令和の時代の「昭和特撮」の楽しみ方
先日、Twitter上で
「初代仮面ライダーを一気見するのは拷問だった」
という、ある特撮ファンの発言が波紋を呼んでいました。
その経緯、顛末については長々と書きませんが、つまりは毎週30分の番組を連続で観るというスタイルに沿った作品か否か、というところに集約される議題だなと感じました。
仮面ライダーファンな人達が過剰に反応しているきらいもありましたし、そもそも10年前に観た感想をネガティブな表現でSNS上に置くのもファンの発言としては好ましくないものだという印象ですね。
はてさて、この件については私自身関わってもいないのでこのくらいの所感ですが、では初代仮面ライダーは30分番組として面白かったのか、という観点からある1話を挙げたいと思います。
ありえない「重要回」
それは、仮面ライダー2号の登場回である第14話「魔人サボテグロンの襲来」です。
第14話「魔人サボテグロンの襲来」
新たなショッカーの幹部がメキシコから来日するとの連絡を受けた滝は、連絡員と合流。しかしそれは怪人サボテグロンが化けた姿だった。ショッカーに襲われる滝と藤兵衛。そこに仮面ライダーが登場し、2人は救出される。だが助かった2人の目の前に現れたのは本郷ではなく、一文字隼人と名乗る謎のカメラマンだった。(公式配信より引用)
この回から2クール目に入り、主人公が本郷猛から一文字隼人に交代します。という重要回でありながら、タイトルに一文字や2号といった表記はありません。そもそも2号という分け方もされておらず、オープニングのクレジットでは「仮面ライダー」のままです。本当に唐突に、主人公が新しい人物に交代しているんですね。一応、本郷は外国に行ったと一言説明がされますが、おやっさん、滝が全く知らず突然出てきた謎のカメラマンに知らされる、というのはなんだか不自然です。
そしてその後の戦闘も、強さを見せつけて圧勝するわけではなくむしろ、危機に陥ったところで終わります。「一敗地に塗れるか!」とナレーションが入りますが、初登場のヒーローに使うワードとしてはあんまりなものですよね(苦笑)。あと、ポーズを取って「ライダーパワー!」とだけ宣言するのですが、あれは何だったのでしょう。
この一つ前、13話の最後の次回予告ですが、
「次週から始まる、仮面ライダー新シリーズ!装いもあらたに、
興味抜群!スリル!アクション!次週仮面ライダー、魔人サボテグロンの襲来に、ご期待ください!」
というナレーションも、「いきなりどうした!?」な感じです。
テロップは出ていますが、新主人公や新レギュラーについては語られていません。
まぁこれは、当時藤岡弘、さんの入院による制作現場の混乱を端的に物語っているもので、新体制が予定外のものであることと急ピッチで進められたこと、事情が決して良いものではなかったことなどを浮き彫りにしているわけです。現在では考えられない「新ヒーローのデビュー回」ですが、今となってはその初変身と相まって語り草にもなっています。
2号編に入り視聴率も上がり、仮面ライダーは大人気番組になっていったといいます。まさにケガの功名だったわけですが、単純にこの第14話を30分番組として見ると「よく出来ている」とは、とても言えないものです。しかし、その粗さも含めて、楽しんで観ている、のが半世紀たった今のファンの大多数なんですね。この回だけで観れば次週への引きもありますし、当時観ていた人は「来週が待ち遠しいな」と思っていたことでしょう。
これは間違いなく、「昭和の記録」なんですね。
想像力と同時進行で、解釈に深みを持つ
昭和のテレビ番組などは、どうしても古典としての鑑賞になります。なので、ここは古典であることを念頭に当時の背景を想像しながら観ることで現代の番組にはない面白さを見出せるのではないかと思っているんですね。
冒頭の話題ですが、「続けて観るのがつらかった」のは、そういう思考がなく画面だけ観ていたからではないか、とも考えられます…それが悪いわけではないのですが。
昭和46年の世相や、当時の撮影現場の空気などを想像しながら観れば、俄然面白くなる!とまでは言いませんがそこまで退屈にもならない、気がします。私も仮面ライダーのテレビ番組は全て観ている人間ですが、割と新しめのウィザード、鎧武ですらリアルタイムではなかったので2012,2013年のことを思いながら観ていたものです。たとえ数年前であっても、今とは違う部分が何かしらあるものですから。
そうやって考えると、昭和仮面ライダーなんて今とは違う「時代性」の宝庫です。当然Twitterにも書いている人は大勢いましたが、過激な言葉遣いや危険な撮影も、現代の作品にはない魅力なんですよね。
「今見ると特撮はチープ、話も単純」
なのは、当たり前です。
「チープだけど、無茶なことやってて凄い」
のほうに自分でフォーカスして楽しめるようになった方が、色々とプラスだと思うんですね。
そういう部分を浴びて育ったのもありますから、私も未だに、昭和特撮を観て楽しんでいます、これからもずっと、ですね。