ー詩と形而上学ーNo.31
堤防
分かっているよ
そんなこと
読んで、学んで、探して、沈んで、泳いで、
走って、笑って、疲れて、働いて、休んで、
告げて、頷いて、散って、咲いて、契って、去って、燃えても、尚
堤防に吹く風の体積を測っている
黄昏が付箋のように剥がれそうになっている
真ん中に穴の開いたビルは嘗ての未来だった
この街は、可笑しくなるほど、首都ではない
高く、昇って、乾いている
九月は金魚鉢と一緒に無邪気に屈折している
半袖と、パフスリーブと、オルゴール
南アフリカの水色の鉄道
名前を知らない打楽器の響き
反射して、通過して、反響して、透過して
透明な魂の置き場所に、花を飾ることにする
堰き止めていたものは、壊れてしまっている
スコールのような、短い夕立のあとで
硬直した定型詩が、静かに崩れていく
カーブミラーと
曲がり角
頭痛薬が
踏まれた小指を癒すような
薬理の失敗
偶然にも似た
交通事故のような
甘い思惑があることを知った
露になった言葉は
逡巡し
合意し
交歓し
言語としての形式を俄に喪失しながら
泥濘の中の温度となった
冷たさの残った
白い背中で
寂しいとだけ言い残す耳元はそれでも温かい