運動麻痺だけじゃないって話〜皮質網様体路編②〜
こんにちは
理学療法士の``Miyata Daiki``です。
今日は前回の内容の復習と
それにまつわる文献を用いて話していきましょう。
1)前回内容の復習
https://note.com/daidairihapt/n/n14de68bd5bac
基底核レベルでの皮質脊髄路の損傷の場合に
真横を走行するとされている
皮質網様体路も同時に損傷する可能性が
高いと言われています。
にも関わらず運動麻痺のみで歩行能力を
予測するのはどうでしょう?
皮質網様体→網様体脊髄路は
姿勢制御や自動的な歩行に大きく影響しており
両側体幹・股関節に影響を及ぼすとされています。
非麻痺側も影響受けてるんですよ!!!
最低限、立ち直り反応見ましょうねって話でしたね。
そして今日は
麻痺側股関節と脊髄網様体路の関係についての
文献を紹介します。
2)文献紹介①
脳梗塞後の近位筋筋力低下患者における皮質網様路の損傷:拡散テンソルトラクトグラフィー研究:Do KH, Yeo SS, et al
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23643994/
英論文を頑張って解釈していきますね笑
◇ 対象:
脳梗塞患者247人のうち遠位関節よりも
近位関節(肩・股関節に重度の筋力低下を呈した
4人の片麻痺患者
◇ 方法:
TMS所見と拡散テンソルトラクトグラフィ
(DTT)を見る
◇ 結果:
皮質脊髄路は部分損傷3名、正常範囲1名
皮質網様体路は2名でワーラー変性と
2名で梗塞レベルでの中断があった。
◇ 考察:
皮質網様体路の損傷は、
4人の患者で観察された近位筋脱力の原因である。
皮質網様体路のDTTは、脳梗塞患者の近位の
筋力低下と皮質網様体路の損傷の関係を
解明するのに役立ちます。
となんとか解釈しました。
よくあるSIAS-mなんかで下肢遠位関節よりも近位関節(股関節)が
弱くなることありますよね。
それを説明できる研究内容ではないでしょうか?
3)文献紹介②
皮質網様体路の残存が確認された歩行不能な脳卒中重度片麻痺者に対する長下肢装具を用いた前型歩行練習と歩行および下肢近位筋の回復経過:辻本直秀、阿部浩明
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/advpub/0/advpub_11443/_pdf/-char/ja
◇ 対象:
動静脈奇形破裂による脳出血
10 歳代後半の男性、歩行全介助
◇ 方法:
拡散テンソル画像にて皮質脊髄路の損傷程度は重度
→運動機能の予後は不良と予測。
皮質網様体路は残存→麻痺側下肢近位筋の回復を予測
歩行再建の可能性が高い
→KAFO 2 動作前型歩行練習
◇ 結果:
発症から約 4 ヵ月後,遠位筋の回復は不良
近位筋優位の運動機能の回復が得られ歩行能力改善
◇ 結論:
重度片麻痺者の歩行練習に際し,
皮質網様体路の損傷も評価することでより
効果的な治療が提供できる可能性がある。
拡散テンソル画像私が働いている病院にもなく
おそらく導入している施設は少ないと思います。
しかし、皮質網様体路が近位筋に与える影響は
この二つの研究報告を見る限りは大きいことが
わかりますね。
4)まとめ
今回は麻痺側股関節に皮質網様体路が与える影響についての
文献を紹介してみました。
脳画像での確認はもちろんのこと
近位筋機能・姿勢制御機能に目を向けておくと
機能予後だけでなく
リハビリ内容も変化するのではないでしょうか?
次回は皮質網様体路編③〜最終回〜
歩行と皮質網様体路についてお話しします。