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ゲイ探しの旅 3(全12回)

-彼のトランクスには

せっかくのロンドンなんだし、B&B(ベッド・アンド・ブレックファースト)に泊まってみようと思い直して、数軒覗いた末に、陽気なインド人の夫婦の営む宿が居心地良さそうに感じたので、ここを根城にすることに決めた。奥さんは、それが口癖なのか、しょっちゅう「Don’t worry,Be happy!」と、インド人訛りの英語で言っていて、そのお気楽さから、結局3週間、お世話になった。
フリーマーケットに行こうと、カムデンの駅から地上への階段を昇っていると、実家の向かい2軒先の呉服屋の幼馴染女子が降りてきて、「あ!大剛やん。何してん自分」と、さして驚く風でもなく、「自分こそ何してん?」と、聞くと、「留学中やねん、ほなな」と、去っていったのだが、こんなとこで出会う???と思いながらも、そのアッサリ感が彼女らしいなとも思った。
そして、ポートベローのフリマに行ったら、ここは臭うなと感じたレコード商を見付けたので掘り返していたら、大阪や神戸の中古レコード屋を散々探し回っても出会えなかった、ミッシェル・ルグランが音楽担当した映画『ロシュフォールの恋人たち』のサントラの原盤を発見した。旅の目的の1つが達成された。そして、同時にブラジル音楽も好きだったのだが、ここは宝の山で、激レアな『エリス・レジーナ・イン・ロンドン』や、マルコス・ヴァーリの『サンバ‘68』なんかも発見して、その後もしょっちゅう通っては、有り金を注ぎ込む羽目になった。

その後、エジンバラを巡る、3泊4日のバスツアーに参加して、再び同じB&Bに戻ると、大阪出身の、どう見てもノンケでしかない同い歳男子が泊まっていたので、同室をシェアしない?と利害が一致し、その後10日間程、一緒に過ごした。
昼間こそ別行動をし、私はというと、さして興味がなかったものの、テートモダンや大英博物館で時間を潰していたのだが、夜ともなれば、彼と一緒にジルベルト・ジルのコンサートや、アイアート・モレイラとフローラ・プリム夫妻のライブに行ったり、クラブを梯子してみたり、宿の奥さんが大好物だと言う、「ホット・アンド・サワー・スープ(酸辣湯)」を食べに、奥さん共々出掛けたりして、ロンドンの夜を満喫した。当時のロンドンの音楽シーンは私の好みと重なって、中でも、ジャイルス・ピーターソンのプレイを現地で生で味わえたのはとてもいい経験だった。
途中、嫌がられるかもなぁと思いながらも、彼にカミングアウトアウトしてみたところ、「全然平気やで」と、言ってくれて、その後、より親密度が上がって、お互いの本音度も上がったので、ホッとした。
彼が旅立った後、部屋の片隅に小さな紙袋が落ちていたので、ゴミかな?と思いながら中の物を取り出してみると、彼のトランスクで、拡げてみたら、夢精したんであろう精子が半乾きでこびり付いていて、この時の夢の中でのお相手は私ではないんだろうなと思いながら、そっと匂いを嗅ぎつつ、オナニーをした。彼のものと私の出したものが混じり合った匂いは寂しさを帯びてはいたが、それでもどこか満たされた気もした。

*以下記事へと続く

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