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「アドロイド」感想…歌声が生み出した夢の中

先日発売になりました小説「アドロイド」、読了したので感想を綴ります。

登場人物はアド、そしてMVでおなじみの4人です

どんな内容なのか全くの未知数でしたが、なかなか面白かったです。

見慣れたキャラ達の、生きる世界

この怖い顔の「優等生」、名前はウルちゃんです。

この野球少女はメイちゃん。球技なのになんか強そうですよね。

この子がラギ。イメージ通り、博物館で働くおとなしい子です。

この子はそのまんま、オドという名前です。アドとオドがいるのでややこしい。そして見た目の通り、ボクサーだったりします。

架空のエルゥエル島を舞台に、アドとこの4人の交流を描く物語でした。アド自身に秘密があり、それがクライマックスに大きく関わってきます。アドは、もう現実のAdoちゃんそのものな陰キャ女子。そして島で出会う4人ですが、彼女たちが…とても、優しい。Adoちゃんの分身、なのかどうかはわかりませんが、一番キツい性格をしてそうなウルでさえ、なんと職業は医者(作中では修理屋と言われてますが)という意外性がありとても思いやりのある子なんですね。
この4人との絆が育っていくからこそ、ほろ苦い結末に繋がっていく…そんな物語でした。

惜しいな、と思ったところ

アドは、即興で歌を創り、歌えるという特技で一目置かれるのですが終盤はあまりこれが効いておらず、勿体ないなと感じました。パラレルワールドの話ではありますが、このアドは間違いなくAdoでしょうから、もっと「歌」にクローズアップして欲しかったな、というのはあります。
あと、個々の台詞、性格付けがやや弱めで誰の台詞かが分かりづらい場面が少しありました。脚本なら台詞の前に人物名が必ずあるのですが、小説の地の文の難しさも感じましたね。4人全員がアドに対して好意的なのも、書き分けの難易度を上げていたのかもしれません。誰か一人、アドの敵になるような存在がいた方がメリハリがあったような気がします。

特典のポストカードはメイでした
レディメイドはファーストアルバムの一曲目でしたね
「金も愛情もクソくらえ」って詞が好きです

幾人の才能が作り上げた世界

私が音楽を聴き始めた90年代は、圧倒的なCDセールス全盛期でした。有名アーティストのフルアルバムは出れば必ず売れる、そんな時代です。
今でいうMV…当時はPV(プロモーションビデオ)と呼ばれていましたが、これらはほぼ、シングルCDのA面曲のみに存在していました。それ以外の曲にまで作る必要が無かったんですね。ですが昨今、新曲リリースとなると大抵映像もセットで付いてきています。CDが売れる時代ではないので、視覚にも訴える形で音楽をエンタメ化しないとなかなか世間に浸透しないからでは、と思っています。

結果として、Adoちゃんのファーストアルバム「狂言」は14曲全てにMVが存在しています。その後の曲もリリースと同時に映像も必ず付いているんですね。これは十数年前にはなかった事です。
なので、このAdoちゃんの初期楽曲のビデオもすっかりお馴染みになり、キャラも皆が見覚えのあるものになりました。それゆえに生まれたのが今回の小説といっていいでしょう。
ご存じの通りAdoちゃんは歌い手であり、楽曲を手掛けているのは曲ごとに違うプロデューサーです。またMVもそれぞれのアーティストによるものです。分野が違えば違う人間が担い、それらがAdoちゃんの歌声で一つにまとまる…そういう芸術作品を彼女は何曲も生み出し、またこれからも生み続けていくのだと思います。今回のこの小説は「ギラギラ」の作曲者であるてにをは氏によるもので、Adoちゃんのイメージがどこまで反映されているのかは判りませんが、この「どこかが欠けた自分と、その仲間達」の物語には彼女のコンプレックスや、周囲の人間への感謝の気持ちが表れているなぁ、と胸に沁みました。
つまりはこの小説もAdoちゃんの、歌とは異なるアプローチ、作品ではないかと思った次第です。それは、オーソドックスながら安堵感に満ちたラストシーンが彼女の願いのように感じたからです。

アニメ化してもいいんじゃないかと思いました
当然、声優は本人で(笑)。


いよいよ今週末は、歴史の大きな1ページとなるであろう公演が控えています。それに伴い新譜の発表もありましたが、この本もまた脳にAdoワールドを作り上げる力の一部になりましたね。
きっと国立競技場では、小説のアドが最後に見せた強い心をそのままぶつけてきてくれると思います。あぁ、受け止めに行きましょう!


ちなみに前世の話だそうですが、時代的にはかなり未来の話じゃないかと矛盾も感じました。
ここもAdo(脇役)の名で思いっきり主役な彼女のメタファーじゃないかと思ってしまいましたね。



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