4年前のコンペ応募作を読み返して
先日、PC内のファイルを整理していましたら4年前にNHKさんのコンペに応募した作品が出てきました。BSプレミアム「鑑賞マニュアル 美の壺」のプロット、シナリオ募集だったんですね。
採用には至りませんでしたが、読み返すとやっぱり映像で見たかったな~という気持ちが強く出てきたので供養の意味で公開しようと思います。
久しぶりの脚本投稿ですね。
NHK 美の壺 「ランタン」
①番組冒頭
〇和室
座卓に向かい胡坐をかく男。
卓上には古びた掛け時計や錆びた薬缶
などが並んでいる。
男「何年ぶりかな、物置の整理も。いやぁ出
るわ出るわ、ほとんどはガラクタだ」
男、掛け時計の埃を払う。
時計の針は止まっている。
男「電池を変えても動かないから、壊れてる
んだったねこれは。勿体ないと思ったが」
天の声「本当にそう思っていますか?」
驚き、周囲を見回す男。
男「ん?今の声は…」
天の声「ここですよ草刈さん」
男「えっ?」
声の出所を目で辿る。
卓上のランタンに目が留まる。
埃まみれのランタン。
男「まさか」
天の声「私です」
②V1後
〇和室
中央の座卓、ランタンのみが置かれて
おりそれと向き合い座る男。
男「驚きました」
ランタン「何がです?」
男、キョトンとする。
男「まさかランプとお話が出来るとは」
ランタン、点灯する。
驚いて、少し引く男。
ランタン「私も驚いています」
男「そうなのですか」
ランタン「はい、壊れたわけでもないのに、
捨てられたことです」
男「えっ」
ランタンが消灯する。
ランタン「それどころか、全く使っていただ
けませんでした」
一面、暗くなる。
男、怯えの表情。
男「そ、それは…」
③V2後
〇和室
暗くなった部屋の中、卓上のランタン
に青白い灯りが点っている。
男、後ずさりして壁に背を付けている。
男「キャンプ用に買ったんです。でも事情で
中止になってしまいまして」
ランタン「使われなかった物の寂しさがわか
りますか」
ランタンの灯りが強くなる。
男「すいませんでした」
頭を下げる男、怯えた目。
ランタンの灯り、消える。
周りが明るくなる。
安堵する男。
ランタン「ねぇ」
男「はいっ」
ランタン「まず、拭いてちょうだい」
男、苦笑い。
男「気安くなりましたね」
苦笑いから、微笑む。
④V3後(番組最後)
〇和室(夜)
物置にあった品物が手入れされ、並べ
られている。
卓上のランタンに灯りを点し、照明を
消す男。
薄い灯りの中に顔が浮かぶ。
男「一寸の虫、いやランプにも五分の魂。こ
うして見ると、揺れてる火が生きてるよう
に見えますね」
ランタン「本当にそう思ってますか?」
少し驚き、笑う男。
男「もちろんですよ。熱っ!」
ランタンを撫でようとして、手を弾か
れる男。
ランタン「火傷しますよ、フフッ」
男「気安く触るな、ってことですか」
手をおさえながら、肩をすくめる。
ランタン「今、仕事中ですから」
男「なるほど」
男の笑顔を照らす、明るい灯火。
~終~
モデルとなったのは、あの映画
鑑賞マニュアル番組だというのにコント風味になっているので、そりゃ採用されないだろって今なら思いますが、画面の明暗と心情をリンクさせたドラマにしようとした意図があったんだろうなと他人事のように読んでいました(笑)。
これの元ネタ…になった作品は、実はこちらです。
自身初のプリキュアだった作品で、Filmarksの写し記事もあります。
この映画のテーマである、使われなくなった道具の悲哀をランタンに当てはめて書いたのでした。
創作は自分の心に残ったものから生まれるので、いかに多くのことを記憶に留めておけるかが肝要だなと感じています。また覚えておくだけでなく、見たこと、聞いたことに対し何を感じるか、考えるか。その末に自分が思ったことは何か、それをどう伝えるか。
正解の無い道であり埒があかない世界ですが、それゆえに面白いものだと思っているので、今後も自分の「面白い」を追求していきたいですね。
そしてこれを書いていると、上記のプリキュア映画がまた観たくなってきたので改めて観てみてもいいですね。この映画を最初に観た時は
「ああ、こっちがなぎさで、黒髪のほうがほのかっていうのか」
というレベルでしたが、それから6年後、家になんとBlu-rayBOXがあるではありませんか。
そんな感じで、数年前に思いを馳せてみた、そんなお話でした。