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『ダブドリ Vol.19』インタビュー04 本村亮輔(熊本ヴォルターズ)

2024年2月9日刊行の『ダブドリ Vol.19』(株式会社ダブドリ)より、本村亮輔選手のインタビュー冒頭を無料公開します。

 熊本で誰よりも愛されている現役バスケットボールプレーヤーがいる。本村亮輔。熊本ヴォルターズのキャプテンだ。どうして彼が熊本の人々に愛されるのか。それはきっと彼自身が熊本の街や人々に育ててもらった感謝をどんな時も表現しているからなのだろう。自分を育ててくれた先輩たちが、熊本の人々が繋いできてくれたヴォルターズレッドの灯火を自分が受け継ぎ、また繋いでいく。そんな本村亮輔の熊本愛と覚悟に迫る。(取材日:11月2日)

[ Interview by 宮本將廣/Photo by 本永創太 ]

キャプテンをやっていて悔しかった。

宮本 今回は良く知った関係だから、ちょっとラフな感じで話せたらなって思ってます。練習も見せてもらったけど、チームとしてはいい雰囲気だなって感じました。
本村 そうですね。もちろんまだまだな部分はありますけど、いい感じで来ているとは思います。これは言っちゃいけないのかもしれないけど、磯野(寛晃)が怪我をするまでのチームはめちゃくちゃよかったんですよ。そこから立て続けに怪我が続いたんで……。正直、難しさは感じています。また昨シーズンみたいになっちゃうのかなっていう怖さもあったり……。
宮本 今回聞きたいなって思ったことはまさにそのあたりで、昨シーズンからキャプテンに就任して、今シーズンも引き続きキャプテンになった。やっぱり2年目って何事も難しいと思うんだよね。1年間やってみて流れがわかるし、昨シーズンは昇格ができなかったから、「これじゃダメだな」って感じたりすることもあるんじゃないかなと思って、その辺の話を聞いてみたいなと思いました。
本村 そうですね。昨シーズンに初めてキャプテンをやって感じたのは、思ったことは全部言わないといけないなってことですね。プレーオフに負けてから出てきた意見とかもあったんですよ。
宮本 あー、なるほどね。
本村 それはキャプテンをやっていて悔しかったというか、もっと自分が上手くできたんじゃないかなって思いました。もっとみんなの意見を聞いて、もっと共有するべきだった。熊本はすごく仲はいいんですけど、面と向かって言えない選手もいるんです。だから、選手とコーチの間に自分が入っていって意見交換をしたり、もっとできたことがあったのかもしれないと思いました。今シーズンはその辺を意識してやろうと思っています。

宮本 昨シーズンの終盤に遠山(向人)ヘッドコーチが、「もう一回このメンバーでシーズンを戦うことができたとしても、亮輔にキャプテンをやってもらいたい」って話してくれました。それを聞いていたから、今シーズンも本村選手の熊本継続がリリースされた時に、「きっと今シーズンも本村亮輔がキャプテンかな」って思ったし、その流れになった。だけどシーズンが始まって、中心選手の怪我、自分も脳震盪で離脱することになった。そんなことは考えもしなかったと思うんだけど、現状コートの中でキャプテンとして役目を果たせないっていうのはどう捉えているの?
本村 やっぱりもどかしいですよね。自分が離脱をして、見ているだけしかできなくて……。チームがうまくいっていない時も、ちょっと意見しにくいというか。自分がプレーできなくて、チームに迷惑をかけているので……。でも、ここで僕が落ち込んでちゃいけないって菅澤(紀行)さんにも言われたんで、そこは意識していますね。この状況でもできることがあるはずなんで。

得点に関する感覚も戻ってきている。

宮本 昨シーズンは田渡凌選手(福島ファイヤーボンズ)だったり、菅澤選手や山本柊輔選手も力を貸してくれたって話していたよね? 今シーズンは田渡選手が抜けたけど、どんなキャプテン像をイメージしていたの?
本村 菅澤さんと山本柊輔さんは昨シーズンと変わらずチームを引っ張ってくれていますが、田渡さんと谷口さん(谷口光貴/ライジングゼファーフクオカ)が抜けて、自分と副キャプテンの磯野が2人で引っ張っていこうと。僕らの中で、チームに関しての会話はかなり増えましたね。田渡さんが抜けた穴は大きいですけど、昨シーズンにいろんな姿を見させてもらったので、そこは自分が体現しないとなって思ってます。
宮本 その中で、磯野選手が怪我で抜けたのはどうだった? 今は自分も離脱しているけど、彼の怪我も選手生命が危ういような怪我だった。聞き方が軽くなっちゃうけど、その時はどう思った?
本村 磯野とは3年ぐらいですかね、熊本で一緒にやってきました。同じポジションで、お互いがディフェンスのキーマンとしてやってきて、あれだけの大怪我をしたことはなかったので……。精神的にもきつかったです。でも、それ以上に磯野が一番きつかったと思うんですけど、磯野はそれでも負けてしまった開幕の滋賀戦で、僕らに喝を入れてくれたんです。試合後のミーティングで結構厳しいことを言ってくれて、「チームのことを第一に考えてくれてるんだな」って思いました。磯野が離脱した時に遠山さんが、「今のチームに足りないのは闘争心。勝とうっていう気持ちを磯野が一番持っていた」って話してくれたんです。確かにそこが足りなかった。そこをもっと自分が補えたらいいなってその時は感じましたね。

宮本 開幕の滋賀戦は何があったの? あれだけ一気に巻き返されるっていうのはなかなか(笑)。
本村 そうですね(笑)。シンプルに気持ちで負けていたと思います。前半はいいバスケができて、点差をつけることができた。でも、後半はオフェンスがバラバラだし、ディフェンスの気持ちも入っていなかったですね。こんなこと言っちゃいけないけど、見てくれているお客さんからすれば、相当面白くないバスケットだったなって反省しています。熱も伝わってこないだろうし、本当に自分たちが求めていたバスケットボールと逆のことをやってしまった。ビデオを見返しても勝てないだろうなって思っちゃいましたね。
宮本 なるほど。試合としてはいい試合ではなかったけど、本村亮輔個人を少し振り返ると、あの試合の第2クォーターでダブルクラッチ決めたじゃん? 覚えてる?
本村 覚えてます。
宮本 あのプレーに、本村亮輔が本村亮輔になってきたなって感じたんだよね。
本村 ハハハハハ。
宮本 実はシーズン前から今回のインタビューをやりたいと思っていたんだけど、あの試合を見て、「お、俺の好きだった本村亮輔が戻ってきた!」って。なんか伝わる?
本村 はい(笑)。自分としても、あのシーンはボールを奪ってからいい流れでシュートまで持っていけましたね。モータム選手(ブロック・モータム/滋賀レイクス)も見えていたので、ダブルクラッチをしようって決めていて、落ち着いてフィニッシュまでいけましたね。確かにああいう感覚が戻ってきたことは大きいなって思っていて、今シーズンは得点も取りたい。元々はそこで勝負していたので、得点に関する感覚も戻ってきているのかなって感じています。

宮本 B.LEAGUEに入ってからは、ディフェンスプレーヤーになったというか、ならないといけないところもあったと思うんだよね。高校の頃はU18日本代表にも入っていて、ぶっちゃけあのメンバーって誰もディフェンスしないじゃん?
本村・宮本 ハハハハハ。
本村 そうですね(笑)。
宮本 勝つ時も負ける時も100点ゲームみたいな(笑)。108点取ったけど、110点取られて負けましたみたいなバスケでさ(笑)。
本村 はいはい(笑)。
宮本 あれはあれですごく魅力的なバスケットだったよね。誰かが30点取ったのに、もう1人30点取ってる選手いるよ、みたいな。
本村・宮本 ハハハハハ。
本村 確かにそんな感じでしたね(笑)。
宮本 前もちらっと聞いたけど、B.LEAGUEに入ったらやっぱりディフェンスをやらないといけない中で、これまでオフェンスとのバランスはどう考えていたの?
本村 2、3年前まではディフェンスとオフェンスの両立が全くできてなかったっていうのが正直なところですね。ディフェンスならディフェンスに全体力を注ぐぐらいの気持ちでやってましたし、3年前とかはそもそもオフェンスでの役割がコーナーステイだったので、ボールに絡むこと自体がそんなになかった。そこからリバウンドに絡んで、ディフェンスは前からあたるっていうのが、それこそ僕と磯野の仕事だったんですよ。でも、ヘッドコーチが遠山さんになってから、昨シーズンの最初に僕と磯野が個人練習を早くスタートして、遠山さんにシュートフォームの改善から指導してもらいました。遠山さんは僕らに、「もっとオフェンスに絡んで欲しい」と言ってくれて、僕らが絡むフォーメーションを作ってくれたりしています。自分としても、気持ちとしてはもっとオフェンスに関わりたかったので、今のバスケはすごく楽しいし、自分に合っているなって感じています。

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