黒部進さん生誕祭・ハヤタという人物の魅力について
本日(これを書いてる日)、10月22日は初代ウルトラマン、ハヤタこと黒部進さんのお誕生日です。85歳、おめでとうございます!
ロコさんも、いつまでもお元気で~と伝えたくなるツーショットです。
せっかくなのでこれを機に、久しぶりに黒部さんの著書を読み返したりしていました。
1998年に刊行されました黒部さんの自伝本です。森次さんの「ダン」と共によく読み込んだ本であります。26年前の書籍ですが、この時点でウルトラマンから32年が経っていたという歴史の長さへの感服と、そして傘寿を越えられてもなおウルトラの語り部としておられる黒部さんと同じ時代を生きていることを誉れに感じます。
優等生ハヤタ、しかし黒部さんは…
しかしこの本で、ご本人から語られているウルトラマンの頃の話はヒーロー然としたものばかりではありません。大学のために上京したものの都会で遊びを覚え、不規則な暮らしに浪費が重なり路上生活にまで転落したこと、ウルトラマンの撮影中も終わって飲みに行く話ばかりしていたこと、などなどです。私はホームレス生活をしたことがないのでその苦労はわかりませんが、そんな生活に自分自身が原因で陥ってしまうのですから、一言、
「だらしない人」
だったのだと思います。この路上生活で、靴磨きのバイト中に客としてきた大物映画監督に声をかけてもらい役者の道に進むわけですが、この巡り合わせがなかったら…ウルトラマンの変身者は別の人だったことになります。今となっては黒部さんのハヤタ以外が想像出来ませんから、偶然が歴史を作る事はままあるのだと感じますね。
黒部さんご自身はウルトラマンの後も俳優業を続け、どちらかというと悪役を演じる事が多かったことで知られています。それもまた、ギャップがあって面白いのですが。そして、家族仲が良く、一緒に海外旅行に行った時の話がいくつも載っている本でした。というか、アフリカが好きなんですね黒部さん。昭和の時代だとアフリカは情報が少なく、未開の地を冒険する気持ちで訪れてそこの気候、風土、人々に魅せられたのが理由だといいます。
ウルトラマンの後、ハヤタ役だったという一点で人気を得ていましたが特別俳優として成功したわけでもない。「実のない人気だった」とご本人が回顧しています。そんな自分を、男として磨くためにアフリカを旅してみたのだとか。初代ウルトラマンの主人公は未来永劫、黒部さん一人しかいません、ゆえの考えだったと思えば「そういう気持ちになったんですね」と納得せざるを得ないのですが、特にヒーローを演じた俳優さんはその後の仕事や生き方、振る舞いに至るまで悩みがつきまとうといいますね。全ての人が宮内洋さんのように徹頭徹尾ヒーローでいられる訳ではありませんから。
こういう部分も含めて、人間的なところがまたハヤタ…黒部さんの魅力でもあります。
ウルトラマンを面白くしている「カセ」は、原点からあった
先日放送のウルトラマンアーク第15話で、ユウマとアークが直接対話、お互いの心情や過去の過失などを伝えあい、「君は、僕だ」と共同体である意識をあらたにする場面がありました。重要な名シーンだったと思います。ここまでのいきさつがあったからこそ、ユウマ、アークが信頼関係を確かなものにしてこの先も戦っていく…という大事なエピソードでしたね。
対して、3年前のウルトラマントリガーにおいても、主人公マナカケンゴとトリガーが同一体であることが語られていたのですが…私の観測範囲では、これについて「よくわからない」という意見が多数見受けられました。私自身もそう感じたのですが、トリガーが問題だったのは「ケンゴ=トリガー」の実態が難解なことではなく、そのことが物語上でさしたる意味を持っていなかったことだと思います。
ウルトラマンと変身者の関係は大別して
・一体型
・変身型
の、二つですが、トリガーは「結局どっちなの?」みたいな感じだったんですね。
ウルトラマントリガーに苦言を呈する格好になっていますが、ここが曖昧なのはドラマ作りにおいて本当に良くない、と思ったからです。
ウルトラマンシリーズは、主人公の正体が基本的には周りにバレておらず、秘密です。それがバレそうになる、またはいつ明かすのか、これが伝統的に視聴者の興味を引くスパイスになっているんですね。
初代ウルトラマンは、最終回まで「ハヤタ=ウルトラマン」はバレませんでした。というかハヤタは記憶を失っていましたね。
続くセブンでは説明不要、最終回で地球を去る前にアンヌ隊員に告白しています。未だに語り継がれる、最大のドラマシーンです。
「ウルトラマンの主人公は、周りに正体を隠しているから面白い」
長い歴史の中で例外もいくつかありますが、基本的にはこのルールが効いているのがウルトラマンです。初代の頃からこれはあるので、シリーズの面白さを築いたといえるのは間違いないでしょう。ハヤタ隊員、偉大です。
また個人的にハヤタの好きな場面があります。
最終回一つ前の第38話「宇宙船救助命令」にて、手詰まりに思えた状況でムラマツキャップがハヤタに
「君ならどうする?」
と尋ねると
「歩きます!」
と、マシーンが使えない場面で徒歩での移動を進言するんですね、それも即答です。よく、キャップに次ぐ副隊長的なポジションといわれるハヤタですがそれが顕著に表れているシーンです。
任務はある、が部下の安全も確保しなければいけないキャップに対し、それでも突破口はこれしかありません、と提案できるハヤタ。同等の経験や判断力を有し、トップ以外の立場で意見が言えるハヤタの強み、優秀さが出ていると感じたわけです。
この有名な2話に挟まれて、少し地味な38話ではありますがそんなハヤタ隊員の見せ場があったんですね。
全ての原点であった初のウルトラ変身主人公、ハヤタについて語ってみました。
あらためて、お誕生日おめでとうございます!