小沼大地|クロスフィールズ代表

NPO法人クロスフィールズ代表 http://crossfields.jp/ 青年海外協力隊(シリア)、マッキンゼーを経て創業。新公益連盟の理事も兼務。 『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』http://amazon.co.jp/dp/4478025185

小沼大地|クロスフィールズ代表

NPO法人クロスフィールズ代表 http://crossfields.jp/ 青年海外協力隊(シリア)、マッキンゼーを経て創業。新公益連盟の理事も兼務。 『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』http://amazon.co.jp/dp/4478025185

最近の記事

NPOと経済界の連携のこれからを想う

「共助資本主義」という概念をご存知だろうか? これは、経済同友会の代表幹事に就任した新浪剛史さんが2023年4月に提唱した概念だ。資本主義の枠組みのなかで経済成長と社会のWell-Beingの両立を実現していこうという考え方で、そのためには経済界とソーシャルセクターとの連携が鍵だと高らかに謳われている。 これまで経済界からは全く相手にされてこなかったNPO側の立場からすれば、「え、マジで!?」というような驚くべき話だ。が、経済同友会の本気度はたしかなもので、2023年7月

    • 30代後半からの人生を豊かにする「複数形な生き方」のススメ

      もう1ヶ月ほど経ってしまいましたが、先日、42歳の誕生日を迎えました。 かつては「若手起業家」とか言われていた自分も「見事なオッサン」になっったわけですが、実はいま、意外にも過去もっとも充実した日々を過ごせています。20代や30代に感じていた充実感とはまったく違う質感の、「日々を大事に過ごせている」実感があるのです。 40代になる手前にはいわゆる「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」も経験したのですが、そこを良い感じで抜け出せたように思います。最近「いまこんな風に生き

      • "ソーシャルイノベーション先進国"インドから日本が学べること

        2024年2月、大企業の役職者やスタートアップの経営者たち総勢20人とともにインドを1週間訪れた。クロスフィールズが主催するSocial Innovation Missionというプログラムで、ムンバイやバンガロールといった都市やアルワンドといった農村部を訪問し、現地のNGOやスタートアップのリーダーたちとの対話を重ねた。 僕はインドには過去10回ほど訪れているが、前回の訪問は2020年1月だったので、コロナ禍を経た4年間でインドの景色がガラっと変わっていたことに衝撃を受け

        • 「NPOで働く」というキャリア選択の魅力と実態(を独自に論じてみた)

          社会課題の複雑化・多様化を背景に、これまでの行政やビジネスの仕組みでは解決できない課題が増え続けている。そうした課題を解決する主体として、民間の立場で柔軟に動くことができるNPOへの期待が高まっている。 今年7月に発表された経済同友会と新公益連盟の連携に象徴されるように、特に経済界からNPOへの連携オファーなどはかつてないほどの高まりだ。 では、それだけの期待に答えるだけNPOの活動基盤がしっかりしているかというと、残念ながらそうではない。特にNPOで働くというキャリアを

          【韓国訪問記】 深刻な社会構造とソーシャルセクターの驚くべき変化

          2023年7月、約4年ぶりに韓国を訪問した。主に孤独・孤立の課題に取り組む団体同士の学び合いを目的とした2泊3日の短い視察だったが、韓国社会の現状やソーシャルセクターの動きなどについて多くの学びがあった。今回の記事では、そこでの気づきを書いてみたい。 ※ 本視察は国際交流基金の助成事業としてクロスフィールズが企画実施したもので、むすびえ湯浅誠代表、新公益連盟白井智子代表、クロスフィールズからは僕含む2名の計4名が参加した 韓国社会が抱える社会課題の深刻さ K-POPや韓

          【韓国訪問記】 深刻な社会構造とソーシャルセクターの驚くべき変化

          「NPOにとっての成長」を考え抜いた結果、「規模の成長」は手放した話

          今回は「NPOにとっての成長」というテーマで、自団体で長年考えてきたことや、最近になって行った意思決定などを紹介しながら、少し経営っぽい話を書いてみたい。 はじめに 〜揺らぐ「成長」の定義〜社会の分断や気候変動の深刻化などを受け、ここのところ、いよいよ資本主義のあり方に対する議論が国内外で盛り上がっている。数年前に話題になった斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』では、成長を前提とした資本主義というシステム自体を変えるべきという過激な論まで展開された。 このあたりは色々な意

          「NPOにとっての成長」を考え抜いた結果、「規模の成長」は手放した話

          【追悼】 木下万暁さんがNPOの世界にしてくれたこと

          これまでの職業人生でご縁を頂いた方の中でも、僕がもっとも圧倒的な凄みを感じたのは間違いなく木下万暁(きのした・まんぎょう)さんだ。2023年7月9日、その万暁さんが46歳の若さで、膵臓癌との闘病の末に帰らぬ人となった。 万暁さんの弁護士としてのご経歴やお人柄については、サウスゲイト法律事務所がつくられた素晴らしい追悼ページをご覧頂きたい。彼がどれだけの人物であったのかは、このページの文章から温かさとともに伝わってくる。 ただ、NPOの世界で生きる者として、彼の功績は弁護士

          【追悼】 木下万暁さんがNPOの世界にしてくれたこと

          米国NPOを久々に訪れて感じた衝撃と学び

          2023年2月、アメリカ・サンフランシスコを1週間にわたって訪問してきた。 孤独・孤立の課題に取り組むアメリカのNPO/スタートアップ/アカデミアの方々と対話するとともに現場を訪問し、日米のリーダーが学び合いを行うという趣旨の訪問だった。(国際交流基金の助成事業として、新公益連盟とのパートナーシップのもとでクロスフィールズが企画実施させて頂いた) 日本からの参加者は、居場所支援の第一人者であるむすびえ湯浅誠代表、シビックテックの領域にて最前線で活躍するCode for J

          米国NPOを久々に訪れて感じた衝撃と学び

          ケニアで見たスタートアップによる社会課題解決の可能性と限界

          先週、クロスフィールズが主催する企画で、スタートアップの経営者や大企業の方々など総勢20人とともにケニアを1週間訪れた。多くの学びがあったが、その一部を「社会課題解決をめぐる潮流」という観点で自分なりにまとめてみたい。 Fintechによる貧者のエンパワーメント 僕が前回ケニアを訪問したのは2007年頃だ。15年以上ぶりの訪問ということで、当然ながら多くの変化を目の当たりにした。 まず目についたのは物理的なインフラの大幅な改善だ。当時はなかったような高層ビルが多数立ち並

          ケニアで見たスタートアップによる社会課題解決の可能性と限界

          社会課題解決の主役はNPOよりもスタートアップなのだろうか?

          少し前の話になるが、22年9月号のForbesはかなり衝撃的な特集だった。 これまで「社会課題解決の担い手」が特集される際には、NPO/NGOやソーシャルビジネス(社会的企業)のリーダーが主役のことが多かったように思う。だが、いまやその座がスタートアップの経営者たちへと移行したかのようなForbesの打ち出し方は、否応なしに時代の変化を感じさせるものだった。 僕がNPOの世界に足を踏み入れた約20年前、「社会課題解決」はある意味NPO/NGOの専売特許のような領域だった。

          社会課題解決の主役はNPOよりもスタートアップなのだろうか?

          ”SX”への期待と強烈な違和感を、NPOの立場から語ってみた

          最近、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)なる言葉が話題だ。すでにバズワード化しているDXと並んだ文字ズラの良さもあってか、2021年頃から関連書籍も続々と出版され、様々なシーンで目にする機会が増えている。   結論から言ってしまうと、このSXという概念、これからの社会がSDGsの掲げる世界観を体現していく上でビジネスセクターとソーシャルセクターの両方にとって重要なキーワードになると感じている。   一方、SXをめぐる昨今の動きには、強烈な違和感や危機感も持って

          ”SX”への期待と強烈な違和感を、NPOの立場から語ってみた

          PTAでのDX推進の副反応(新年度からPTA活動に関わる方々への申し送り)

          令和3年度の1年間、小学2年生の娘が通う地元の公立小学校のPTAの副会長を務めさせてもらった。個人的にも多くの気づき・発見・学びがあって、とても楽しく充実した時間だった。役員としての任期を終えるにあたり、ちょっと思うことがあったので、少しここに書いてみたい。 PTA活動でも爆速で推進されるDX世間ではDXの推進が叫ばれているが、PTA活動もその例外ではない。特にコロナ禍において、全国的にPTA活動のDXが加速しているように思う。たとえば、うちの小学校では、この1-2年のうち

          PTAでのDX推進の副反応(新年度からPTA活動に関わる方々への申し送り)

          日本におけるソーシャルビジネスの歴史と展望(を好き勝手に語ってみる)

          ここ最近、「SDGs」や「新しい資本主義」に対する世間の注目や関心の高まりに伴って、ビジネスを通じて社会課題を解決する「ソーシャルビジネス」という概念にも再びスポットライトが当たっているように感じる。 そんな背景もあってか、光栄にも「ソーシャルビジネスの歴史について文章を寄稿をして欲しい」と、国際協力NGOセンター(JANIC)が外務省の事業として発行している「NGOデータブック2021」でのコラム執筆の依頼が舞い込んだ。 珍しく真面目に文献にもあたりながら、ソーシャルビ

          日本におけるソーシャルビジネスの歴史と展望(を好き勝手に語ってみる)

          ビジョン刷新に込めた想いと、リブランディングの舞台裏

          創業10年目を迎えた僕たちクロスフィールズは、2022年2月24日にビジョン・ミッションの刷新を発表する。これに伴って、こだわり抜いた特設サイトを日本語・英語の両方で制作したので、ぜひご覧頂きたい。 この刷新と変革のプロセスには、実に1年2ヶ月の時間がかかった。チームとしても僕自身としても、時間的にも精神的にも相当なコミットをした。大げさではなく、魂を込めた想いが結晶化したような感覚だ。 今回の記事では、前半で新たなビジョン・ミッションに込めた僕たちの想いをお伝えし、後半

          ビジョン刷新に込めた想いと、リブランディングの舞台裏

          NPO経営者としての10年の旅路を6000字で振り返る

          今日2021年5月3日で、NPO法人クロスフィールズは創業10周年を迎えた。自分としても、NPO経営者としてのキャリアを始めて10年が経ったわけだ。 尊敬するNPO法人かものはしプロジェクトが2012年に10周年を迎えたとき、創業2年目の自分たちには遠い遠い世界の出来事だと感じたのを、いまも鮮明に覚えている。でも、いよいよその日が来た。 いま、どんな心境なのか。 正直、もっと感慨深いのかなと思っていたし、何かしらをやり切った感とかがあると思っていた。でも、感慨深さなど微

          NPO経営者としての10年の旅路を6000字で振り返る

          あれから10年。シリアと東北への想い、葛藤、願い。

          2011年3月には、多くの生涯忘れられない出来事があった。 今から10年前の今日、日本を東日本大震災が襲った。ちょうどその日は、僕が起業することを決意し、前職の会社を退職して独立した日でもあった。その4日後の2011年3月15日には、僕が青年海外協力隊として約2年を過ごしたシリアで、今も続く内戦の契機となる民衆デモが始まった。 あれから10年。 この10年間を振り返ると、僕は仲間たちと起ち上げた組織の経営に、文字通り、全力を尽くしてきた。その点においては、一点の曇りもな

          あれから10年。シリアと東北への想い、葛藤、願い。