ー詩を書いてみる。No.5―
「それ」 /2020年6月28日
いつからか、それを信じることをやめてしまった。
子供のころには、それがはっきりと目に浮かんでいた。
グラウンドの野球ボールにも、真っ白の画用紙にもそれがあった。
それは、布団の中にはいっても、胸を高鳴らせた。
微かなそれの残骸は、かえってわたしを苦しめた。
疲れ果てたわたしには、それを直視できなかった。
それを語るひとを、私は冷たい凍えた眼で見るようになった。
でも、むかし描いた、それを思い出したときは、懐かしい音がした。
それは、望まれた未来のそれであり、
わたしたちが歴史的に語ってきたそれであり、
理想として述べられてきた、それ自体であり、
それの不在によって、わたしたちは苛まれ、
またそれを求めることによって、わたしたちは煩悶し、
しかしながら、それがあることによって生かされているもの。
―それは、希望のようなもの―
Written by Daigo Matsumoto