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ー詩と形而上学ー

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創作している詩をまとめました。お気軽に御覧下さい。
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2021年8月の記事一覧

ー詩と形而上学ーNo.35

脱意味のためのエチュード 躁 不完全 声を掬う 淫靡たる血気 が 陽転 エチュード 喉を伝う 清浄な性交 破裂 暗転した アラベスク 完全な 俄雨 排水溝が Xだった 未熟な こめかみ 結論は 湿り気のある 南アフリカ  まだだ 戦闘が始まる 水泳着 顎鬚とカブール まただ ニュースキャスター 無条件 沈黙の憤怒 破水 破壊 笑っちゃうような グレネード 笑っちゃうよねと 冷笑して ハブられた メランコリー 冷凍されて 凍り付く 砂漠 消しゴムで消そう 完全になるらしい

ー詩と形而上学ーNo.34

完璧な青       帰り道に見つけた 完璧な青が 高い空の天辺に 一滴のインクで 孤独な絵を描く 雲は遥か眼下にあり 飛行機の主翼の 揚力も必要なく 酸素の限界を超えて 魂が昇っていく 無重力 飛んでいる気分 万有引力に逆らって ひとひらの羽根 羽ばたくまでもなく 無と銀色の宇宙の 中間地点にいる 二つ目の瞳に映った 白い鯨がよく見える それは空を泳いでいる 詩性は音階になり 名前のない祈りになり 包まれるように 心音のあわいに 青く揺れている 再び魂が昇ると

ー詩と形而上学ーNo.33

この夏のこと 駅前から堤防に向かって歩いたその先にある カーブミラーに映った黄昏 その、ブルーモーメント 被写体として最適化された 青の導きに身を任せながら 嫋やかな名画を透かしたような 嘗ての時代の肖像画を眺めている 黄色のスケッチブックを一枚破いては 機械的に折り畳んでいる 飛行機として秋空に放したその紙は 螺旋としても楕円としても不十分なまま 何かを語りかけるようにして 東部戦線の戦場で散った兵士の 最後の優しさのような柔らかな着地をした それは花の冠を探すような手

ー詩と形而上学ーNo.32

クロール    陽炎は声高な口調を失い 教室の後ろから二列目の 窓際の女の子のように 摂氏二十九度 乾いた校庭を眺めている ひと月前まで水泳されていた 透明が青みを帯びていく 夏の終わりとの和解 グラスのサイダー 冷えていく、炎 崩壊していく定型詩 形未満の、可塑的な 音のない背中 失われた秋桜の予感に 袖を通していく 固く閉ざされた瓶詰のピクルスの蓋のような      抽象的な、ざらざらとした結論に                   傍線を引いた序文の一頁のような

ー詩と形而上学ーNo.31

堤防          分かっているよ そんなこと 読んで、学んで、探して、沈んで、泳いで、 走って、笑って、疲れて、働いて、休んで、 告げて、頷いて、散って、咲いて、契って、去って、燃えても、尚 堤防に吹く風の体積を測っている 黄昏が付箋のように剥がれそうになっている 真ん中に穴の開いたビルは嘗ての未来だった この街は、可笑しくなるほど、首都ではない 高く、昇って、乾いている 九月は金魚鉢と一緒に無邪気に屈折している 半袖と、パフスリーブと、オルゴール 南アフリカ