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その男、悩み、爪を切る

「変わってるね」
昔よく言われた。
「君は特別だね」
いいように変換して受け取っていた。
「ネジが外れてるね」
今聞くとそう聞こえる。

爪が伸びている男を見ると
「だらしないな」と感じる。
しかし、気が付いたら
自分の爪が長(だらしな)くなっていた。
その原因は「悩み」だ。
思い詰めると周りが見れなくなる。
最近仕事で失敗が続いてしまった。

「考えるな、感じろ」
私の好きな言葉。
悩みが彼女だったら
「私をほったらかして、どこ行ってたのよ!」
となり、悩み、つまりは考える行為と、
私は破局ムードであった。
だから今日は悩みとちゃんと話そうと思う。
「考えろ、感じもしろ」である。

「よぉ」
現れたのは、彼女と言っておきながら
女々しい私とは裏腹に、
リンゴの真ん中ぐらい芯が強そうな
自分であった。
そんな自分、つまり私がつぶやいた。
「ここにリンゴがある。
お前の力ではまだかじることができない。
顎が開かないせいなのか、
顎は開くけど噛む力が弱いのか、
歯の並びがよくないのか。
顎が開かないのであれば、
そもそもかじることができないのではないか。
だったら包丁を使うべきか。

受け入れられないものを変えるか、
変えられないものを受け入れるかは、
お前次第だ。
とりあえず地道に一つずつ、
向き合って行こうじゃないの。」


『パチン』
切った爪と一緒に悪い何かが落ちた気がして、
気持ちがよかった。

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