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鹿島アントラーズの本を読みました、というお話

先日、友人から借りたこの本を読了しました。

「頂はいつも遠くに ~鹿島アントラーズの30年~」です

私自身、サッカー、Jリーグに詳しいわけではなく普段試合を観る習慣もありません。ただサポーターである友人から私が読書家であることを見込んで興味があれば…と勧められたので、読んでみました。
J1クラブの、アントラーズの歴史を綴った評伝です。

圧倒的、主人公気質

アントラーズは、Jリーグ創設当初から存在している「オリジナル10」の一つで、Jリーグの中でも優勝回数最多、初の国内三冠、唯一のリーグ三連覇を果たしている強豪チームなんですね。サッカーに詳しくない私でも名前は知っている、そんな選手が大勢この本には出てきました。

私がこの本を読んでいることに呼応したような、先日の試合がこちらです。

先日の試合は久々にアウェイでの快勝だったようです。
この後の人事を思うと、3点目のあとのポポヴィッチ監督の笑顔がせつなくなってしまうのですが…ともかく、今年もまだ優勝の目は残っているので残り試合、新体制で駆け抜けていって欲しいですね。

ポポヴィッチ監督、イケオジだなぁと思って見てたんですが、
勝負の世界は厳しいですね

チームが誕生した1991年(前身はもっと前ですが)から30年、とにかく「勝つこと、栄冠を手にすること」を第一に掲げ、選手、スタッフ全てが一つになってやってきたとてつもなく厳しい組織である、とあった鹿島アントラーズ、この本のどの項を読んでも、「鹿島は独特で、厳しい」という選手含め関係者の声が載っていました。
しかし、「勝って当然」な強豪チームでありながらエリートの色は全く無く、基本的に鹿島出身であろうと他から来た選手であろうと叩き上げの精神で鍛えられている印象です。チームスポーツというのは必ず波がありますから、良い時も悪い時もあります。その波をできるだけ小さく、高い位置に持っていけるのが強いチーム、なのでしょうね。

全体を通して「勝つことを第一に、関わる人間全ての力を集めてやっています」という姿勢を感じ取ることが出来ました。それはまさに少年漫画的な熱さで、監督や選手が替わろうとも応援し続けるサポーターの気持ちを理解することが出来たのが、個人的収穫でしたね。
私はスポーツでいえばボクシングファンで、一時期熱を入れて観ていたことがあります。ですがあちらは個人競技です。
「人が入れ替わっても、チームを応援し続ける気持ち」
が、いまいちピンと来なかったのですが(地元のチーム、なら郷土愛かな~くらいに思ってました)、「鹿島だから応援する」という人の熱意が伝わる一冊でした。

鹿島以外のクラブがどうなのかはわかりませんが、
ともかく鹿島は、熱血チームで間違いないようです

これからの、主人公が辿る道

一方で、2018年のACL優勝以降、6年間タイトルが獲れていないという現状があり先日の監督解任劇も示しているように、現在の鹿島は苦しんでいるように見えます。
その原因は…これもこの本にあったことですが近年、サッカーを取り巻く状況も変化しており移籍の活発化によるチーム作りの難しさであったり、鹿島でいえばベテラン引退後の「柱」の不在など様々な要因が絡んでいると思われます。
ですが私は、この「時代の流れだから…」という論には少々苦々しいものを感じることがあります。私自身が昭和生まれの人間であることに起因していますが、

「世の中が変わっていくのはやむを得ないけれど、前時代を悪と捉えるのはいかがなものか?」

という考えがあるんですね。
アントラーズに沿えば小笠原満男選手の引退後、「背中で語る」選手がいない、と書かれていました。それは、偉大な功労者であるがゆえに簡単に後継者ができるものではない、という当たり前の話以上に、現代ではチームに全てを注ぐ、誰よりも練習をする、といったストイックさが否定される風潮が手伝っている気がしています。

つまり、「もうキツく追い込むやり方は、してはいけません」という世の中の流れです。他の仕事でも週休二日、場所によっては三日、なところもあるようです。仕事だから、を名目に個人を締め付けることは間違っているというのが今の社会、となりつつあります。それが、厳しくて当然のプロスポーツの世界にも波及しているのでは…と感じます。
ですが何事もバランスが大事です。「今はこうだから」で「かつて」を否定していればいずれ逆側に傾いて崩れます。
というか、鹿島アントラーズを見ているともう崩れてるんじゃないか、とすら思ってしまうんですね。厳しい先輩が去り、勝てなくなってしまった。

素人の印象論で恐縮ですが、長年観ている友人の話を聞いての
考えです。そこまで大きくズレてもいないと思います

正直、結果が伴っていなければ厳しいチームです!必死でやっています!といっても精神論のみの戯言になってしまいます。私はここ数年つまらなさそうにしているサポーターの友人を見ていますから、ハッキリ言うとこの本に書かれていることが「昔は良かった」ばかりに読めてしまったのも確かです。「なに言ってやがる、いいから勝てよ」、これもプロのチームに対する当然の要求です。

ですが…全383ページを読み終えた時、「この戯言こそが、次へ向かって動く原動力なのだ」というのも理解出来ましたし、素晴らしいものだとも思えました。勝てばいい、で計算高いばかりのチームには魅力がないですからね。
ならばもう、戯言を抱えて強く戦っていくしかないんですよね。
これが、少年漫画的主人公ロードを歩き続けてきたチームの宿命なんだと思います。サッカーの戦術などはわかりませんがこれだけチームの知識が入った今、試合を観ることがあれば見方も大きく変わることでしょう。

主人公だろ?勝って世界を救ってみせろよ。

これが、ズバリの感想でございました。
追記しますと、この本は集英社出版でしたのでやはり鹿島アントラーズは少年ジャンプ色のチームなんだな、と思いました(関係ない)。

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