メディア公開日で見えた新生レバンガ北海道
10月30日に行われたメディア公開日に参加した。ロング遠征から北海道に戻り、オフ明けの全体練習にはドワイト・ラモスが合流し、週末の試合にも復帰できるとのことだった。
練習メニューはディフェンスがメイン。特にシュート後の切り替えのシーンを入念に確認していた。
「これまでの対戦相手もそうですし、横浜BCさんも22点程度を様々な形でのレイアップで得点しています。滋賀さんと大阪さんはその数字通りにやられてしまい、失点が増えてしまいました。そこを止めることが自分たちのやるべきことのひとつだと考えています」(小野寺龍太郎HC)
レイアップはバスケットボールにおいて、一番確率の高いシュートであり、どのチームもそのシーンをより多く作り出したい。特にノーマークであればそれはグレイトショットと言える。では、なぜレイアップで得点されるシーンが増えてしまうのか。それはシーズン開幕前に小野寺龍太郎HCのインタビューをさせてもらったときに、強調されていた部分でもある。この日の囲み会見でも、小野寺HCは「最初の6秒」をキーワードに挙げていた。
「自分たちはこれまでよりもペースアップしたい。そして、ディフェンスでコントロールをして、横浜BCさんのペースを落とさせる。そのためには、最初の6秒間でいいシュートを打たせないことが重要です。そこを止めることができれば、横浜BCさんはキーファー・ラベナ選手やキング開選手などのいいハンドラーがドラッグスクリーンを使ってきます。そこからいいフィニッシュに持ってくるのが彼らの特徴のひとつ。彼らはモーションというコールをしながら、アーリーオフェンスに移行していくスタイルなので、僕たちがやるべきことの最優先はトランジションディフェンスです。そして適正なマッチアップをすること。これは僕らが常に大事にしていることですが、これまでの試合ではルーズになってしまったシーンが多かったので、まずは横浜BCさんのトランジションを消していきたいです」
10月30日の練習は、「最初の6秒間」をテーマに行われた。
練習では実際に、ディフェンスラインの設定が少し低くなってしまったり(自分たちのゴールに戻りすぎる)、最初の6秒に置けるルールを徹底しきれていないシーンがあった。それが見受けられた場合は、小野寺HCがすかさず練習を止め、正しいポジションを示していく。些細なことではあるが、数十センチ、もしくは重心を後ろに置きすぎるだけでも、相手のアクション(想定としてトランジションを止めた後のドラッグスクリーン)への対応は遅くなってしまう。
11月2日と3日の横浜BC戦の鍵は最初の6秒の攻防であり、レバンガ北海道のライン設定とマッチアップポジションを見るといいだろう。ぱっと見で守れているではなく、より攻撃的にディフェンスができる状態が作れていれば、横浜BCのオフェンスを停滞されることができる。
話はオフェンスにも及んだ。
オフェンスも最初の6秒が重要だという。こちらも開幕前のインタビューで小野寺
HCが強調していた部分だ。
レバンガ北海道には他チームに比べて、得した個と言える存在がいない。それにあたるのはドワイト・ラモスと盛實海翔になるが、盛實海翔は怪我でこの試合を欠場する。よって、個で打開することは求められず、よりコレクティブにオフェンスを作っていくことが重要視されるし、それがレバンガ北海道のベースとなるスタイルだ。考え方はシンプルで、ディフェンスでレバンガ北海道がやってはいけないことを相手に起こさせたい。要するに最初の6秒間で「マッチアップトラブル」を起こすことができれば、狙いたいシュートまでの道筋が作りやすくなる。その中で、小野寺HCも大阪戦での手応えをこう語る。
「大阪戦は最初の6秒間でライアンが走ること(リムラン)によって、相手はペイントを守らざる得ない状況を作れました。そこから松下や菊地がトランジションのスリーポイントを効率的に打って、決めることができていました」
レバンガ北海道のビッグマンのバランスがよくなってきたことによって、リバウンドを取っていない方のビッグマンがより速くリングにスプリントすることによって、相手のディフェンスアライメントを崩すことができる(ただ小野寺HCのインタビューを読むとわかるように、レバンガ北海道にもその場合はどのように守るのかというルールがあるように、対戦相手にもある)。それをしっかりと活かして、相手がやられたくないポイントを着くことができれば、優位性を作り続けることができ、ゲームをコントロールしていくことが可能になる。
私は、鍵を握るのは中野司だと考えている。
そんな中野司にオフェンスの感触について聞くと、
「この1ヶ月はドワイトがいなかったことによって、自分が得点を取る。その感覚がよくなってきている。ドワイトが戻ってきたことによって、彼にディフェンスが惹きつけられると思うので、積極性を失わずにシュートを決め切れるようにしていきたい」
とやるべきことは整理されているようだった。
中野はこの日も菊地と2人で最後まで打つべきシュートの練習を起こっていた。
囲み会見の最後は島谷怜がやってきた。これまでレバンガが頭を悩ませているターンオーバーについて質問が飛ぶ。私は今シーズンの傾向として、どのチームもプレッシャーが強くなり、ペースが上がっている。それがターンオーバーの理由に繋がっているのかもしれないと思い、島谷に質問すると、彼はこう答えた。
「表面的なプレッシャーはもちろんそうですし、おっしゃるようにディナイされて次の展開がシャットアウトされるシーンは増えていると思います。ただ、僕たちの場合は展開を作ろうとしている中でスティールされるよりも、表面的なプレッシャーに負けてボールを失うことが多い。そこをしっかりとリリースできれば、いいオフェンスが展開できているシーンは作れていると思います」
ターンオーバーにも種類や傾向がある。その中で、島谷は個で回避できることを強調した。一方で、彼と話しながら感じたことは、彼自身がひとつ壁にぶつかっているのかもしれないということ。
プロ2年目でキャプテンを務める彼の魅力は、チームにおいて必要なピースになれることだと思っている。だからこそ彼は今のチームにおいて自分自身が必要な存在になれるように、練習でも周りをしっかりと観察しているように感じた。
自分がカバーできる部分を見つけ、それを気付かれる前にケアする。仲間たちをよりプレーしやすい環境を作るために、自然とそういった展開を作る。
これは彼の特徴のひとつであることは間違いないが、昨シーズンの活躍もあり、どのチームも島谷怜自体へのプレッシャーが上がっている。
島谷怜を止めることでレバンガ北海道のチーム力は間違いなく落ちる。
これは事実だと思うし、私が対戦相手のヘッドコーチであれば、間違いなく島谷怜にディフェンスのスペシャリストをマッチアップさせるだろう。
彼と話す中で、ほんの少しだけチームという比重が大きすぎるのかもしれないと感じた。もちろんキャプテンだからこそ、その比重は大きくあるべきだと思うが、そこのバランスが微妙に昨シーズンと違うのかもしれない。
どんな仕事でも、個とチームのバランスというものが問われるときがある。ただ、キャプテンだとしても、まだ2年目のプレーヤーとして自身を証明するがっつく彼を見てみたい。
ダブドリVol.21のレバンガ北海道「俺たちが創る新生レバンガ北海道」を読んだ方はわかると思うが、これはエゴではなくバランスだ。
島谷怜へのプレッシャーが上がっているということは、島谷怜がリーグからリスペクトされるポイントガードであるということ。
だからこそチームのことを考える前に、自分の目の前のことに集中すること。
それが今ぶつかっているのかもしれない壁を乗り越える方法ではないのだろうか。
11月2日、3日札幌開幕。
私は圧倒的なスピードでリングにアタックする島谷怜が見たい。
文・写真 宮本將廣
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