満員電車ゼロ?
満員電車は“ゼロ”にできるのか?
多分答えはNOだ。
なぜかというと、地方の赤字路線ですら、満員状態になっている電車があるからだ。
そもそも、朝の通勤客は単価が低い。
定期券は割引券のようなものなので、普通乗車券で乗ってくれる乗客よりも、もっと効率よく「詰め込んで」運ばないと、鉄道会社にとっても損である。
もう少し説明すると、例えばJR中央線の新宿→東京は、Suicaを使って利用すると198円かかる。
一方、6ヶ月の通勤定期では28,460円で、単純に1日1回片道利用すると考えると、1回あたりの料金は28,460円÷180日÷2≒80円となる。
6ヶ月毎日乗ることはないとしても、半額に近い割引がなされていることがわかる。
これを鉄道会社の立場から考えると、10人乗れば2000円近くになる運賃収入は、
定期券利用の乗客だと20人乗せないといけないことになる。
電車の運行経費が変わらないと考えれば、詰め込まないと稼げないのである。
また、単に朝の利用客が減るだけでも満員電車は解消できない。
利用客が減れば、その分電車の本数を減らして経費を削減せざるを得なくなるからだ。
今のコロナ禍は、鉄道会社に矛盾を突きつけていると言っていい。
利用客が減れば、収入は減るものの密は避けられる。
他方、利用客を維持しないと収入が確保できない。
このようなジレンマの中、鉄道会社が取れる策は
1、乗客の単価を上げる
2、定期券利用客の時間帯を分散させる
の2つくらいではないだろうか。
1は定期券の割引率を見直す、時間帯によって割引率を変える、と言った方法が考えられる。
要は、1番利用客が集中する時間帯に、1番単価の低い集団が利用するのが問題で、むしろ混雑割増なるものを設けて、1列車あたりの混雑と収入を平準化するやり方である。
時差通勤の推奨キャンペーンで、景品が当たる、ポイントが貯まると言ったものがあるが、これをダイレクトに運賃に反映させる。
今の旅客規則では厳しいかもしれないが、一方で閑散列車の指定券を安くするような方策は鉄道各社で取られている訳なので、やり方次第でどうにでもなる気もする。
次に2であるが、これは徹底的な時差通勤の励行に過ぎない。
ただ、もう少し乗客を意図的に分散させる必要がある。
京王が数年前に走らせた「早朝特急」や、東急田園都市線で行われているような早朝時間帯の急行増発は、
通勤客に対して「朝早い電車に乗れば、早く目的地に着けますよ」というインセンティブを与えていることになる。
始発電車をバンバン出すことも有効な策であろう。
東京メトロ東西線では、早朝時間帯に浦安始発の列車が存在する。
混雑する区間の駅から始発電車を出して、ゆったりと通勤してもらうことが狙いだろう。
同じようなことが、50年以上前の中央線でも行われていたようで、当時は今では考えられない荻窪始発や高円寺始発もあったようだ。
運行計画をいじるだけで混雑が平準化できるのであれば、ハードに対する投資も最小限で済むので、コスパがよい。
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小池都知事が打ち出した「満員電車ゼロ」であるが、ここ最近だけ見ればうまくいっているような錯覚に陥る。
しかしながら、鉄道会社も稼がなければいけない民間企業である以上、利用客の減り過ぎは致命傷になる。
満員電車は不死鳥、もしくはゾンビのようなものだ。
どうやって立ち向かっていくのがよいのか、政治や鉄道会社任せにするのではなくて、利用客も考えないといけないのかもしれない。
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