読書感想『うどん陣営の受難』
津村記久子著
『うどん陣営の受難』
社内選挙のお話。
私が渡り歩いてきた会社では、代表選挙で
こうも熱くなる経験はないが、あるところではあるのかなと思ってしまう。
地方の会社なのだが、地元採用の人たちはその土地の人が被る丸い帽子を被っている。
こんな民族が日本にいるなんて聞いたことがない。
なさそうでありそうな設定や背景を
ぶち込むのが本当に上手い。
このリアリティはどこからくるのか。
と考えると、ストーリーとはあまり関係ないように思える部分のおもしろさではないか。
会社帰りに寄るスーパーは金曜日に豚肉の特売をする、とか寝る前に暖かいお茶を一杯だけ飲もう、とか。
買ったモナカアイスがどろどろに溶けちゃったのでとりあえずシンクに置いておく、とか。
会社で使うPCがなかなかスペックの良いものへ交換してくれない、とか。
スルーしがちな日常で感じているだろう事象が
描かれている事で、物語に色が付いてくる。
そういう細部を楽しみに、著者の作品を
追っかけている。
サクッと読めるボリュームなので是非に。