本の夏が訪れて、高湿度と低気圧が合わないのか、鬱になりそう…って前触れを感じたので、無理はやめておこうと、予約だけの営業にして、涼しくなりだしてから、お昼間には絵描きの友人の個展なんかを催しながら、バー営業をしていたのだけれど、やっぱり年末ともなると、お酒の需要が増えて、僕も勧められて飲む機会が増えて、明け方まで飲む日々が続いて昼夜逆転となった頃、二度目の鬱となり、冒頭で述べた通り、スーパーで立ちすくむしかない状態を味わう羽目に陥った…。
オープンして一年も経っていないのに、同じ過ちを繰り返してしまった…が時既に遅し、だ。
不動産屋に事情を告げると一年未満の解約は違約金が掛かるとのことだったので、騙し騙ししながらお昼間だけギャラリー営業をして、一年を経て、続けるのは難しい旨を改めて伝えると、直接大家が話したいとのことで、会ってみると、転貸でもいいので続けて欲しいとの申し出をされて、でもそれは契約違反ではないのかと問うと、大家の俺が言ってるんだから問題ないとのことだったのだけれど、なんだかそういうのってややこしくなりそうで嫌だなと思いつつも、大家さんだって収入の問題があるのは理解はしたので、知人に声を掛けて、なんとか転貸先を見付けて、営業を託し、僕は一度目よりも更に酷い希死念慮に襲われまくっていたので、再び実家へと戻り、元々ショートスリーパーだったのに、こんなに眠れるもんなんだって自分でも驚くほど、眠りまくって、またダラダラと過ごしながら、でも今回は、もう焦りすらもなく、死にたい衝動と闘う気力すらもなく、ただ日々が過ぎていくだけの中、死んだように生きた。
数ヶ月後、転貸するにあたって、僕がスッカリ伝え忘れていたことがあって、それは、その店舗物件が住宅地にあって、深夜営業が不可能だったってことで、だから僕は、カフェ+ギャラリーで営業許可を取っていたのだけれど、時に明け方まで営業したこともあって、でもそのことで何ら問題はなかったので、僕の頭からは抜け落ちていて…。
ただ、転貸先は、スナック営業だったので、朝まで営業を前提としていたため、もし警察に通報でもされたら責任取れないと、そりゃそうだよねって話になって、手を引きたいとなり、でもまぁ一応、大家に対しても義理は果たせたかなと思い、事情を話したら、話が違うと言われたのだけど、何がどう違うのかが全くわからなかったので、というよりも、そもそもまだ希死念慮の只中にいて、頭がついていかず、とにかく、もう解約させて下さいとお願いをしたところ、散々暴言を吐かれ、いい加減ウンザリしたので、「弁護士立てますね」と、伝えて電話を切ったんだ。
後日、解約に際しての清算の請求書が届いたので確認すると、転貸に対する違約金が計上されていて、しかも、注釈として、結果的に無断で転貸をされていたことが発覚しました、との表記…。それに次いで、物件の信用を失墜するような写真の掲示が見られたため迷惑しています(それらの写真は弊社にて保管しています)との文言があって、一体何が言いたいのだろう…?と思いながら、改めて請求内容を確認すると、請求書上には、原状回復費が計上されているので、別にどんな写真が残っていたとしても、その費用でスケルトン状態になるのだから、何ら問題はないはずなのでは???と思いながら、何か含みを感じたものの、ちょっと今は考えられない、と一旦放置しておいたんだ。

つづく。

いいなと思ったら応援しよう!