【ショートショート】理想のマットレス
佐藤は、ついに最高級のマットレスを手に入れた。
「俺の寝不足生活も今日で終わりだな!ひゃっほーい!!」
彼は大はしゃぎで、ふわふわのマットレスに飛び込んだ。
マットレスは彼を優しく包み込みながらゆっくりと沈んでいく。
「これが最高級のマットレスか!」
佐藤は感動し、あっという間に夢心地の気分に浸っていたが、すぐに不思議な事に気付いた。
「あれ?これどこまで沈むんだ…?」と思った次の瞬間、佐藤はマットレスに完全に吸い込まれていた。
目を開けるとそこは、ふわふわの雲のような床、もこもこの壁、そして空には巨大な枕が浮いていた。
「ここはどこだ!?」佐藤が叫ぶと、突然、マットレスに顔がついた謎の生物がニョキっと現れた。
「おい、ようこそマットレスワールドへ!俺はキングマットレス。お前、相当寝心地を求めてるらしいな?」
「ちょっと待て、マットレスに顔がついてるのかよ!?いや、それよりなんで俺、マットレスに吸い込まれてんだ!」
「まあまあ、落ち着けよ。ここではお前はマットレスの一部になるんだ。永遠にふわふわだぞ?最高だろ?」
「いやいや、最高じゃねぇよ!俺、明日プレゼンなんだよ!永遠にふわふわとか困るって!」
キングマットレスは巨大なリモコンを取り出し、「お前、まだ緩んでないな。マットレスワールドで本当のリラックスを教えてやる!」とドヤ顔で言い放った。
すると突然、ふわふわのダンベルや毛布バーベルが出現した。
「さあ!究極のリラックスを極めるために、ふわふわトレーニングだ!筋肉もリラックスさせろ!」
佐藤はあきれた。「いや、どうでもいいから元の世界に戻してくれ!」と叫ぶが、キングマットレスはにやりと笑って「戻りたいなら、このふわふわトレーニングを乗り越えろ!」と言い、無理やり毛布バーベルを握らせた。
仕方なく佐藤はふわふわトレーニングを始めたが、軽すぎて逆に疲れない。「これ、マジで意味あんのかよ…」とため息をつくと、キングマットレスが「お前には次の試練を用意した!」と叫んだ。
次の瞬間、もこもこのマットレスがカートに変形し、佐藤はそれに乗せられた。「うわっ、なんだこれ!?」
「行けぇ!マットレスレーシングだ!」キングマットレスの声が響き渡り、佐藤はふわふわのコースを猛スピードで疾走し始めた。
「うわっ!なんだこれ!?」
ふわふわのコースを走るカートに乗った佐藤は、周りの布団生物たちとレースすることになった。
「おい!なんで俺がマットレスでレースする羽目になってるんだよ!?」と叫びながらも、佐藤はどこか楽しくなってきた自分に気づいた。
「優勝者には特別なふわふわ特典だ!」とキングマットレスが言うと、佐藤のカートはゴール直前でふわっと宙に浮き、巨大な羽毛枕に突っ込んでいった。
「もうなんなんだ、この世界!」と叫んだ瞬間、佐藤はふわふわの感触に包まれながら、無限の眠りに落ちていった…。
翌朝、佐藤はマットレスの上で目を覚ました。
「変な夢だったなぁ…。俺相当疲れてるのかも…」
目をこすりながら買ったばかりのマットレスに目をやると、布の端がクスッと笑った気がした。