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ゲイ探しの旅 2(全12回)
-ギトギトのウィンク
パリに行く前にロンドンに立ち寄ることにして、ニューヨークからとりあえず3泊分だけ予約をしておいた、ピカデリー・サーカスを臨むホテルに、ヒースロー空港から向かった。到着後、間も無くしてすれ違った、ふくよかな白人のホテルマンからウィンクされたのだが、そういう挨拶なのかと思い、「ハァーイ!」とだけ返しておいた。
部屋でベッドに寝転びながら、山田詠美の『ひざまづいて足をお舐め』という、半自伝的小説を読んでいると、タイトル通り、SM嬢が主人公のストーリーだったのだが、その中で、「Sの要素がすごく強い人ってのは、Mの要素も同じくらい強くってさ、ある瞬間に、それが入れ代わっちゃうっての、私にはすごく興味あったね」と、書かれていて、ハッとさせられた。当時の私はMとの自覚はあったが、S心も併せ持っていると気付いてもいただけに、その矛盾が解消された気がしたのだ。そういえば、彼女の他の作品で、主人公の台詞として、「私が惚れる男は、ゲイかドラッグ中毒ばかりだった」みたいな表現があったことを思い出したのだが、何の確証も持ち合わせていないにも関わらず、妙に納得をさせられたのだった。また、私が彼女のお眼鏡に適うゲイであったらいいのに、とも思った。
その後も、前出のホテルマンとしょっちゅう出くわしては、またウィンクをされたり、ボディタッチをされたり、挙句の果てには、部屋に入ってこようとするので、「ちょっと待って!」と、言うと、「僕とSEXしようよ」と、言い出すので、慌てて部屋から追い出して、速攻でチェックアウトをした。
私がゲイのオーラを発していたのか、単に私が彼の好みだったのか、よくわからなかったのだけれど、いかんせん、彼は私の好みではなかったし、何よりアプローチの仕方と、ギトギトとした目に嫌悪感を覚えたので、シチュエーション的には萌えたが、彼とのロマンスの成就などあり得なかった。
彼のせいで、いきなりロンドンのイメージは、最悪なものになってしまった。
*以下記事へと続く