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思わず引き込まれた話のまとめ

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ついつい語り口に引き込まれて最後まで読んで感服した話のまとめ。
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#雑記

永福町で過ごした日々の記憶

今から約10年前、東急井の頭線の永福町駅から徒歩数分の場所で一人暮らしをしていたことがある。 渋谷にある広告代理店に勤務していた二十代後半の頃のことだ。その前は池袋に住んでいたが、通勤の利便性となんとなく縁起のいい名前の駅名に惹かれてその地を引っ越し先に選んだ。 駅前の商店街を抜けた先には「東京のへそ」という別名を持つらしい大宮八幡宮、その奥には和田堀公園があり時々健康のためにランニングをしたり休日にコーヒーとパンを持って散歩に出かけたりもしていた。言わずと知れたグルメの

かつて子供だった私の20代の時のこと

知らず知らずのうちに本音が言えなくなり、好きなことを堂々と好きと言えずにはにかんでしまい、本当はあまり上手く行っていないのに大丈夫だと言っていたり、他人にむかついたり怒れたりすることも表にせずに冷静に自分で「自分をご機嫌に」(この言葉はとても嫌いなんだけど)することが正解だと思っていた。そのくせこちらにあからさまに不機嫌をぶつけてくる相手に遠慮して怒らせまいと気を使うという矛盾的な行為は率先してやっていた。そういうことが美学だと思っていたし、それが大人になるということだとずっ

【2022.2.17の日記】暇なんかないわ、大切なことをするのに忙しくて

自分の生活やこれまでやってきたことに対して色々と区切りをつける必要があると感じたのはちょうど去年の今頃のことだった。 私は、大学卒業後から途切れなく、約14年間ほど近くフルタイムで何よりも上昇思考を持って働き続けてきた。(転職は何度かしているがこれまでほぼ途切れはなかったのだ。)学生の頃から、「自分は自分で人生を勝ち取るのだ」と思って生きてきた。人と同じでなくてもいいから、自分で納得のいく仕事をして自立し、「こんな人でありたい」という理想的な生き方をするのだと強く信じてきた

28歳冬、 渋谷の夜

「あれ?そっちの方が可愛い。さっきまでついてた赤い口紅は男ウケしないから絶対にやめた方がいいよ。思ってたよりも俺の好みの顔かも。」 向かいの席に座っているだいたい30歳ぐらいの、おそらく童顔を隠すためにヒゲを蓄えている妙に白い顔をした男が、猫なで声の10代と思しき女の肩を抱きながら、私の顔をじっと見て言った。 私は男の発言を無視して真顔のまま心の中で舌打ちをし、レモンサワーを一気に喉に流し込んだ。またどうして私はこんなにくだらない会にきてしまったのだろうか。食事によって取

友達以上、恋人未満の彼女

学生時代からの友人である加藤は、現在連絡をとっている私の唯一の友人だ。もちろん数年に一度ぐらい、ライフステージに変化があった時に連絡をくれる過去の友人や同級生が今でも数人いなくはないが、胸を張って「この人は私の大切な友人だ」と言える人間は今は「加藤」という女1人だと思っている。だが、友人というにはあまりにも軽い気がする。なので私は加藤のことを勝手に「友達以上恋人未満」だと思っている。(そっちの方が軽く聞こえてしまうのが残念でならないが) 加藤とは、今から15年以上前、私たち

ロング・バケーション【雑記】

今年の1月末に会社を辞めて、丸2ヶ月が経った。 30半ばで結婚してから、同じタイミングで長く勤めた会社をやめた。それからまた別の会社へ就職をしたが、20代の時のような働き方はできず、かといって子供もいないまま30代後半の自分が地方の中小企業で、今後のキャリアのことを考えるのも現実的だと思えなくなった。急に、これまでみたいにがむしゃらに働くことが現実から遠のいていき、かと言って、もっと軽い仕事がしたいかといえば、それもどこかピンとこない。フリーで時々受ける仕事を、とりあえず続