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「NPOで働く」というキャリア選択の魅力と実態(を独自に論じてみた)

社会課題の複雑化・多様化を背景に、これまでの行政やビジネスの仕組みでは解決できない課題が増え続けている。そうした課題を解決する主体として、民間の立場で柔軟に動くことができるNPOへの期待が高まっている。

今年7月に発表された経済同友会と新公益連盟の連携に象徴されるように、特に経済界からNPOへの連携オファーなどはかつてないほどの高まりだ。

では、それだけの期待に答えるだけNPOの活動基盤がしっかりしているかというと、残念ながらそうではない。特にNPOで働くというキャリアを選ぶ人はまだまだ限定的で、人材不足が要因で活動が加速しないというケースは非常に多い。世間からの期待がある業界に人材が十分集まっていないことは、単純にもったいないことだと思うし、変わっていくべきことと強く思う。

では、その原因はなんなのか?

もちろん構造的な要因も多々あると思うが、個人的には、NPOで働くことの魅力が十分に伝わっていなかったり、NPOというキャリア選択を行うことへの不安が払拭できていないことも単純に大きいようにも思う。

そこで今回は、NPOで働くことの魅力や実態について、自分なりの視点で思っていることを書き綴ってみたい。

NPOで働くことの大いなる魅力

まずはじめに、NPOで働くことの魅力を語ってみたい。一口にNPOと言っても多種多様なので一言で表現するのは難しいものの、今回は「やりがい、伸びしろ、仲間、組織風土」という4つのキーワードで語りたいと思う。

①社会課題に正面から向き合えるというやりがい

まず、社会課題の解決に真っ正面から取り組めることが何よりの働く報酬だ。課題の当事者や課題が生じる構造に向き合い、少しでもポジティブな変化を起こせる仕事というのは、手触り感があって、最高にやりがいがある。

もちろん課題解決は決して簡単ではないし、困難な課題を前に呆然とすることや、上手くいかずに悩むことも多い。でも、そうして難しい状況に向き合い続けることこそ、真のやりがいにつながると強く思う。

ここ最近NPOの活動に携わり始めた、スタートアップの世界にも精通するデロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長が、先日こんなことをポロッと言っていた。

「社会課題の解決にここまでの深さで取り組めるのは、NPOならではですね。スタートアップと比べたときのNPOの面白さはそこにあると思います」

この言葉、まさにその通りだと思う。経済合理性の外側にいるからこそ、ビジネスでは手が出せないような領域の課題にも長く深く向き合うことができるのだ。これこそが、NPOで働くことの最大の魅力だ。

※ 社会課題解決に対するNPOとスタートアップの役割については、こちらの記事もぜひご参照あれ

②業界としての伸びしろとブルーオーシャン環境

正直、NPOは業界としてまだまだ成熟しきっておらず、進化に向けた伸びしろが多くある。組織運営のあり方を取っても、課題解決の技法を取っても、まだまだ変革が起きる余地は大く残されている。また、冒頭にも書いたが、ビジネス界に比べればNPOに入り込んでいる優秀な人材の総量も多くない。

つまり、これから参画する人が特定分野でリーダーシップを発揮できる余地が多く、業界全体に与えられる変化や影響も非常に大きいと言える。いわばブルーオーシャンとも呼べる環境だ。

加えて、残念ながら社会課題はますます深刻化していくわけで、NPOの活動の重要性は増すことはあっても減ることはない。冒頭にも書いたように社会全体からの期待も高まり続けており、これからのキャリアで身を置く場所としては非常に有望な業界と考えられるのではないだろうか?

③「気持ちいい人」が異常に多い職場環境

3つ目の魅力は「働く仲間の気持ちよさ」だ。シンプルだが、キャリア選択においては最も大切なポイントの1 つではないだろうか。

僕は立場上、様々なNPOの方々とお話したり協働する機会が多いが、組織は違っても、会う人会う人が「もっと良い社会を創りたい」という清々しい志を持っている人ばかりで、一緒にいて最高に気持ちが良い

変な競合意識で足を引っ張り合ったりすることはほとんどなく、組織の垣根を超えて一緒に社会を良くしていこうという機運に溢れている。これは前職のコンサルティング会社で働いていたときとは、まったく違う感覚だ。

新公益連盟の合宿では、全国の様々なNPOの職員たちが一同に会して仲間として語り合う

④オープンで柔軟、ダイバーシティの高い組織風土

最後に、職場としての組織風土についても語っておきたい。

無論、組織風土は団体によって違うが、21世紀に入って設立された比較的新しい団体では、総じてスタートアップの企業と近いオープンかつ柔軟な事業運営がなされている。小さい組織であるがゆえに一人ひとりが持つ裁量が大きく、責任ある仕事を任され早いスピードで成長できる環境が用意されている。

また、ダイバーシティという観点では歴史的に先進的な業界でもある。

活動分野にもよるものの、概して女性職員の比率が非常に高く、それは管理職層においても当てはまる。また、人種や国籍、性的指向性に対する包摂性という観点でも進んでいて、多様な人たちが活躍できる環境であることが大きな魅力だ。

とはいえ不安な給与とキャリアの実態


と、ここまで NPOの魅力について語ってきたが、「でも実際NPOで食べていけるの?」「一度NPOに就職したらキャリアはそこで終わりでは?」といった不安を抱く人は多いはずだ。そこで、気になる給与とキャリアの実態について、僕の視点から語ってみたい。

①ここ10年で相当高まってきた給与水準

以前は平均給与が200万程度などと言われ、「結婚するのでそろそろ一般企業に就職します」と男性が寿退社する業界だと自嘲気味に語られていた時期もあった。が、それは遠い昔の話だ。

新公益連盟が行った調査でも明らかになったが、ここ10年ほどで給与水準は業界全体で大きく改善し、同規模の中小企業と同等水準にまでなっている。

クロスフィールズでも、数年前に人事の専門家に依頼して給与テーブルを設計するなど、マーケットでの価値をベースにしたフェアな報酬設計を心がけている。総合商社や外資コンサルのような給与水準が高い業界からの転職では給与は下がるものの、一般の事業会社であれば大きく水準が落ちないところまで来ているし、加入後にも評価に応じた昇給が可能になっている。

ただ、報酬面のアップサイドは限定的で、NPOにはストックオプションのようなものも存在していないその意味では、職場選びで「高い給与水準」「キャリアの安定」を重視するという人に向く業界とは言えないだろう。

②実はキャリアアップが目指せるNPOでの職務経験

「NPOに一度入ったら片道切符で、もうビジネス界には戻れない…」というのも完全に都市伝説だ。NPOでのキャリアを経て他分野で活躍する人材は数知れない。事例として、クロスフィールズの卒業生を何人か紹介したい。

例えば総合商社から転職してクロスフィールズに加入したメンバーは、その後イギリスのデザインスクールに留学し、広告代理店を経て現在は外資系コンサルティング会社でデザイナーとして働いている。

また、エンジニアリング会社からクロスフィールズに転職して新規事業を経験したメンバーは、今は急成長中のスタートアップで50人以上のエンジニアを統括する責任者として働いている。

他にも、クロスフィールズ卒業後に起業したり、他のNPOに移って管理職を務めていたりと、それぞれが理想とするキャリアを自由に描いているOB/OGが数多くいる。

社会課題の解決が重要なテーマになるこれからの時代、社会課題に深く向き合えるNPOでの職務経験は、大企業でもスタートアップでも行政機関でも、どんな組織からも貴重なスキル・経験として高く評価されるはずだ。

その意味でも、少しでもNPOに関心ある人は、「まず飛び込んでみる」くらいの気持ちで飛び込んで経験を積んでも決して損はないのではと僕は思う。

おわりに 〜「NPOで働く」キャリア選択を!〜

ここまで色々書いてきたが、僕としては、「社会とのつながり」を強く感じながら働けるNPOでの仕事は、その人の人生をきっと豊かにしてくれると僕は信じている。ぜひ、多くの方にその価値を感じて欲しい。

もし気になるNPOがあるということであれば、実際に団体のウェブサイトを訪問して採用情報の欄をチェックしてみて欲しい。また、最近ではDRIVEキャリアのようなソーシャルセクターに特化した求人メディアもあるので、関心ある方はぜひ見てみて欲しい。

また、クロスフィールズでもいま採用活動を積極的に行っている。

現在はビジネスとソーシャルの現場をつなぐ様々なプロジェクトを最前線で担う「プロジェクトマネージャー」の職種でメンバーを募集中だ。国内外を飛び回りながら新たな価値を生み出したい方は、ぜひご応募頂きたい。

2024年1月22日には、キャリア論の専門家であるコンコード・エグゼクティブ・グループの渡辺秀和社長をお招きし、NPOへのキャリアチャンジをテーマにしたセミナーを開催する。NPOで働くことに少しでも関心がある方は、ぜひ参加してもらえたら嬉しい。

最後に、クロスフィールズにはコンサル出身者や大手メーカー出身者など様々な経歴をもつメンバーが多くいる。彼ら・彼女たちのキャリアストーリーをまとめた記事も貼っておくので、ぜひ参考にして頂きたい。


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